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第138話 依頼


 俺が貴族になって2週間が経った。

 その間、ユウセイ君とキョウカはほぼウチに居着いており、どちらかが用事があったとしても必ずどちらかはウチに来ていた。

 暇なのかなと思いつつもユウセイ君と焼肉に行ったり、キョウカと遅れた初詣に行ったりと休みを満喫できたと思う。


 そして、ユウセイ君とキョウカの冬休みも終わり、平日の昼間はルリとコタツから全然出てこないミリアムの3人で過ごしている。

 夕方になるとキョウカがウチに来るものの仕事もなく、ちょっと暇だ。


 あっちの世界の方もリンゴやリンゴ酒をラヴェル侯爵に託したし、クロード様にお礼状も送った。

 マリエル様からの呼び出しも今のところはないし、特にやることはない。


 そんな暇な俺はコタツに入りながらミリアムを膝に乗せ、スマホを見ていた。

 というか、昼休み時間らしいキョウカとメッセージのやり取りをしているのだ。

 内容は他愛のないことだったが、流れで今度、お出かけすることが決まった。


「ん?」

「どうしたにゃ?」


 ミリアムが見上げながら聞いてくる。


「桐ヶ谷さんだ……」


 メッセージアプリの画面から電話の着信画面に変わり、桐ヶ谷さんの名前が表示されていた。


「出るにゃ。間違いなく例の件にゃ」

「だろうね…………もしもし?」


 通話ボタンを押し、スマホを耳に当てる。


『もしもし、山田さん? 今、大丈夫ですか?』

「ええ、家でゆっくり過ごしていたところです」

『ちなみにですが、そこに誰かいます? 具体的には一ノ瀬君と橘君です』

「いえ、ルリがテレビを見ているのと、猫のミリアムが膝の上にいるだけです。というか、2人は学校ですよ」


 平日だもん。

 それにさっきまで午後からの授業だるいというメッセージが届いていた。


『そうですか……ちょっとご相談がありましてね』


 相談ね……


「もしかして、一ノ瀬君と橘さんには聞かれたくなかったりします?」

『しますね』


 やっぱりか。


「一応、聞きます。名古屋の件ですか?」

『はい、そうです』


 ですよね。


「何かわかったんですか?」

『何もわからないということだけがわかりました』


 はい?


「どういうことです?」

『これまでに何人もの調査員を派遣したんですが、何も成果が挙げられませんでした。襲撃された協会支部のビルには確かに悪魔らしき魔力を感知できるそうなんですけど、足取りはまったく掴めないそうです。相当、隠密性に優れた悪魔だということです』


 怖いなー。


「まさかですけど、それを私に調べろと?」

『ご相談です。協会としては探知能力に優れている山田さんに指名依頼を出したいそうです』


 えー……

 探知に優れているのは俺じゃなくてミリアムなんだけどなー。


「マジですか?」

『はい。ですが、強制依頼にはしませんし、断ってもらっても結構ですよ。あくまでもご相談です』


 あ、断れるんだ。


「断ってもいいんです?」

『さすがにねー……忘れているかもしれませんが、山田さんはルーキーなんですよ?』


 そういやそうだな。

 俺、入社2、3ヶ月の8級だったわ。


「ブラックじゃなくて良かったです」

『名古屋支部を壊滅するような相手を強制で調べろとは言えませんよ』


 でも、そんなことをルーキーの俺に頼みたいんだよなー……


「それで一ノ瀬君と橘さんに秘密なのは?」

『ご想像がついていると思いますが、協会と2人の家の関係がありましてね……この依頼、あくまでも山田さんのみなんですよ。極秘任務です』

「ですよねー」


 想像も何も2人から聞いている。


『それで断るということでいいですか?』


 どうしよ……


「ちょっと考えてもいいですか?」

『あ、受ける可能性があります?』

「まあ、危ないのも嫌ですが、絶対に嫌だっていうほどでもないです」


 悩み中。


『では、結論は今週中にお願いします。それと報酬の話をしておきましょう』


 報酬……そうか……

 指名依頼だから報酬が出るんだ。


「いくらです?」

『まず間違いなく、8級から7級に昇格します。内容次第では6級も十分にあり得るとのこと』


 7級が確実……伝説とまで呼ばれている月収100万……

 しかも、6級もあり得るらしい。

 6級は7級の倍の200万だ。

 と、とんでもないことだ……


「ごくり……」

『これはあくまでも貢献度の計算です。もちろん、別に依頼料があります』


 桐ヶ谷さん、説得が上手だな。

 ウチの村で働かない?

 いや、男爵夫人が嫌がるか。


「いくらでしょう?」

『受けてくださるだけで300万。これに出来高が付きます』


 300万……

 しかも、出来高……


「あの、出来高というのは……」

『すみません。これに関しては成果を見ての判断になります。ですが、名古屋支部を襲った悪魔を見つける。もしくは、悪魔教団の情報を掴んだら500万はお約束できるでしょう』


 500万……


「円ですよね?」

『もちろんです。そんなアホなことはしません』


 だよね……

 協会がそんなことはしないだろう。

 しかし、500万か……

 300万プラス500万……800万!?

 さらに6級に上がれば200万だから…………え? 1000万円!?


「受けましょう」

『…………山田さんってわかりやすくお金に目がくらみますよね。大丈夫です?』


 桐ヶ谷さんが呆れながらも確認してくる。


「大丈夫ですよ。戦闘は避けますし、調べるだけですから無茶はしません。私は死ねないのです」


 ルリがいるし、リンゴ村を守る男爵なんだ。


『まあ、橘君がいますしね』


 あれ?

 もしかして、この人、知ってる?


「あのー……」

『あ、私は何も知りませんからね』


 知ってやがる。


「とにかく、調べてみます!」

『そうですか。では、お願いします。あ、そうだ。調べる際に名古屋に行くと思いますけど、交通費や宿泊費は請求してくださいね。経費で落ちますから』


 そうなんだ……

 いや、そりゃそうか。


「わかりました」

『食費も出るかもしれませんけど、接待費は無理ですからキャバクラとかは自費でお願いしますよ』


 行かねーわ。

 というか、転移があるんだから家に帰るわい。


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[一言] 更新ありがとうございます!
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