第141話 温泉!
翌日、俺達は明日の準備をすることにした。
主に着替えぐらいだが、たとえ忘れ物があっても転移で取りに戻れるので楽なもんだ。
そして、準備を終えると、ゆっくりと過ごし、早めに就寝した。
「あのー……本当に私も一緒に行ってもよろしいのですか?」
朝早くに起き、車に乗り込んで出発すると、助手席に座っているモニカが聞いてくる。
なお、ルリとミリアムは後部座席で窓の外を眺めながら話をしていた。
「うん。せっかくだしね。嫌だった?」
「いえ、そんなことはないです。ただ家族団らんにお邪魔をするのはどうかと思いまして」
「モニカも家族だよ」
というか、村の皆は家族だ。
「そ、そうですか……そう言ってもらえると嬉しいです」
「それとさー、いよいよ村も安定してきたじゃない?」
「はい。収入も安定しています。それに後ろ盾も得ましたし、クロード様とも良い関係を築けています」
あのボロボロの村がよくここまでこれたもんだと我ながら感心する。
「これから得た収入で村を暮らしやすくするわけだけど、俺のスローライフが満喫できるようにしたいんだよ」
「そうですね。タツヤ様はそれが目的ですし、村の整備と共に進めても良いと思います。資金はありますし、人手は相変わらず、少ないですが、時間をかければ何とかなるでしょう」
人手不足は仕方がない。
前にあった奴隷案も微妙だし。
「うん。それで温泉でも作ろうかなと」
「温泉ですか? 私も詳しいわけではないですけど、難しいんじゃないです?」
本物の温泉は無理か。
地下深くから採ってるんだっけ?
「まあ、温泉というか、露天風呂だね。お湯は魔法でどうにかなるし、後は温泉の素でも入れる」
自然いっぱいだし、それで十分だろう。
「なるほど。それで調査も兼ねているわけですね」
「そうそう。ネットで調べてみたけど、やっぱり直接行く方がいいじゃん」
「確かにそうですね。では、私の方でも見てみます」
女湯は行けないもんね。
「お願い。まあ、それを抜きにしても慰安旅行だと思って、ゆっくりしてよ」
「ありがとうございます。そうさせて頂きますね」
俺はその後もモニカとリンゴ村の計画を相談しながら運転していった。
◆◇◆
俺達が目的地である旅館に着いた時には夕方になっていた。
本当はもっと早く着くのだが、せっかくなのでサービスエリアに寄ったり、観光地を見ていたりしたらこんな時間になった。
まあ、早く着きすぎてもチェックインできなかったのでちょっとした小旅行をしたのだ。
俺はさすがに運転しっぱなしで疲れたなと思いつつもチェックインをし、仲居さんに部屋を案内してもらった。
そして、旅館の説明を聞き、仲居さんが退室すると、お茶を飲みながら一息つく。
「良い部屋ですね」
モニカがお茶を飲みながら部屋を見渡した。
「まあね。大金が入る予定だから贅沢しちゃった」
まあ、平日だし、そこまで高くはない。
「タツヤさん、外がきれいです」
旅館の部屋に必ずある広縁という名の例のスペースから窓の外を覗いているルリが教えてくれる。
ここから見ても窓の外は庭園になっており、確かにきれいだし、心が落ち着く。
「良いよねー。ルリ、まんじゅうを食べてもいいよ」
「はい」
ルリはミリアムを抱えると、テーブルの上の温泉まんじゅうを2つ手に取り、1つをミリアムにあげ、もう1つを食べだした。
「東京と違って、人が少なくて良いですね」
「今日は平日だしね。ゆっくりできると思うよ」
この歳になるとこういう感じがものすごく落ち着く。
「タツヤさん、お風呂に行きたいです」
ルリ、もう温泉まんじゅうを食べ終えてるし……
「そうだね。晩御飯まで時間があるし、行こうか。使い方とかわかる? モニカもだけど」
さすがに女湯に行って教えてあげることはできない。
「大丈夫ですよ」
「昨日、モニカさんと一緒に調べました」
そういえば、俺が風呂から上がったら2人でパソコンの前にいたな。
「じゃあ、大丈夫か。ミリアムは?」
「行くわけないにゃ」
やっぱりか。
「じゃあ、俺達は行ってくるよ」
「ゆっくり入ってくるにゃ」
俺達は浴衣を持って部屋を出ると、大浴場に向かう。
そして、大浴場に着き、2人と別れると、一人で男湯側に入った。
「誰もおらんな……」
服を脱ぎ、大浴場に入ったのだが、誰もいない。
まあ、そっちの方が貸し切りみたいでいいかと思いつつ、簡単に身体を流すと、露天風呂の方に向かった。
そして、広い露天風呂に入り、疲れを癒す。
「あー……沁みる」
長時間運転で疲れた身体にも沁みるが、何よりも心に沁みる。
「いい感じだなー……」
外気は冷たく、湯は温かい。
それに周囲は自然に溢れ、空を見上げれば星空だ。
ずっとこういう生活を送りたいと思っていた。
「頑張るか……」
俺はもう少しでこういう生活が送れそうだなーと思いながら温泉を満喫していった。
そして、ある程度、温泉を満喫し、風呂から上がると、部屋までの途中にある休憩スペースで2人を待つ。
ミリアムが部屋で待っているから大丈夫なのだが、一応、鍵は一つしかないのでここで待ち合わせることにしているのだ。
そのまま椅子に腰かけ、背もたれに背中を預けながら待っていると、2人がやってくる。
ルリもモニカも浴衣姿であり、非常に新鮮だ。
「お待たせしました」
「遅れてすみません」
2人が謝ってくる。
「いいよ、いいよ。それよりもゆっくり入りなよ」
「また入ります」
ルリはホクホク顔で嬉しそうだ。
「うん。何回でも入っていいからね」
「はい」
「じゃあ、そろそろ夕食だし、戻ろうか」
俺は立ち上がると、2人と共に部屋に戻った。
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