第121話 なんで知ってるの?
モニカ、ミリアム、ダリルさんがいなくなったのでこの場にはルリとキョウカとユウセイ君が残っている。
「2人共、本当に手伝ってくれるの? 低級悪魔かもしれないけど、相手は剣を持っているよ」
「大丈夫、大丈夫。剣はさすがにないけど、武器を持っている奴と戦ったことは何回もあるし」
本当に別世界の人間なんだな。
まだ高校生なのに。
「キョウカも?」
「何も問題はないね。前にも言っただろう? 私は得意なんだ」
本当に何が得意なんでしょうねー……
いやまあ、一つしか浮かばないけどさ。
「ルリは大丈夫?」
「問題ありません」
ルリは俺より魔法が使えるし、大丈夫か。
「あ、タツヤさん、一回家に帰っても大丈夫ですか? 服が汚れたら嫌なので着替えてきたいんです」
汚れる……
女の子らしいセリフだと思うのだが、キョウカが言うと返り血にしか聞こえないのは何故だろう。
「いいよ」
「それとタツヤさんの部屋も借りても良いですか? 着替えたいので」
「それもいいよ。あ、悪いんだけど、家の鍵を閉めておいてくれる?」
ポケットから鍵を取り出して渡す。
「わかりました。では、一回戻ります」
キョウカは鍵を受け取ると、裏口から出て、家に戻っていった。
「もう結婚しちゃえよー」
ユウセイ君がからかってくる。
「なんで?」
「鍵のやり取りが夫婦っぽかったって思って」
そうかな?
「ユウセイ君は着替えなくていいの?」
「俺はキョウカと違って人を斬らないから返り血を浴びない」
やっぱりユウセイ君も返り血って思ったんだ……
「ルリは俺のそばにいるんだよ」
「お任せを。必ずやお守りします」
逆のつもりで言ったんだけど、まあいいか。
「じゃあ、門の前に行こうか」
俺達は家を出ると、門のところに戻る。
すると、門の近くにはコーディーさんだけが残っていた。
すでにダリルさんが指示をしてくれたのだろう。
「寒いです……」
門の前で待っていると、ルリがくっついてくる。
ルリは寒がりだからきついのだろう。
「焚火でも起こそうか」
「あ、薪を持ってくるわ」
コーディーさんがそう言ってこの場を離れると、すぐに薪を抱えて戻ってきた。
「使ってくれ。薪はいくらでも在庫があるからな」
「いっぱい伐採しましたしね」
コーディーさんがそのまま薪を並べてくれたので魔法で火を点ける。
そして、全員で火に当たった。
「暖かいです」
「だねー」
「焼き芋食べたいな」
この子は本当にそればっかりだな。
「コーディーさん、ここはもう俺達だけで大丈夫なんで村の見回りの方をお願いします」
「わかった」
コーディーさんは頷くと、リンゴ園の方に向かう。
俺達がその後も焚火に当たりながら待っていると、向こうからキョウカが歩いてきているのが見える。
「ユウセイ君さ、袴姿の少女が見えるのは気のせい?」
「気のせいじゃないな。マジもんのコスプレで来やがった」
キョウカはいつものポニーテールだが、白い胴着で黒い袴を穿いていた。
そして、腰には刀が……
「お待たせしました。寒いですねー」
キョウカは何事もなかったように焚火に当たる。
「お姉ちゃん、かっこいいですね」
「そう? ありがとー」
確かにかっこいいと思う。
でも、似合いすぎだ。
これで人斬りキョウカちゃんになったらちょっと怖い。
「キョウカ、それ、どうしたの?」
「剣術の練習をする時に着るやつです」
「へー……」
そんなのあるんだ……
「似合いません? 親族にも好評なんですけど」
「いや、似合ってるよ。ものすごく似合っているし、似合いすぎているくらいだ」
ポニテだし。
「えへへ。嬉しいです」
うん……まあいいか。
俺達がその後も焚火に当たっていると、次第に空が茜色に変わりだす。
「日が短いなー。まだ4時過ぎだぜ?」
「仕方がないでしょ」
冬なんだから。
「タツヤさん、モニカさんとミリアムちゃんです」
キョウカが袖を引っ張ってきたので見てみると、確かに昼に見た光景と同じくミリアムを抱えたモニカがこちらに近づいてきた。
「ただ今戻りました」
「戻ったにゃ」
2人はこちらに来ると、焚火に当たりだす。
「お疲れ。マリエル様は何て?」
「すぐに動くそうです。相手が盗賊や悪魔の可能性があるならクロード様に軍を出すように王家に頼むそうです。王家、貴族は盗賊や悪魔に敏感ですのでクロード様もすぐに軍を出してくださると思います」
そうなのか……
「でも、時間がかかるよね?」
王都とハリアーの町はかなり離れているし、鳩でも飛ばすんだろうか?
「一応、王家と各貴族の家には電話のような魔道具がありますので指示は早いかと。ただ、軍を編成するのと単純にハリアーの町からここまでは距離がありますので来ても夜でしょうね」
電話があるんだ……
といっても援軍は夜か。
「それまで待機した方が良いね」
「それがよろしいかと。ただ、その前に向こうが攻めてくる可能性の方が高いです。何しろこの寒さですしね」
外の連中は薄着というか穴が空いているような服だった。
それに空間魔法を使えるかはわからないが、野営をできるような装備はなかったと思う。
「いつ戦闘になるかわからないし、注意しておこう」
「タツヤ様、申し訳ありませんが、戦闘となれば私はお役に立てません。そういうわけで夕食でも買ってきます」
いつ戦闘になるかわからないんだから食べられる時に食べておくか。
「わかった。悪いけど、コンビニで適当に買ってきてくれる? 財布は俺の部屋にあるから。場所はわかる?」
「わかります。では、適当に買ってきますので……」
モニカがそう言ってこの場をあとにすると、キョウカが俺の腕を取り、身を寄せてくる。
「どうしたの? 寒い?」
「いえ……別に……」
何だろうと思い、他に皆を見るが、誰も目を合わせてくれなかった。
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