第118話 問題
釣りに行った翌日は家でまったりと過ごしていた、
外は雪もちらついており、かなり冷えている。
「タツヤさん、見て、見て! ちょーかわいくないですか?」
今日もユウセイ君とキョウカが家に来ていた。
ユウセイ君は俺が持っている漫画を静かに読んでおり、キョウカは俺の隣で一緒に猫の写真を見ていた。
「そうだね。俺も昔は休みの日にこういう写真を見ていたよ」
「癒されますよねー」
どうでもいいけど、キョウカが近い。
隣に座っているから近いのは当たり前なのだが、完全にくっついている。
「どれどれ……ふっ……私の敵ではないにゃ」
ミリアムがコタツから出てきて、キョウカのスマホを覗き、勝ち誇った顔でコタツの中に戻っていった。
「嫉妬してるー。かわいい!」
キョウカはコタツに腕を突っ込み、ミリアムを引っ張り出す。
そして、抱えると、背中を撫で始めた。
「嫉妬なんかしてないにゃ。虎は猫に嫉妬なんかしないにゃ」
例えなんだろうけど、猫が猫で例えるなよ。
「大丈夫だよー。お姉ちゃんはミリアムちゃん一筋だし、ずっと一緒にいてあげるからね」
「聞いてないにゃ……」
ミリアムが呆れていると、扉が開かれ、モニカがやってきた。
「失礼します」
モニカはそう言うと、俺のところにきて、膝をつく。
「どうしたの?」
時刻は昼の2時である。
今日は夕方に来るって言ってたし、早い。
「タツヤ様、実はリンゴ村で問題が起きております」
「え? 問題?」
「はい。ゆっくりとお休み中のところを申し訳ありませんが、対応をお願いします」
すべてを任せているモニカがこう言うってことは簡単な問題じゃないっぽいな。
「何があったの?」
「はい。以前、リンゴ村への移住を希望する者の話をしましたことを覚えていらっしゃるでしょうか?」
確か、他所の開拓村の人が自分のところを捨てて、こっちに移住したいと言ってたことだろう。
「覚えているよ。断ったんでしょ?」
俺達の村によそ者を入れるのは難しいということで俺、モニカ、ダリルさんが反対し、そうなったはずだ。
「はい。こちらはそのような余裕はなく、受け入れるのは無理だと正式に伝えました。ですが、そうは思わなかったのでしょう。現在、リンゴ村の門の前に数十人の男達が鎮座しております」
は?
「え? どういうこと?」
「受け入れてほしいと申しており、道を塞いでいる状況です。今月はすでにリンゴを納品しておりますし、食料などの備蓄は十分にあるため、そこは問題ないのですが、いつまでもあそこにいられては困ります。それに中には武器を持っている者もいるとか……」
武器って……
あ、いや、魔物がいる世界だし、護衛用に持っているのかもしれない。
しかし、そんな奴らが道を塞ぎ、門の前にいるのは問題だろう。
「なるほどねー。どうするべき?」
「まずは話をするべきかと……一度、コーディーさんが話をしたようですけど、村長に会わせてほしいの一点張りだったそうです」
村長……俺か。
「放っておくわけには?」
「正直に申します。オベール商会のエリク様に聞いたのですが、他の開拓村は上手くいっていないようです。そんな中でこのようなことをしてくる者は何をするかわかりません。ましてや今は冬。外で長い時間を待つのは厳しいでしょう」
武器を持っているっていう話だし、強硬手段を選択してきそうだな……
「ハァ……まあ、それも考えて門を設置し、結界を厳重にしたんだけどさ」
「はい。やっておいて正解でした」
「仕方がない。説得はしてみるよ。モニカ、クロード様のところに使者として行ってくれるかい?」
「私では突破が難しいです」
道を塞いでいるのだからモニカじゃなくても難しいだろう。
「わかってるよ。ミリアム、お願い」
「了解にゃ」
ミリアムが頷いた。
「モニカ、クロード様に事情を説明してみて」
「わかりました。ミリアムさん、お願いします」
「わかったにゃ」
ミリアムはキョウカの膝から降りると、ジャンプをし、モニカの腕の中に納まる。
すると、転移の魔法を使い、消えてしまった。
「じゃあ、俺はリンゴ村に行ってくるよ」
そう言って立ち上がると、くっついていたキョウカも立ち上がる。
「ん?」
「一緒に行きます。護衛は任せてください」
えー……
「危ないから皆は待っててよ」
「え?」
「ん?」
声がしたので見てみると、ルリとユウセイ君も立ち上がっていた。
「もしかして、君らも行く気なの?」
「当然です」
「戦闘だろ? 任せておけって」
なんでそんなに前のめりなんだろう?
ホムンクルスのルリは置いておくとしても、キョウカもユウセイ君も好戦的やすぎないか。
「危ないよ?」
「悪魔よりも弱いぞ」
「そうですよー。任せておいてください。私、得意なんですよ」
何が!?
「うーん……まあ、争いになると決まったわけじゃないか」
「そうですよー」
キョウカはそう言いつつ、空間魔法を使って刀を取り出した。
「やる気満々じゃん」
「どう聞いても強硬手段に出るとしか思えない」
キョウカが人斬りキョウカちゃんに変わっている。
「そうならないように話をしにいくんだよ」
「では、行こうか」
キョウカは頷くと、俺の腕を取り、身を寄せてきた。
「近くない?」
「奥様ですから」
そういやあっちの世界ではそうだったね。
「ルリもユウセイ君もいい?」
「大丈夫です。私の魔法で対処しましょう」
「久しぶりに身体を動かせるなー」
この子達もやる気満々……
俺がおかしいんだろうかと思い、首を傾げながらも準備をし、リンゴ村に向かうことにした。
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