第142話 湯上りで魅力UP中な上級悪魔さん
部屋に戻った俺達は夕食を食べだす。
メニューはカニだった。
俺達は黙々とカニの身を取り、食べているのだが、ミリアムが殻ごとばりぼりと食べているのでその音が部屋に響いている。
「ミリアム、美味しい?」
「美味いにゃ」
そっか……
まあ、好きに食べたらいい。
猫さんだもん。
俺はビールを飲みながらカニを食べる。
ルリは真面目な顔でカニの身をひたすら剥き、皿に身を溜めており、ルリの性格が出ていて微笑ましい。
モニカはカニの身を剥き、俺と同様にビールを…………いや、この子、めっちゃ飲んでね?
もうビール瓶が空じゃん。
「モニカ、飲む?」
「あ、はい。いただきます」
俺は相変わらず、すげーなと思いながら追加注文する。
その後もひたすらカニを食べ、ビールを飲んでいった。
そして、夕食を食べ終えると、一息つく。
「美味かったにゃ」
「満腹です」
「リンゴ村周辺は海がないですからこういう食事は久しぶりでした」
皆、満足しているようだ。
もちろん、俺も満足している。
「来て良かったね。俺、もう一回風呂に行くけど、どうする?」
「行きます」
「私も行きます」
「私はお前らがなんでそんなに風呂が好きなのかわからないにゃ。汚れなんて魔法でポイにゃ」
猫さんにはわからないだろうなー……
俺達はミリアムに留守番を頼み、再び、温泉に行く。
今回は他のお客さんもいたが、平日ということで年配の方が多く、静かだった。
俺は温泉を満喫し、風呂から上がると、待ち合わせ場所の休憩スペースで2人を待つ。
すると、モニカが1人でやってきた。
「あれ? 1人? ルリは?」
「ルリさんはもう少し入るそうです。温泉をかなり気に入った様子ですね」
お風呂が好きな子だもんなー。
「座りなよ」
俺はモニカを隣に座らせると、自動販売機で缶酎ハイを2つ買う。
そして、席に戻り、1つをモニカに渡し、座った。
「ありがとうございます」
俺達はプルタブを開けて乾杯をすると、飲みだす。
「温泉はどうだった?」
「すごく良かったです。外でお風呂に入るというのは初めての経験ですが、外の寒さと湯の温かさのバランスがちょうどよかったですね」
モニカも満喫してくれているらしい。
「それは良かった」
「タツヤ様がこういう生活をしたいというのも頷けます。落ち着きますよね」
「だね。ゆっくり生きたいよ」
「はい。そのためにも村の整備を致しましょう」
俺自身のためでもあるが、村の人達のためでもある。
頑張ろう。
「新幹線でなく、車で来て良かったよ」
「運転、お疲れ様です。お手伝いできなくてすみません」
「それは仕方がないよ。モニカは免許を取れないし」
あと、たとえ取れたとしてもちょっと怖い。
「すみません……あ、温泉に入る際に観察しましたが、露天風呂自体はそんなに難しくなさそうです」
「そうなの?」
「お湯さえどうにかできれば、あとは材料が木と石ですからね。揃ってます」
リンゴ村は森だもんなー。
材料はその辺にめちゃくちゃある。
「じゃあ、作れそうだね」
「はい。こちらで十分に作れます」
「任せるわ」
「お任せを」
モニカはそう言って頭を下げると、浴衣の襟を直す。
「浴衣は慣れない?」
「普段がローブですからね。着やすいですし、軽くて楽なんですけど、どうしても気になってしまいます」
モニカ、大きいしなー。
「無理せずに普通の服でもいいよ?」
モニカは外出用の服はもちろん、部屋着やパジャマだって持っている。
「いえ、風情を楽しみたいですから」
まあ、わからないでもない。
俺自身も浴衣に慣れているわけではないが、こういうところでは浴衣を着たいと思ってしまう。
俺達はぼーっとしながら酒を飲み、ルリを待っている。
すると、俺達の対面の椅子に長い黒髪の女性が座った。
その女性は浴衣をかなり気崩しており、豊満な胸が零れ落ちそうだ。
さらには足を組んでおり、生足を露出している。
それでいて、顔は美しく妖艶に笑っていた。
俺はそんな女性を見て、抱き着きたくなり、腰を少し浮かした。
「…………いや。いやいや」
「どうしました? 来てもいいんですよ?」
黒髪の女性がフフっと笑う。
「ロザリー……」
対面に座っている魅力たっぷりの女性は愛を司る上級悪魔ロザリーだった。
「お久しぶりです。温泉で癒しにきました? 心も体も……フフッ」
ロザリーはモニカをチラッと見た後に笑う。
その表情はすごくエロく、すぐにでも部屋に連れ込んで押し倒したくなる。
「タツヤ様、この方は?」
モニカが怪訝な顔で聞いてきた。
「悪魔教団の悪魔であるロザリーだよ。前に話した教会にいた人」
「この人が……」
モニカがロザリーを見る。
すると、モニカからわずかに魔力を感じた。
「おやめなさい。あなた程度の魔法使いでは私には勝てません」
ロザリーがモニカを制する。
「モニカ、やめて」
モニカでは絶対勝てない。
というか、モニカは攻撃魔法も使えないから無理に決まっている。
「すみません……」
「いや、悪いけど、手を繋いでくれる?」
「え? あ、はい」
モニカが俺の手を取った。
「ふむふむ。女性で対抗するのは良い手ですよ。あなたは優秀な魔法使いですが、所詮は男です。私の魅了魔法を完全にレジストはできません。今日は抱き着いてくれるあの子もいませんしね」
キョウカね。
抱き着くというより、腕をめっちゃ掴んでいた。
痛かったが、その痛みで対抗できた。
「ロザリー、こんな所で何をしている?」
「湯治ですかね? まあ、それはいいじゃないですか。そんなことよりもあなたから女難の相が消えています…………上手くやりましたね」
マジ?
ちょっと嬉しいぞ。
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