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第139話 刀が怖い


「ふう……」


 桐ヶ谷さんとの電話を終えると、スマホを机に置いた。


「受けていいんですか?」


 ルリが聞いてくる。


「まあ、調査だけだしね」


 大丈夫だと思う。


「お前、すぐに金に目がくらむにゃ」


 ミリアムが呆れながら見上げてきた。


「まあ、それは否定できないけど、月に200万だよ? しかも、ボーナスが確定で300万でさらには500万もプラスされるわけじゃない。1000万!」

「バルトルトにビビっていたお前はどこに行ったにゃ?」

「それは立ち直った」


 もう大丈夫。

 よく考えたら俺には転移があるのだからどうとでもなる。


「そっかー……」

「でも、そんなにお金があっても使い道がありませんね。車も買いましたし、家もありますよね?」


 子供のルリが首を傾げる。


「お金はいくらあっても困ることはないよ。それに1000万を手に入れたと言ってもたとえ、節制しても数年程度でなくなるし、貯蓄は多い方が良い」

「そんなもんですか? タツヤさんならいくらでも稼げそうですけど」


 それは今だけ。


「俺、35歳だからね。腰をやったら動けないし、あちこちにガタが来始める年齢なんだよ」

「魔法で治せば……」


 まあね。


「お金は大事なの」

「そ、そうですか。でも、お姉ちゃんとユウセイさんに何て言うんです? 聞き耳を立ててましたけど、御二人には内緒とか言ってましたよね?」


 魔法で聞いてたのかな?


「まあ、言ってたね…………どうしよう?」


 あれ? マズくない?


「あのー、以前もこんなことがありませんでした?」

「あったにゃ。キョウカに馬乗り状態で刀を抜かれてたにゃ」


 あ、あったねー……


「大丈夫かな?」

「「………………」」


 2人が無言になってしまった。


「ダメ?」

「今は余計にマズいような気がするにゃ」

「お姉ちゃん、勘が鋭いですし、すぐにバレると思います」


 うーん……マズいね。


「よし、放課後に来てもらうか」


 それで説明しよう。


「バラすにゃ?」

「2人には黙ってもらっておくしかないでしょ。どっちみち、名古屋での調査には連れていけないわけだし」


 2人は学校がある。


「まあにゃー」

「ミリアムはついてきてくれるよね?」


 というか、ミリアムがいないと話にならない。

 俺、探知が得意じゃないし。


「いいにゃ。どうせ夜には帰るんだろ?」

「だね。ホテルにチェックインしたら後は好きにできるからウチに帰るよ。皆と一緒にご飯を食べて、過ごしたいしね」

「わかったにゃ。じゃあ、さっさとキョウカとユウセイに連絡をするにゃ。特にキョウカは急いだ方が良いにゃ。さっきまで連絡を取り合っていたんだろ?」


 あ、そうだ。


 俺は慌てて、メッセージアプリを開く。


 キョウカ:ですよねー。あ、今日、遊びに行ってもいいですか?

 キョウカ:あれ?

 キョウカ:ご飯? リンゴ村に行っちゃった?

 キョウカ:泣

 キョウカ:授業だー……


 うーん、無視したわけではないけど、罪悪感があるな……


 山 田 :ごめん。桐ヶ谷さんから電話があったんだよ


 それだけを送って、しばらく待つ。

 すると、30分ぐらい経ち、ユウセイ君とキョウカ共通のグループにメッセージが届く。


 ユウセイ:キョウカに聞いたけどマジ?

 キョウカ:ですか?


 いつも3人でメッセージのやり取りをしている時に思うんだが、この2人、同じ場所にいるんだよなー。

 2人は話せばいいのに。


 山 田 :そうそう。それで放課後にウチに来てくれない? ただ、親御さんには内緒でお願い

 ユウセイ:わかった

 キョウカ:了解です


 よし、これでオーケー。


 俺はメッセージを送り終えると、待つことにした。

 そのままコタツに入り、ミリアムを撫でながら待っていると、4時半くらいに玄関の扉が開く音が聞こえてくる。

 そして、ドタドタという音が近づき、扉が開かれた。


「こんにちはー」

「お前、本当にチャイムを鳴らさないよな」

「夫人だよ?」

「あっそ……」


 2人はそんなやり取りをしながらコタツに入る。

 もちろん、いつものようにユウセイが対面でキョウカが隣だ。


「2人共、わざわざ悪いね」

「いや、いつも来てるし」

「どうせ来るつもりでしたよー」


 キョウカが俺の腕を取る。

 まあ、昨日も来てたしね。


「それでメッセージにも送ったんだけど、昼に桐ヶ谷さんから電話があったよ」

「何だったんだ?」


 ユウセイ君が聞いてくる。


「その前にさ、実はこれ、2人には言うなって言われているんだよ」

「秘密……ウチやキョウカの家に知られたくない感じか?」

「そんな感じ。やっぱり悪魔教団の設立者が協会の人間だったことが気になっているんだろうね」


 仲が良くないし、恥部を晒したくないんだと思う。


「なるほどな……それで俺らには秘密なわけだ。じゃあ、秘密にしろよ。なんで呼んだんだ?」

「いや、俺達はチームであり、仲間じゃないか」


 ファミリー。


「あー、刀が怖かったわけね」


 ち、違うぞ。


「まあ、2人はあっちの世界のことを知っているわけだし、キョウカに至っては夫人だからね。今さら隠してもしょうがないでしょ」

「確かにもっと秘密があるわな。あっちの世界のこともこの魔法のことも……」


 ユウセイ君が手を出し、空間魔法を使って財布を取り出す。


「でしょ? それでさ、悪いんだけど、これから話すことを親御さんに黙っててほしいんだ」

「別にいいぞ。正直、ウチの家はそこまで今回の事件に関心があるわけじゃない」


 キョウカのお母さんもたまにあることって言ってたしな。


「キョウカもいい?」

「大丈夫です」


 キョウカもうんうんと頷いてくれた。


「悪いね」

「いえいえ。どうせ何もするなって言われてますし、男爵夫人ですから」


 なんかもう本当に夫人な気がしてきたな……


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