第137話 帰宅
翌朝はキョウカ、俺の順番で朝風呂に入ると、メイドさんが呼びに来たのでラヴェル侯爵夫妻と朝食を共にした。
そして、一泊のお礼と後日、陛下の献上品を持ってくることを伝えると、お屋敷を出て、隣のクラリス様の屋敷に向かう。
門番に通され、この前も来た応接室で待っていると、すぐにモニカと共にクラリス様がやってきて、俺達の対面に座った。
「おはよう。昨日はどうだった? こけた?」
クラリス様が笑いながら聞いてくる。
「こけませんよ。普通に終わりました」
「なんだ……つまんない。ラヴェル侯爵との夕食会は? ミスった?」
なんでこの子は俺のミスを期待しているんだ?
「それもつつがなく終わりましたよ」
「あっそ。面白くないわね」
「王様と侯爵閣下の前でミスをする方が面白くないですよ」
怖いわ。
「ふーん……まあ、上手くいったのならいいわ。えーっと、山田男爵」
山田男爵って他人に言われると本当に芋みたいだなー。
「普通でいいですよ」
「そうするわ。それであんた達はこれからどうするの?」
「特にはしませんよ。国一番の弱小領主ですからゴマすりで陛下に献上品を渡すだけです……モニカ、昨日、ラヴェル侯爵にリンゴ酒を渡したんだけど、陛下とマリエル様の2つ分を用意するようにって言われた。特に陛下の分は陛下が出られる前に渡すべきだってさ」
クラリス様の隣に座っているモニカに指示をする。
「かしこまりました。早急に用意致しましょう。それと昨日、お茶会をした時にもマリエル様はやはり装飾品が気になっているご様子でした。近いうちに呼び出しがあるかもしれません」
こればっかりは仕方がないな。
世話になっているし、買うだけだからそこまで苦労もしない。
「あんたら、本当に金魚の糞で行くのねー」
「腰巾着です」
モニカはクラリス様の言葉を即、訂正した。
「クラリス様も何かご要望でもあります?」
「お菓子」
即答……
「用意致しましょう」
アップルパイでいいだろ。
菓子パンのやつ。
「タツヤ様、そろそろお暇しましょうか。国王陛下への献上品を急がないといけませんし、色々と準備をしないといけません」
それもそうだな。
「そうするか。クラリス様、お世話になりました」
「ええ、お菓子に期待しているわ」
「はい。では、私達はこれで……」
俺達はクラリス様のお屋敷を出ると、借家に向かい、家に転移する。
「おかえりなさい」
「おかえりにゃ」
「おかえり。あ、お邪魔してる」
リビングに行くと、ルリ、ミリアム、ユウセイ君がコタツに入って、各々好きに過ごしていた。
「いらっしゃい。さすがに疲れたよ」
そう言いながらコタツに入ると、キョウカもコタツに入る。
しかし、モニカは立ったままだ。
「タツヤ様、私は村に戻って準備や報告をして参ります。クロード様にお礼状を書かないといけませんし」
「それがあったね。じゃあ、お願い。リンゴ酒の方はこっちで注文しておくから」
「わかりました。では、私はこれで……」
モニカは頭を下げると、リビングから出ていった。
「叙爵式はどうでした?」
ルリが聞いてくる。
「王様と宰相様の3人だけだったし、緊張もしなかったよ。王様も気さくな方っぽかったしね」
「なら良かったです。あ、お茶でも飲まれますか?」
「お願い。昨日、飲みすぎたよ」
ほぼキョウカに飲まされたけど。
「わかりました」
ルリはいつもの番茶を用意しだした。
多分、濃いんだろうけど、今の俺にそれくらいがいい。
「山田さん、貴族?」
今度はユウセイ君が聞いてくる。
「そうだね。山田男爵」
「山田男爵……」
「なんか芋っぽくない?」
「うーん、まあ……あと芸人かな」
ルネサーンス。
「ユウセイ君、私も貴族。男爵夫人」
キョウカがアピールをする。
「夫人かー。まさか同級生に貴族夫人がいるとは……」
「ユウセイ君さ、間違っても、キョウカのあだ名を夫人にしないでね」
それを学校で広められたら捕まる。
「しねーよ。それよか、剣をもらったんだろ? 見せて」
ユウセイ君にそう言われたので剣を取り出して、コタツ机に置く。
「はい」
「おー! 宝剣って感じがする!」
「だよね。使うことはないけど」
というか、多分、使っちゃいけないやつだと思う。
「へー……キョウカ、持ってみ?」
「持たない。タツヤさんが嫌がるから」
「あー……なるほど、なるほど」
何か勘違いをしている顔だな。
深掘りされたくないから指摘しないけど。
「まあ、何にせよ、少しは落ち着いたよ。あとは交流をするくらいで問題事はなくなったしね」
年末から始まった盗賊騒ぎに貴族就任……
短い間に色々あったが、とりあえずはこれで大丈夫だろう。
後は呼び出し程度だろうし、おみやげを渡すだけだ。
「良かったですね」
「そうだね。キョウカにはこれからも付き合ってもらうと思う。マリエル様のところに行く時には連れていかないとマズい気がするし」
「大丈夫ですよ。まあ、冬休みが明けたら平日の昼間は難しいですけど」
それはさすがに学校を優先させる。
「わかってる。土日祝日になると思う。一応、俺達はリンゴ村からわざわざ来ているということになっているから文句は言ってこないと思う」
まあ、ほぼほぼバレていると思うけどね。
「了解です。男爵夫人の役目を果たしましょう」
「夫婦だなー……まあいいか。次はこっちの仕事だな」
ユウセイ君が苦笑いを浮かべたが、すぐに真顔になった。
「そうだね。情報は入っている?」
「全然。元々、悪魔教団の情報はほとんど入ってこないんだよ」
悪魔教団の創立メンバーが協会の人間だったらしいし、情報を流していないのかもしれない。
「じゃあ、協会からの情報待ちだね」
「そうなるな。まあ、休みだし、ゆっくりやる」
どうなってんのかねー?
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