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第128話 大晦日


 その後、マリエル様やクラリス様とお茶会をした。

 といっても話すのは主にキョウカであり、マリエル様がキョウカを気に入っているのは本当のようだった。

 そして、ある程度話し終えると、家に帰る。


「いやー、山田男爵ですね。私は男爵夫人です。ルリちゃんは男爵令嬢」


 隣でコタツに入っているキョウカが笑った。


「山田男爵って田舎臭がすごくない?」


 山と田んぼだもん。


「実際、そうじゃないですか。辺境なんですよね?」

「まあね」

「そこまで破格の出世って感じではないですし、良いじゃないですか」


 そうかなー?


「モニカ、どうなの?」


 対面にいるモニカに聞く。


「良いと思いますよ。これで正式にリンゴ村はタツヤ様の領地です。好きにできます」


 これまでは国の管理だったのが完全に俺のものになったわけだ。

 ないと思うが、国に没収とかはなくなったから一安心ってところかな?


「30人程度だし、狭い領地だね」

「多分、この国で一番小さい貴族だと思います。ですが、開拓すればそのまま領地になりますから一大勢力を築くことも可能です」

「嫌だよ」


 目指すのはスローライフだもん。


「そうでしょうね。マリエル様もタツヤ様が野心のない方だとわかったから貴族に推薦したのでしょう」

「貴族になったからといって、なんか交流があるわけではないよね?」

「基本はないです。我々は完全にラヴェル侯爵の派閥です。クラリスの家以上に腰ぎんちゃくですね」


 言い方はあれだが、まさしくそうだろう。

 会ったことがないけど、ラヴェル侯爵にも挨拶をした方が良いだろうな。


「まあ、それでいいか。クロード様は?」

「クロード様はクロード様を中心としたこの辺一帯の派閥をお持ちです。とはいえ、リンゴをお任せしているので敵対はあり得ないです。後でお礼状を送っておきましょう」

「じゃあ、それで。争いは嫌だもん」

「クロード様もそう思っていると思います。これからも良好な関係を築いていきましょう」


 それがいいね。

 クロード様は良い人だから大丈夫だろう。


「了解。マリエル様から連絡が来たら教えて」

「かしこまりました」


 とりあえずはこんなものか。

 年内に問題事が終わって良かったわ。


「キョウカ、今日はいつまでいるの? 31日だけど」


 実家に帰らないのかな?


「今日は家ですよ。明日の朝から実家です。まあ、お年玉をもらったら帰りますけど」


 そういえばすぐに帰るって言っていたな。


「まあ、今日は早めに帰りなよ。送っていくから」

「そうします。タツヤさんは帰らないんですか?」

「帰んないね。別に帰ってもやることないし」


 というか、ルリを置いていくのもどうかと思う。


「へー……じゃあ、明日も来ようかな。初詣にでも行きましょうよ」

「それもいいかもね。モニカ、あっちの世界には新年を祝うみたいなことはないの? いや……というか、新年か?」


 どうなっているんだろう?


「別にないですよ。ただの冬の一日です。あちらの世界では夏に建国記念日がありますね」


 なるほど。

 それが正月みたいものなのかもしれない。


 俺達はその後も話をしながらコタツで過ごしていき、夕方になった。


「キョウカ、そろそろ送っていくよ」

「そうします。あ、着替えますので部屋をお借りしますね」


 キョウカは気に入ったらしく、ずっとローブだったのだ。

 そのまま待っていると、キョウカが着替え終えたので家を出て、車に乗り込む。

 そして、そのまま走らせていると、年末なこともあって車も少なく、すぐにキョウカのマンションに到着した。


「今日はありがとうね」

「いえいえ。これも妻の役目です」


 設定ね。

 貴族になっちゃうから嘘でしたとは絶対に言えなくなったけど。


「一応、聞いていい?」

「何です?」

「親御さんに何か言った?」

「時間の問題って言いましたよ」


 言ったんかい……


「何て言ってた?」

「いつ結婚するの? 卒業してから? どちらにせよ、高校くらいは出た方が良いぞ、ですね」


 本当に別世界の家だな……

 価値観というか考え方が違いすぎる。

 普通は呼び出しを受けて殴られると思う。


「挨拶した方がいい?」


 まだ付き合っていないし、そういうことじゃないけど、預かっているわけだから挨拶くらいした方が良い気がしてきた。


「別にいりませんよ。挨拶をしに行ったらそのまま役所に連れていかれますよ?」


 怖っ……


「そっか。じゃあ、それは後日にする」


 だいぶ先。


「そうですか。じゃあ、明日の昼過ぎくらいに伺いますので初詣に行きましょう」

「いや、どうせ車で行くし、迎えに行くよ。帰ったら連絡ちょうだい」

「わかりましたー」


 キョウカが謎の敬礼をする。


「あ、そうだ。一応聞くけど、晴れ着だったりする?」

「動きにくいから着ませんよ。普通の格好です」


 あ、そうなんだ。

 名家だから晴れ着かと思った。


「そっか。じゃあ、また明日。良いお年を」

「明日も会うのに変な感じですが良いお年を。来年も良い年になるといいですね」

「そうだね」


 来年も今年後半くらいに良い日が続くといいわ。




 ◆◇◆




 キョウカを送り届けた後、スーパーでルリに頼まれたお餅を買った。

 そして、車に乗り込むと、車内に置いておいたスマホを見る。


「ん? 桐ヶ谷さん?」


 桐ヶ谷さんから着信があったようだ。

 何だろうと思い、電話してみる。

 すると、すぐに呼び出し音が鳴りやんだ。


『もしもし、山田さん? 今、電話大丈夫です?』

「ええ。餅を買ったところですね」

『そうですか。ちなみに、そこに橘君や一ノ瀬君はいます?』


 キョウカとユウセイ君?


「いや、さっきまで橘さんと一緒だったというか、家にいたんで送り届けたところですよ」

『相変わらず、仲がよろしいですね。あ、いや、そんなことより、ちょっと報告がありまして』


 報告?

 今日、大晦日だぞ。


「こんな年末に何です?」

『それは申し訳ない。ですが、緊急でしてね』


 緊急……

 嫌な予感。


「何かありましたか?」

『単刀直入に言います。昨日の晩、協会の名古屋支部が壊滅しました』


 は?


「か、壊滅!? どういうことです!?」

『そのまんまです。協会のビルに何者かが侵入し、その場にいた職員や退魔師さんが全滅しました。協会にいなかった者は無事ですが、それも少数です』


 マジかよ……


「一体誰が?」

『調査員の見解では悪魔の犯行だろう、と』


 悪魔……


「悪魔教団ですか?」

『そう考えるのが妥当かと……』

「最近、悪魔が少ないと思っていたんですけど」

『ええ。ですが、名古屋の方ではかなり増えていたようです』


 拠点をあっちに移したのか?


「それは……」

『とにかく、そういう状況なんで』

「我々はどうすれば?」

『とりあえずは待機です。別に外に出てもいいですけど、夜は控えてください』


 それがいいな。


「わかりました」

『何かがわかり次第、また連絡します。橘君や一ノ瀬君には家を通して協会から連絡しますので』

「お願いします」

『では、これで。他の退魔師さんに連絡しないといけないので失礼します』


 桐ヶ谷さんはそう言って、電話を切った。


「マジか……」


 壊滅って……

 何が起きているんだ……


ここまでが第3章となります。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


本作ですが、皆様の応援のおかげで書籍化することとなりました。

大変ありがとうございます。


それに伴い、タイトルが変わっていますことをご承知ください。

というのも、本作を見直し、改めてタイトルを見た時に『人生逆転魔法』って何だ? サブタイが長すぎて意味がわからないと思い、編集さんと改稿を進めながらタイトルを考えていました。

それでタイトルがこれに決まり、編集さんや編集部からもオーケーをもらったのでこのタイミングで変更させてもらいました。


正直、今まで本作を読んでくださった読書の皆様は『セカンドハウス?』だと思いますが、主人公の目的を明確にし、より良い話に改稿させていただきました。

それに伴い、『第013話 人生の目的』を若干、改稿しておりますが、山田の目的を明確化しただけで大きく変わっているわけではなく、話の本筋自体は変わっておりません。

また、これからの投稿ペースも変わりませんし、引き続き、第4章も読んでいただけると幸いです。


書籍については、随時お知らせすると思います。

引き続き、本作を楽しんで頂き、応援して下さりますよう、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ジャンプ漫画のような引きうめぇー。
[一言] 更新ありがとうございます! 書籍化おめでとうございます!
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 大晦日も元旦も仕事だと感覚的には十二月三十二日とか十三月一日みたいな感覚になります。つうか、そんな感じで仕事してました。 夜勤中に聞く除夜の鐘は何とも言えず心…
感想一覧
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