第130話 正月
キョウカとの電話を終えると、ルリが作ってくれたおそばを食べた。
そして、4人で紅白を見終え、12時を越えて新年だなーっと思うと、就寝した。
翌朝、ルリが作ってくれたおせちとお餅をルリとミリアムと一緒に食べる。
おせちとお餅はあるものの、正直、あまり正月感がない。
去年までは貴重な休みだったが、今年はいつもの日常だからだ。
「ルリ、あげる」
なんとなくあげた方が良いなと思って用意しておいたお年玉のポチ袋をルリに渡す。
「ありがとうございます」
「好きに使いなよ」
多分、チョコ菓子に消えると思う。
「はい。ところで、今日はお姉ちゃんとユウセイさんが来られるんですよね?」
「そうだね」
「おせち食べますかね?」
俺の目の前にはとても俺達だけでは食べきれないおせちが並んでいる。
ルリが気合を入れて作りすぎたのだ。
モニカを入れた俺達4人は少食だし、絶対に食べきれない。
「ユウセイ君に食べさせよう」
「そうしましょう」
ルリはそう言いながら栗きんとんを食べる。
なお、栗きんとんの減りが異様に早い。
その光景を見ながら俺もおせちに手を伸ばした。
「数の子、美味いな。俺、好きなんだよね」
「良かったにゃ……いっぱい食べると良いにゃ……」
この猫はなんで引いているんだ?
俺達はその後もおせちとお餅を食べ、お腹がいっぱいになると、正月のテレビを見ながらゆっくりと過ごした。
そして、昼食をどうしようかと悩んでいると、キョウカから連絡が来たので迎えに行く。
「お待たせしましたー。あけましておめでとうございます」
「おめでとう」
キョウカが車に乗り込んできたので早速、出発した。
マンションの駐車場でキョウカを待っている間にユウセイ君から家に帰ったからいつでも大丈夫と連絡が来たのだ。
「お年玉はもらえた?」
「例年以上にもらえましたよー。おめでとうって言われましたー」
新年のことだよね?
「そ、そっか。大切に使いなよ」
「服買おー」
聞いてねーし。
俺達は話をしながらユウセイ君の家に向かった。
そして、同じようにマンションに駐車場に車を停めると、ユウセイ君に着いたと連絡する。
すると、すぐにユウセイ君が降りてきて、後部座席に乗り込んだ。
「あけおめ」
「おめー」
「おめでとう」
新年の挨拶をすると、車を発進させる。
「ユウセイ君、実家に帰ってたのに大変だね」
「いや、そんなに遠くないからな。それにバイトできなくなったって愚痴ったら例年以上にお年玉をくれてラッキーだわ」
この子も多かったのか。
どれくらいもらっているんだろう?
この子達の親戚って多そうだし、金持ちそうだからいっぱいもらってそうだ。
「あげる。親御さんには内緒ね」
運転しながら懐からポチ袋を取り出すと、2人に渡す。
「いいのか?」
「受け取れませんよ」
「いつも世話になっているし、君らの報酬ももらっているからね。それにリンゴ村のトラブルにも付き合わせちゃったし、気持ち、気持ち」
全然、少ないけど。
「じゃあ、もらっておく。どうもっす」
「すみません」
2人は素直に受け取った。
「あまり良くないと思うから誰にも言わないでね。特にキョウカ」
絶対にダメ。
「私?」
「ふっ、リアルパパ活」
ユウセイ君が笑った。
「やめて」
それで渡すかどうかをものすごく悩んだんだから。
「あー……さすがに金銭は……」
「だよね。キョウカ、服買うんでしょ? なるべく早く使って忘れて」
「わかりました」
キョウカが苦笑したところで家に到着した。
そして、家に入ると、ユウセイ君のためにおせちを出す。
「いや、多くね? 山田さんのところって4人じゃん。しかも、皆、そんなに食べないし」
コタツ机には五重の重箱タワーが置いてある。
「ウチの子が作ったやつ。食べて」
「上手にできました」
ねー?
ユウセイ君は重箱を一つずつ持ち上げて、並べていった。
「すげーな」
「ウチのよりすごいですね。でも、偏りが……」
キョウカが言うように一部だけ異様に減っている。
「まあまあ」
仕方がないじゃん。
「黒豆と栗きんとんと伊達巻きがほぼない」
「エビと数の子もほぼないな……」
2人が呆れながらおせちを見ていく。
「美味しいですし」
「エビと数の子が好きなんだよね」
そう言うと、隣に座っているキョウカが腰を浮かし、触れるくらいに接近してきた。
「もう……!」
「まあ、良いことだと思うぞ」
…………あー、数の子ってそういうこと。
ミリアムがちょっと引いていた意味がわかったわ。
でも、そんなことを気にしたことがない。
「まあ、食べてよ。余るし」
「お餅もありますよ」
お餅も余りそうなんだよね。
「まあ、もらうわ」
「私も少しいただきます」
俺達はおせちとお餅を食べながら話をすることにした。
「それで名古屋支部のことだけど……」
早速、話を切り出す。
「それだよな。ウチはまだ詳細の情報を掴んでいない。むしろ、協会を探れ的なことを言われた」
協会との仲が微妙だからだろうな。
しかし、高校生に頼むかね?
「ウチはタツヤさんに任せるそうです。おじいちゃんにそういうのはお前には期待してないからって言われてお年玉を例年以上にもらいました」
この子、やっぱり一族からバカだと思われてるな。
「やはりどこもまだ情報を掴めていない感じか……」
「山田さんは? 桐ヶ谷さんから何か聞いてない?」
ユウセイ君が聞いてくる。
「いや、俺も何も聞いていないね。桐ヶ谷さんも他の退魔師さんに電話しないといけないっぽくって、名古屋支部が壊滅したことと夜に出歩くなってことを伝えたらすぐに電話を切ったよ」
急いでた雰囲気だった。
「協会も対応に追われている感じか……とりあえずは仕事を止めて、情報が入るのを待った方が良いな」
「だと思うよ。状況がわかっていない今は動かない方が良い」
「待機かー……まあ、冬休みというか正月だし、どっちみち、そこまでやる気はなかったけどさ」
まあね。
学生なんだからせっかくの長期休みを満喫するべきだ。
「2人共、実家の手伝いとかはないわけ?」
「協会を探るというか、情報を仕入れるのが手伝いだろうな」
「私はないです」
なるほどね。
「じゃあ、待つか」
「家にいてもつまんないし、入り浸るか」
どちらにせよ、そうするつもりだった気がする。
「うん。食べて」
「そろそろ餅じゃなくて米が欲しいわ」
しかし、おせちをよくこんなに食べられるな、この子。
「明日は米にしてあげる。キョウカはどうするの?」
「もちろん一緒にいますよ。あ、最後の数の子食べます?」
まあ、好きだからもらうよ。
でも、ビール飲みたいなー。
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