表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/229

第124話 終わったー……


「タツヤさん、大丈夫ですか?」


 俺が動かなくなったバルトルトを見下ろしていると、ルリが近づいてくる。


「うん、大丈夫。ちょっとドキドキするだけ……」


 ルリにそう答えると、背中に何かの感触がした。

 振り返ると、そこにはキョウカがおり、俺の背中に触れている。


「タツヤさん、落ち着いてください。戦いは終わりました」


 キョウカにそう言われて、自分がまだ炎の剣を持っていることに気が付いた。


「正直、死ぬかと思った」

「誰でもあの威力を見ればそう思います」

「キョウカも?」

「私はなりません。どうせ当たらないし、覚悟はできてますから」


 覚悟、か。


「どうしてそんな覚悟ができるの?」

「慣れでしょうかね? 私はタツヤさんの半分も生きていませんが、そういう風に育てられ、生きてきました。あと、私は暗示でどうとでもなります」


 暗示良いな。

 俺も欲しいわ。


「タツヤさん、お気になさらずに。こういう悪魔は特殊ですし、タツヤさんの敵ではありません」


 ルリも慰めてくれる。


「うん、もう大丈夫。単純に俺の覚悟が決まってなかっただけだから」


 俺は退魔師になったが、身の危険を本当の意味で理解していなかった。

 お金に目がくらみ、見ないようにしていたのだろう。

 だが、今回のことでよくわかった。

 そして、自分の中で答えも出た。


「タツヤさん、こういう時はさっさと休むに限りますよ。帰りましょう」

「そうだね……他の盗賊は倒したの?」

「私の方は問題ないです」


 となるとあとはユウセイ君か……


 そう思っていると、森の中からユウセイ君が出てきた。


「あ、こっちも終わったんだな」

「森はどうだった?」

「悪魔に憑かれた男達がいたけど、皆痩せてて、弱かったな」


 痩せている……

 昼間にいた開拓民だろう。


「他のところの開拓民の人達が盗賊と協力したってところですかね?」


 ルリが聞いてくる。


「多分、そうだろうね……ん?」


 ルリと話をしていると、道の向こうに灯りが見えていた。

 その灯りは複数あり、しかも、動いてこちらにやってきている。


「盗賊の生き残りかな? 暗くて見えないな……」


 辺りはすでに真っ暗なのだ。


「全員、動くな! こちらは正規軍である!」


 道の奥から大きな声が聞こえてくる。


「タツヤさん、ハリアーの町の兵士かと。多分、援軍でしょう」


 ルリが教えてくれた。


「私はリンゴ村の村長です! 盗賊と悪魔を討伐しました! クロード様が出してくれた援軍でしょうか!?」


 俺も大きな声を出し、答える。


「そうだ! 了解した! そちらに向かう!」


 返答が来ると、一人の男が馬に乗って、こちらに駆けてくる。

 そして、俺達の前にやってくると、馬から降りた。


 男は全身鎧を着ており、強そうだ。


「あなたがリンゴ村の村長の山田殿でしょうか?」


 兵士が聞いてくる。


「ええ。リンゴ村の村長を務めている山田です。クロード様の援軍ですかね?」

「はい。クロード様の命で来ました。遅れて申し訳ない」


 そんなことはない。

 距離を考えるとすぐに兵を出してくれたんだと思う。


「いえ。助かります。クロード様にも感謝します」


 頭を下げる。


「いえ……それでこの者達ですか?」


 兵士が倒れている男達を見渡した。


「はい。ここにいるのは盗賊です。ですが、悪魔に憑かれていたようです。それにそこにいるのはバルトルトという上級悪魔です。今回の首謀者はそいつです」

「じょ、上級悪魔……!? そんな者がこんなところに……それを倒されたんですか?」


 兵士が驚いた様子でバルトルトを見る。


「死ぬかと思いましたが、なんとか……」

「さすがは大魔導士様ですな」


 やっぱり大魔導士ということになってる……


「それとですが、森の中にも悪魔に憑かれた男達がいます。こちらは他所の開拓民ですね」

「わかりました。こちらで回収致しましょうか?」


 俺達はあくまでも独立しているからの確認だろうな。

 捕虜というのかわからないけど、こちらの裁量権があるんだ。


「我々では持て余しますし、お願いします」

「かしこまりました。おいっ!」


 兵士が後ろに控えている兵士達に指示を出すと、数人が森の中に入り、その他の兵士も忙しなく動き、盗賊を回収していく。


「助かります」

「いえ……村長殿、後日で構わないのでクロード様に説明をお願いできませんか? こちらでも報告はしますが、盗賊や悪魔となると大事です。クロード様も国に報告しなければなりませんし、詳細を知りたいと思います」


 モニカが王家や貴族は盗賊や悪魔に敏感って言ってたしな。


「わかりました。明日にでも伺うとお伝えください」


 早い方が良いだろう。


「ありがとうございます。皆さんも今日はお疲れでしょう? 後のことは我々がやりますので村に戻ってお休みください」

「こちらこそ、ありがとうございました。お言葉に甘えて休ませてもらいます」


 そう言うと、皆を連れて、村の中に入っていく。

 すると、村の男達が門の近くに集まっていた。


「山田さん、どうだった?」


 コーディーさんが代表して聞いてくる。


「もう大丈夫です。盗賊のようでしたが、撃退しましたし、クロード様が軍を出してくれたのでもう危険なことはないでしょう。皆さん、お疲れさまでした」


 そう言うと、全員が安堵した表情を見せた。


「それなら安心だ」

「ええ。そういうわけですので今日は解散してゆっくり休んでください。俺達も休みます」

「わかった」


 村の男達は解散し、各々の家に戻っていったので俺達も執務室に向かう。

 すると、モニカが待っていた。


「あ、タツヤ様、終わりましたか?」

「うん、終わった。相手はネームドの上級悪魔だったよ」

「上級!? それにネームドですか!?」

「そう言ってたね」


 実際、あれだけ強いんだから上級なんだろう。


「なるほど……」

「クロード様の援軍が到着して回収してもらうことになった。それで明日、クロード様に説明に行くからモニカもついてきてくれる?」

「わかりました。それとすみませんが、マリエル様にも終わったという一報を伝えた方が良いと思います」


 確かに……


「ミリアム、モニカを王都に連れていってくれる?」

「わかったにゃ」


 ミリアムはジャンプし、モニカの腕の中に納まる。

 すると、すぐに転移で消えてしまった。


「帰ろう」


 俺達は執務室の裏口から出ると、研究室に行き、自宅に戻ってくる。

 時計を見ると、時刻はすでに7時だった。


「こんな時間か……2人共、今日はありがとうね。送っていくよ」

「いや、いい。電車で帰る」

「そうだね。タツヤさん、今日はお風呂に入って、お酒でも飲んでゆっくりしてください」


 それがいいかもしれない……


「わかった。じゃあ、2人共、また今度ね」

「ん」

「じゃあ、私達はこれで。おやすみなさい」


 2人はそのまま玄関の方に向かう。


「いや、キョウカ、着替えなよ……」

「あ、そうでした! すみませーん」


 キョウカはようやく自分が袴姿なのに気付き、俺の部屋に入っていった。


「あれで電車に乗られたら他人の振りをするな……」


 まあ、わからないでもない。


 その後、キョウカが着替え終えて戻ってくると、2人はそのまま帰ってしまった。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
[一言] モニカの報告(猫憑き)がめちゃくちゃ早いので、転移バレ不可避ね。 うまく取引できるのかな〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ