表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/229

第153話 キョウカ「指輪! 指輪!!」


 マリエル様というか、ラヴェル侯爵からネックレスの依頼を受けて、1週間が経った土曜日。

 この日は昼食を食べにミリアムとユウセイ君を連れて名古屋の焼肉屋にやってきていた。


「いやー、焼肉はどこに来ても美味いな」

「まったくだにゃー……あちち、にゃ」


 ユウセイ君とミリアムが焼肉に舌鼓を打っている。

 もちろん、ミリアムは魔法で隠れている。


「まあ、好きなだけ食べてよ。今回の仕事でまた余裕ができそうだし」


 名古屋支部で召喚魔法陣を見つけたし、成功報酬は期待できそうだ。


「山田さん、どんどん金持ちになるな。その金を使えば、あの村を近代化させて異世界を獲れるんじゃね?」

「良いにゃ。異世界の支配者、山田にゃ」


 それ、魔王とかじゃない?

 魔王山田はもはやギャグだぞ。


「そういうのはいいよ……俺はのんびりするんだ。露天風呂を作って星を眺めるんだよ」

「ふーん……まあ、確かに星はきれいだったな」


 あの村の夜は星がよく見えるのだ。

 まあ、今の時期は寒いけど。


「でしょ。俺はスローライフを満喫する」

「よくわからないけど、良いんじゃね? 応援するし、できることなら手伝うよ」


 ユウセイ君は本当に良い子だわ。

 最近の若者らしくあっさりしている子だけど、人間ができている。


「好きなものを頼んでいいよ」

「じゃあ、特上カルビいっとくか」

「特選ロースも頼むにゃ」


 2人がそう言うので店員さんを呼び、追加の注文をする。

 そして、すぐに特上カルビと特選ロースがやってきたので焼き始めた。


「そういや、キョウカはどうした?」


 肉を焼いているユウセイ君が聞いてくる。


「キョウカはモニカとルリを連れて出かけた。例のネックレスを頼んだよ」

「あー、マリエル様って人のやつか」

「そうそう。俺が行ってもわかんないし、女性陣に頼んだ」

「良いと思う。女の買い物とかつまんねーし」


 かっこいいセリフだ……

 女慣れしてそう。


「ユウセイ君、彼女いるの?」

「いない……あー、ウチは妹もいるし、一族が多いから親戚の姉ちゃんとかと買い物に行くことも多いんだよ。昔はよく遊んでくれたしな」


 へー……

 何気に一族という言葉が出てくるあたりが名家っぽいな。


「そっかー……」

「山田さんさ、今日は何の用なの? いきなり焼肉でも行こうかって誘ってきたけど……」

「うん、実は相談があってね……」


 本題に入ることにする。


「何? 修羅場の話なら嫌だぞ。俺はあんたらのいざこざはスルーするって決めている」

「私もにゃ」


 君ら、すぐに逃げるもんね。

 まあ、当たり前だけど……


「いや、そういう話じゃない。キョウカってさ、今月が誕生日でしょ?」


 桐ヶ谷さんに聞いた。


「あー、確かそうだな。えーっと、いつだったっけな?」

「来週の日曜らしいよ。ルリに聞いてもらった」


 ルリはケーキを作るらしい。


「だったかな? 1月の後半なのは覚えているんだけどさ」

「ちなみに、ユウセイ君は?」

「俺? 6月6日」


 覚えやすいな。


「ミリアムは?」

「知らない。誕生日を祝うのは人間だけにゃ」


 猫さんだし、仕方がないか。

 あと地味にルリもわからないんだよな……


「それで山田さん、相談って何? まさかプレゼントをどうしようかっていう相談?」

「そうそう、それ」

「……自分で考えろよって思っちゃダメか?」


 17歳に苦言を呈される35歳。


「いや、キョウカのことを昔から知っているんでしょ? アドバイス的なものが欲しい」

「……あいつの誕生日に何かを贈ったこともないし、俺の誕生日に何かをもらったこともないぞ」


 この2人はまあ、そんなものかもしれない。


「でも、ある程度の趣味嗜好はわかるでしょ。この前のクリスマスのネックレスは喜んでもらえたし」

「うん……まあ、あれはな……」


 ユウセイ君が微妙な顔になった。


「どうしたの?」

「あ、いや、なんでもない。プレゼントだっけ? 指輪で良いんじゃない?」

「それ、渡したら左手のどっかにはめそうじゃない?」

「そうなるだろうな……」


 何段飛ばすんだよ。


「他に」

「えー……キョウカ、激重だから残るものが良い気がするなー」


 激重って言うな。

 その通りだけど……


「残るものね……正直さ、学生さんだし、食べ物でいいかなって思っているんだけど」

「俺はそっちの方が良いけど、あいつは夫人じゃん」


 夫人言うな。

 夫人になっちゃったけど……


「そこはスルーで」

「うーん……ルリに探ってもらえば?」

「その手を逆にルリのクリスマスプレゼントの時にキョウカに使っている」

「あ、そう……それで俺に探れと?」


 勘が良い子は好きだよ。


「そうそう。ほら、学校とかでさ、『そういえば、お前、そろそろ誕生日だよな? 欲しいものとかあるのか?』みたいな雑談をしてみてよ」

「違和感がすごすぎる……そもそも学校であいつとそんなにしゃべんないぞ?」

「え? そうなの? 仲良しじゃないの?」


 同じクラスじゃん。


「俺は男子と話すし、あいつも女子と話すな……元々、仕事の話以外はそんなに話さないし。それに最近は用事があっても山田さん家で話せばいいからなー」


 まあ、それはそうかも……

 この子達、完全に居着いてるもん。


「頑張って! ほら、カルビでも食べて!」

「ああ……美味いな……」


 でしょー。


「ユウセイ君、俺は高校、大学を出て、会社勤めをしてきたんだよ。そして、35歳になった。この間、女性にプレゼントを贈ったことなんてなかったんだよ」


 というか、人生で一度もなかったね。

 姉妹もいないし、親戚も男ばっかりだし。


「あ、うん……それでいきなり女子高生と付き合い、巨乳の姉ちゃんを侍らすことになって困惑しているのか」

「言葉には出さないで」


 やめて。


「はいはい……じゃあ、さりげなく月曜にでも探ってみるよ」

「ありがとう! ささ、食べて、食べて」


 良い子だわー。


「カルビクッパでも食おうかな……」


 しかし、本当によー食うな、この子……

 こんなに肉を食べているのにカルビクッパって……

 俺も冷麺でも食べようかな……


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
[一言] 二重スパイ不可避
[一言] もう、指輪でいいじゃん もしくは、モニカに異世界の夫人用装飾物を用意してもらうと良いかと。 貴族間のお付き合いが続くのは決定的なので。 こういうときこそ、モニカ使えよ、と思う
[一言] 年取ると肉脂が重いのよね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ