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第133話 お城


 ラヴェル侯爵のお屋敷に着くと、門の前に門番と共にメイドさんもおり、キョウカとモニカはそのメイドさんに連れられ、マリエル様のもとに行ってしまった。

 俺はそのまま門番と話をしながら待つ。

 すると、馬車がやってきて、俺の前に停まった。


「タツヤ様、これに乗ってください」

「わかりました」


 門番に勧められたので馬車の扉を開け、中に乗り込む。

 すると、馬車の中には軍服らしき服を着て、立派なカイゼル髭を蓄えたおじさまが座っていた。


「座りたまえ」


 どう見ても偉そうな人を見て固まっていると、おじさまが座るように促してきたので対面に腰かける。


「あのー、失礼ですが、もしやラヴェル侯爵閣下ですか?」


 というか、他にいない気がする。


「いかにも」


 ほらね。


「これは失礼しました。私はリンゴ村の村長を務めています。山田タツヤです。いつもお世話になっております」

「うむ。貴殿の村のリンゴは素晴らしいな。それと妻が貴殿の作るものにえらく興味を持っておる」


 買ってるだけなんですけどねー。


「ありがとうございます」

「私も色々と興味があるし、話をしたいと思うが、それは後にしよう」


 まずは叙爵式だわな。


「はい。叙爵式はどういったものになるんですか? 一応、マリエル様に聞いてはいるんですけど」

「妻は何と言っていた?」


 えーっと……


「男爵程度なら国王陛下より剣を授かるだけですぐに終わると伺っております」

「ハァ……またいい加減な……まあ、女は興味ないだろうがな」


 え? 違うの?


「他にあるんですか?」

「まず叙爵式は謁見の間で行われる。とはいえ、そこにいるのは陛下と宰相殿だけだろう」


 皆が見ている前でするということではないらしい。


「それで剣をもらうんですか?」

「まあ、そうだな。謁見の間に入ったらまっすぐ陛下のもとに向かい、片膝をついて頭を下げろ。後は陛下が適当な口上と共に剣を下さるから受け取って礼を言うんだ。その際に国に尽くしますということは絶対に言っておけ」


 それを言うのが大事なわけだ。


「わかりました」

「本来ならその後に話をしたりするんだが、今回は陛下が忙しいからないと思う」


 隣国に行かないといけないらしい、準備があるんだろうな。


「それは嬉しいです。陛下と話すなんて畏れ多いですよ」

「まあ、貴殿はそうかもな。だが、おそらく後日、呼び出しがあると思う」


 え? マジ?


「なんでですか?」

「貴殿が私の妻に渡した整髪剤だったか? あれを王妃様が気に入っていてな。それで礼と共に褒美を授けると言っているから陛下も同席なさるだろう」

「陛下もです? やっぱり王妃様と会うには同席がいるんですか?」

「別にそんなことはない。貴殿らが私の妻と会っている時も私は同席していないだろう?」


 まあ、確かに。


「同席なさらないんですか? やはりお忙しいとか?」

「仕事があるのは確かだが、整髪剤など興味がない」


 なるほど。


「男性はそうでしょうね。実際、私もそこまで興味はないです」

「だろう? だが、うるさいわ。私にも息子達にも使えと強要してくる」

「それはすみません」

「いや、よい。そんなことで妻の機嫌を取れるなら楽なもんだ」


 マリエル様は物事をはっきり言う人だから色々と言われているんだろうな。


「では、なんで陛下が同席するんです?」

「陛下は王妃様以上に貴殿の村のリンゴを気に入っているようだ」


 リンゴか……


「持ってきているんですけど、渡した方がいいですかね?」


 一応、おみやげというか献上用に色々と持ってきてはいる。


「叙爵式だからな……後で届けさせよう」

「お願いします」

「うむ……さて、山田殿、あれが王城だ」


 ラヴェル侯爵が指差した先には白い大きなお城が見えていた。


「すごいですね」


 海外に行ったことはないが、ヨーロッパの古城とかってあんな感じなんだろうか?


「権力の象徴だからな。すぐに着くからしばし待て」


 ラヴェル侯爵に言われたようにそのまま外を眺めながら待っていると、馬車が城の中に入っていく。

 そして、ついに馬車が止まった。


「山田殿、私はここで待っているから行ってくるといい」


 ラヴェル侯爵がそう言って頷いたので馬車から降りる。

 馬車から降りると、城の中の中庭のようで数人の兵士が馬車を囲んでいた。


 そのうちの1人が近づいてくる。


「お待ちしておりました、山田様。どうぞこちらへ」

「ええ」


 兵士が頭を下げると、先を歩き始めたため、ついていき、城の中に入った。

 王宮に入り、兵士の案内で歩いていると、召使いや兵士とすれ違うが、その度に端に避け、頭を下げてくる。


 客だからか、俺が貴族になるからか。

 どちらにせよ、この前まで係長にすぎなかった俺からするとこそばゆい。

 村の人も敬意は込めてくれるが、やはりフレンドリーなのだ。

 俺もそっちが良い。


 そのまま王宮内を進んでいき、階段を昇っていくと、豪華な扉が見えてきた。

 扉の前には兵士が立っており、番をしている。


「山田様、こちらが謁見の間になります。中で陛下と宰相様がお待ちです」


 案内をしてくれた兵士が立ち止まり、教えてくれた。


「わかりました」


 頷くと、番をしている兵士が扉に手をかけ、見てくる。


「よろしいでしょうか?」

「お願いします」

「では……」


 番をしている兵士が頷くと、扉を引き始めた。


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ラヴェル侯爵が派閥の新参である山田に殿を付けるのはやはり魔法使いの地位が高く見られ、単独で上級悪魔を倒せる大魔導士だからだろうか?
[一言] 男からしたら髪の毛なんていずれ失うものだから興味ないですよね
[一言] ドキドキで俺なら胃が痛くなるね!
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