第150話 なんでそんなに嫌いなんだろう?
ホテルから家に戻ると、皆で夕食を食べる。
「しかし、内通者ねー……あまり人のことは言えないけど、そんなのがいるんだな」
ミリアムから事情を聞いたであろうユウセイ君がつぶやく。
「前からそういう話はあったみたいだよ。悪魔教団って元協会の人間が立ち上げた組織だし、退魔師不足の弊害で怪しい人も雇ったりするみたい」
以前、悪魔教団の説明を桐ヶ谷さんから聞いた時にそういう話をした。
「うーん、荒れそうだな」
「かもね。桐ヶ谷さんいわく、俺のことはめっちゃ調べたらしいけど、そうじゃない人が多いみたいだね」
「まあ、山田さんは会社員だったんだろ? 普通に家族もいるし、調べやすいんだと思う」
まあ、叩かれて出てくるホコリは…………そんなにない。
しいて言うならJKといい感じでしゃべる猫や戸籍のない少女と異世界人が家にいるくらいだ。
「かもね。普通に生きてきたもん」
「タツヤさんは大丈夫ですよー。橘の家が保証しますんで」
どうも……
「とにかく、そういうわけで待機だね。俺もホテルの人に言って、昼間も部屋で待機してもらえるように頼んだ」
無理かなと思ったが、すんなりOKをもらえた。
頼んでみるもんだわ。
「そうなると暇ですね」
「外にも出られないしね」
名古屋にいることになってるから外出は控えた方が良いだろう。
転移を使えることはバレてはいけない。
「まあ、私が毎日遊びにきますから寂しくないですよ」
いや、家にはルリとミリアムがいるから寂しいということはないんだが……
口に出すのは野暮だから言わないけども。
「タツヤ様、少しよろしいでしょうか?」
モニカが聞いてくる。
「どうしたの?」
「何か大変な状況のところに申し訳ございませんが、マリエル様からお茶会のお誘いが来ています」
マリエル様か……
「俺?」
「いえ、キョウカ様ですが、タツヤ様も行かれた方が良いと思います。多分、例の件です」
アクセサリーか。
「いつ?」
「それを連絡しないといけません。マリエル様もそちらの都合でいいと言われておりますが……」
早い方がいいわな。
それにどうせ家を出られないんだからちょうどいいかもしれない。
「キョウカ、大丈夫?」
「私はいいですよ。明日、明後日でも大丈夫です。どっちみち、遊びに来ますし」
今日は金曜だからユウセイ君とキョウカは明日から休みだ。
「モニカ、明日でいいから返事をしておいて。当日はマズいだろうから日曜かな?」
「わかりました。では、日曜日に」
まあ、ちょうどいいタイミングだろう。
俺達はその後も話しながら夕食を食べた。
夕食を食べ終え、少ししたらキョウカとユウセイ君が家に帰っていく。
そして、ビールを飲みながら一息ついた。
「色々と大変ですね」
俺に背中を預けながらコタツに入っているルリが見上げてくる。
「まあね。でも、充実しているよ」
「お姉ちゃんとモニカさん?」
「いや、ミリアムやユウセイ君もだよ。もちろん、ルリもね」
ルリとミリアムと一緒に住んでから家が本当に明るくなった。
よく考えたらこの家って一人で住むのには相当広いから俺一人だったら孤独感がすごかったかもしれない。
「お先にもらいましたー」
お風呂から上がったモニカがリビングに戻ってきた。
ルリはそんなモニカをじーっと見る。
「どうしました?」
モニカが首を傾げながらパソコンの前に行く。
「いえ……」
ルリは首を振ると、モニカを見るのをやめ、俺の手を握った。
「どうしたの?」
そう聞きながら頭を撫でると、ルリが見上げてくる。
「私、邪魔じゃないです?」
「全然。ルリがいない生活なんて考えられないよ」
もし、ルリが彼氏を連れてきたらそいつをぶん殴ると思う。
まあ、だからキョウカの親父さんにぶん殴られても文句は言えないんだけど……
「ありがとうございます……」
ルリが頬を染め、俯いた。
いやー、めっちゃかわいい。
「ほら、お風呂に行ってきな」
「はい……ミリアム」
「にゃー!」
ルリが立ち上がり、ミリアムを呼んだのだが、ミリアムはコタツの中に逃げてしまった。
「もう!」
「ミリアムは俺が入れるよ」
多分、逃げるけど……
「ハァ……では、お願いします」
ルリは諦めたようにため息をつくと、リビングから出ていった。
「ルリさん、ちょっと変わられましたね……」
モニカがパソコンの前からこちらの方にやってくる。
「愛を司る悪魔さんのアドバイスでしょ」
ルリはずっと我慢する子であまり自分を出す子ではなかったが、あれ以降、甘えてくるようになった。
ロクでもない悪魔だと思うけど、愛に関することだけはすごく助かっている。
たまに変なアドバイスも来るけど……
「あれですか……実際、どうです? タツヤ様も甘えてくる女性が良いですか?」
そりゃそうでしょ。
「まあ、頼られて喜ばない男はいないと思うね。それにさ、あのぐらいの年の子はやっぱり男女問わず、やっぱりそっちの方がかわいいでしょ」
まあ、ルリはそんなこと関係なく、かわいいんだけどさ。
「なるほど……確かにタツヤ様は頼りがいのある素晴らしい御方だと思いますね」
どうも。
「にゃー」
ミリアムがコタツから出てきて、ゴロゴロとすり寄ってきた。
「ミリアムはすごいなー……あざとすぎるのにこんなにかわいい」
よしよし。
お前もウチの子だからなー。
誰にもあげないぞ。
「お風呂入りたくないにゃー」
いや、入れよ。
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