第147話 俺の心の中に何かいる!?
名古屋支部から離れた俺は適当に車を走らせながら放課後までどうしようか考えていた。
「ホテルのチェックインの3時まで暇だな……」
「仕方がないにゃ。世界一美人と評判の私が付き合ってやるからデートでもするにゃ」
「そうするか……」
美人かは知らないが、かわいいミリアムと一緒に名古屋の街中を巡っていく。
一応、有名な観光地を回り、さらには昼にちょっと高めのひつまぶしを食べたりして、時間を潰していった。
そして、3時になったのでホテルに向かい、チェックインすると、昨日と同じ部屋に入る。
「結構、楽しかったね」
「ウナギが美味かったにゃ」
確かに美味しかった。
ルリも連れていってあげれば良かったわ。
「よし、戻ろう」
「にゃ」
俺達は転移を使い、家に帰る。
そして、リビングに向かうと、ルリがいつものようにコタツに入りながらテレビを見ていた。
「あ、お帰りなさい」
「ただいま」
そう答えながらコタツに入る。
「あれ? 着替えないんですか?」
「うん。ちょっと調査が上手くいかなくてね。野生の勘が働くキョウカにお願いしようと思っているんだよ」
「あー……お姉ちゃん、すごいですもんね」
ホントね。
「だから4時過ぎにキョウカが来ると思うけど、そのまま一緒に出てくるから」
「遅くなります?」
「いや、キョウカは暗いのがダメでしょ。誰もいないビルって怖いし、さすがに暗くなる前に帰るよ」
「わかりました」
ルリはそう答えると、コタツから出てきて、俺のもとに来る。
すると、俺とコタツの間に入ろうとしてきたので少しスペースを作ってあげた。
「温かいね」
「はい」
ルリが背中を預けてきたので頭を撫でる。
よしよし。
ホント、かわいいわ。
ロザリーさん、ありがとうございます。
俺はそのままの体勢でルリとテレビを見ながらキョウカを待つことにした。
そして、4時を過ぎたあたりで玄関の扉が開く音がし、制服姿のキョウカがリビングにやってくる。
「ただい……こんにちはー」
ただい?
「うん。悪いね」
「いいんですよー。それにしても仲良しですね。いいなー」
キョウカが俺とルリを見比べているが、どっちに対して言ったんだろ?
「キョウカ、着いていきなりだけど、暗くなる前に行きたいんだ。行ける?」
「大丈夫です」
「ん。ルリ、ちょっと出てくる」
「いってらっしゃい」
俺はコタツの中のミリアムを引っ張り出し、キョウカと共に笑顔のルリに見送られながら名古屋支部に転移した。
「ここが名古屋支部です?」
キョウカが転移先の部屋を見渡す。
「うん。ここは最上階の支部長室だね」
「なるほど……それにしても魔力を感じますね」
「でしょ? でも、この魔力はビルの外では一切、感じないんだ」
「へー……」
キョウカは窓まで行き、外を見た。
「キョウカ、何か感じる?」
「うーん、特には……」
ダメか。
いや……
「キョウカ、人斬りキョウカちゃんになってよ」
「えー……タツヤさん、嫌がるじゃないですかー」
「そんなことないよ」
「だって、絶対にこっちの私の方が好きでしょ?」
俺の心の中のロザリーがここは大事なところですよって言ってるな……
っていうか、ロザリー、何かした?
「どっちも好きだよ。どっちもキョウカじゃん」
「………………」
キョウカが無言で頬を染める。
「嫌がるように見えるのは刀が怖いだけだって。抜き身の刀はちょっとね……」
「そうですかー?」
「うん。キョウカを怖がるわけないじゃん」
そう言うと、キョウカがこちらに近づいてきて、俺の目をじーっと見てきた。
その目は鋭く、多分、人斬りキョウカちゃんだと思う。
俺が内心でドキドキしていると、キョウカが俺の頬に触れる。
「ミリアムちゃん、小一時間ほど席を外す気ない?」
小一時間……
「暗くなるぞ。やめた方が良いにゃ。人生の先輩のアドバイスをすると、お前らは若いから時間なんていくらでもあるにゃ」
俺の心の中のロザリーはホテルに転移しろって言ってる…………あれ?
ロザリー、絶対に何かしてるよね?
「それもそうか……それに今は仕事中……調査をするかな」
キョウカはそう言って、俺の腕を取った。
「そうだね。暗くなる前に行こう。誰もいないビルは怖いよ?」
「それは嫌だね。さっさと行こうか」
「暗くなるまでっていうと、30分くらいしかないね」
「十分だよ」
俺達は部屋を出ると、調査を開始した。
午前中のような細かい調査はせずに適当に部屋に入ったりしながら調査をしていく。
そして、まだ残り半分が残っているくらいでいよいよ暗くなり、キョウカの腰がへっぴり腰になってしまった。
「もうダメだね。明日にしようか」
「だ、だ、大丈夫!」
いや、ダメじゃん。
「無理しないでって。そんなに急ぎじゃないし」
「いや、本当に。ちょっとトイレを見たい」
トイレ?
余計に怖くないか?
まあいいかと思い、このフロアのトイレに向かう。
トイレの前までやってくると、男子トイレと女子トイレのちょうど間に立つ。
「トイレに行きたいの?」
「違うね。それにこんな所でするくらいなら漏らす」
キョウカがフッと笑い、かっこつけた。
「転移で連れて帰るよ……」
「いや、本当に大丈夫。トイレがしたいわけじゃないんだよ。ちょっと入ってみようか」
「え? どっち?」
「じゃあ、男子トイレから」
えー……
俺はキョウカに引っ張られ、左の男子トイレに入る。
すると、そんなに匂いもせず、きれいなトイレだった。
「ふむ……」
「まさかまたキョウカと男子トイレに来るとは思わなかったよ」
「その話はやめて」
ごめん。
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