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第134話 山田男爵爆誕!


 扉が開かれると、謁見の間に入る。

 謁見の間は長方形に長い部屋であり、確かに謁見の間と言われて、納得がいく。

 奥には玉座に座る太ったおじさんとその横に立つ長身のおじさんがおり、どう見ても王様と宰相様だろう。


 俺は部屋を確認すると立ち止まることなく、長くて赤い絨毯の上をまっすぐ歩いていった。

 そして、王様の前から2、3メートル離れた位置で立ち止まり、その場に片膝をついて跪く。


「おもてを上げよ」


 そう言われたので顔を上げた。


「そなたが山田タツヤで相違ないか?」


 王様が聞いてくる。


「はい。私がリンゴ村の村長を務めさせて頂いている山田です」

「うむ。まずはリンゴの栽培に成功し、開拓村を成功させたことは見事だった。国の事業として力を注いできたことだけあって、大変喜ばしい」

「ありがとうございます、皆と協力し、村として成り立つことができました」


 頑張った!


「うむ。次にだが、先日の盗賊及び悪魔の討伐も見事だった。聞けばネームドの上級悪魔だったらしいな?」

「はい。かなりの強敵で苦戦を強いられましたが、村を守るために死力を尽くしました」

「よろしい。そなたは政治の才だけでなく、武の才もあるようだ。聞けば大魔導士らしいな?」


 王様にまでそう言われている……


「大魔導士と呼ばれていたのは亡き祖父です。私は未熟でそこまでに達してはいないかと……」

「いや、上級悪魔を倒し、開拓村を成功させたそなたは大魔導士に違いない」


 あ、これRPGでよくあるループする問いだ。


「ありがとうございます。そのように評価して頂き、光栄です」

「うむ。そなたの働きは一村長では役不足だ。それに国としてもそのような人材を遊ばせておく余裕はない。よって、そなたの働きに報い、さらには今後の国の発展のために貴族に叙爵させようと思う。宰相、異議はあるか?」


 王様が隣のおじさんを見る。


「ありません。よき判断と思いまする」


 これ、台本だろ。

 別にいいけど。


「うむ。では、山田を男爵に任ずる。山田、何か意見はあるか?」


 こういう時にもし断ったらどうなるんだろうなって考えちゃうな。

 いや、そんなことしないけどさ。


「ありがたき幸せ。光栄ですし、村の者達も喜んでくれるでしょう」

「よろしい。宰相」

「はっ!」


 王様が立ち上がると、宰相様がどこからともなく剣を取り出す。

 剣は装飾が施された鞘に入っており、一目見ても高そうだ。


 王様は宰相様から剣を受け取ると、俺の前に立った。

 そして、剣を差し出してくる。


「山田、そなたを男爵に任ずる。民のために尽力するのだ」

「はっ! 民のため……そして、国家のために尽くします!」


 今さらすぎるが、俺、この国の名前を知らないわ……


「よろしい。受け取れ」

「はっ」


 王様から剣を受け取ると、俺の両手にずっしりとした重みが伝わってくる。


「よし。叙爵式は以上である。楽にしていいぞ」


 王様にそう言われたので立ち上がった。

 王様も玉座に腰かける。


「ハァ……こういう式典はめんどうじゃな」


 王様が嫌そうな顔をする。


「しきたりでございます」

「わかっておる。山田、遠い地よりご苦労であった。本当は話を聞きたかったのだが、すまんが立て込んでおる」

「いえ、呼ばれればすぐに参ります。それに時間を作って頂き、感謝しております」

「うむ。これから頼むぞ。そなたには期待しておる。では、帰っていいぞ。私もこれから準備をせねばならん」


 王様がそう言って立ち上がり、宰相様とどこかに行ってしまったので俺も部屋を出る。

 そして、来た道を引き返していき、中庭に出ると、馬車に乗り込んだ。


「終わったか?」


 馬車に乗り込むと、ラヴェル侯爵が聞いてくる。


「はい。陛下も忙しいみたいですね」

「だろうな。では、屋敷に戻ろう」


 ラヴェル侯爵がそう言うと、馬車が動きだした。

 そして、しばらく馬車に乗っていると、ラヴェル侯爵のお屋敷に戻ってくる。


「山田殿、ご苦労だった。夕食までは時間があるし、客室を用意したので休むといい」


 ルリやミリアムがいるウチに帰りてー。


「ありがとうございます」


 俺達は馬車を降りると、屋敷に入った。

 すると、ラヴェル侯爵がどこかに行ってしまい、俺はメイドさんに案内され、客室に通された。


「すごい部屋だなー……」


 客室で1人になると、部屋を見渡す。

 部屋は広く、俺の部屋の5、6倍くらいはあるんじゃないかと思う。

 さらには天蓋付きの大きなベッドがあり、窓際にはお茶を飲むためのテーブルが置かれていた。

 他にもワインセラーなどもあり、行ったことないから知らないが、ホテルのスイートルームがこんなじゃないかなと思うくらいに豪華な部屋だった。


「あー……疲れたー」


 ベッドに倒れ込み、柔らかい布団を堪能する。


「でかいベッドだなー。金持ちはすげーわ」


 しかし、暇だな。

 キョウカも同じように客室で休んでいるのか、それともマリエル様とお茶を楽しんでいるのか……


「転移したらマズいよな……」


 誰かが用事があって訪ねてきたらどこに行ったんだっていう話になる。


「仕方がない……」


 やることもないので部屋を探索し、浴室は設置されていたので風呂に入り、それからは窓の外をぼーっと見ながら時間を潰すことにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

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[一言] なんつーか…そういう性格なのか、それとも余程疲れているのか判りませんけどいきなりぶっちゃけたな、王様。 まぁ、だからこそ 「お側の方まで申し上げます」 「よい、直答を許す」 なんてやらずに済…
[良い点] たしかこの役不足の正しい使い方だったかな? この王様絶対愉快だわw
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