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35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~  作者: 出雲大吉
第3章

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第117話 私は悪くないにゃ!


 クリスマスの翌日の月曜日は前日と打って変わって静かな日だった。

 この日はユウセイ君もキョウカも家に来ず、ルリとミリアムの3人で魔法の勉強をしながら過ごし、夜に来たモニカと共に夕食を食べて終わった。


 そして、翌日の火曜日。

 この日はミリアムと一緒に釣りに行く日であり、俺自身もかなり久しぶりだったので楽しみな日だ。


「山田、この魚、平べったくて食べにくいにゃ」


 ミリアムが堤防の上でカレイを咥えながら文句を言う。


「まあ、カレイはねー……」


 しかし、午前中で釣った3匹を全部食ってるぞ……

 こりゃ、魚を買いに行くで決定だな。


「久しぶりに来たけど、落ちつくなー……風もないし」


 冬の堤防の上なんかは風がびゅーびゅーだが、風除けという魔法があるのだ。

 俺も魔法使いが板についてきたと思う。


「全然、釣れないにゃ。もっと釣るにゃ」


 もう食い終わったのか……


「これでも釣果は良い方だよ?」

「マジか……あっちの世界でも釣る人間はいるが、バンバン釣ってたぞ。昔、人懐っこい猫のフリをして、もらったことがある」


 悪猫だなー。


「異世界で釣るのも良いかもなー。夜にでもモニカに聞いてみるか」

「良いんじゃないか? 心配だから私もついていってやるにゃ」

「どうも……」


 まあ、心配なのは嘘じゃないだろう。

 それ以上の目的があるだけで……


「山田。お前、キョウカはどうするんだ?」

「皆、聞いてくるね」


 ほぼ全員だ。


「いやー、今だからこそ言うが、キョウカはだいぶ前からお前のことが好きだったぞ」

「知ってる」

「そうだにゃ。気付かないようにしてただけだもんにゃ」


 そういうわけではない。


「そうだろうなー、いやでも、そんなはずは……きっと違うだろうっていう思考の変化?」

「ネガティブにゃ。いや、心配性を通り越して予防線を張っていただけにゃ」


 はっきり言うな。


「だってあり得ないんだもん。35年間も女性と縁がなかった俺があんなかわいい子に好かれるわけがない」

「出会いがなかっただけにゃ。出会いさえあれば、そういうこともあるにゃ。モニカもそうにゃ」


 まあ、そうかもね。

 そうだと嬉しいよ。


「ハァ……」

「何を悩むにゃ?」

「色々。キョウカのことは好きだよ。ちょっと怖い時があるけど、それ以外に不満はないし、良いところをいっぱい持っている子だ」


 短所もある子だけど、長所がそれを大きく上回る。


「気にしているのは年齢か? それともモニカか?」

「両方」

「アドバイスが欲しいにゃ?」

「ぜひとも。上級猫さんの意見が欲しい」


 もういっそ、あの愛を司る悪魔ロザリーでもいいわ。

 詳しそうだもん。


「じゃあ、年齢な。隠せ。それでいい。そのための認識阻害の魔法にゃ」

「どうも。俺の倫理観は?」

「捨てろ。お前、キョウカに4年くらい待ってって言う気か? 35歳の癖に」


 40歳目前かー。

 マジでおっさんだな。


「モニカは?」

「そこは本当に考えなくてもいい。キョウカとモニカが話をつけているにゃ」

「そうなの?」

「教えてやるが、夜、お前が風呂に入っている間にしょっちゅうモニカとキョウカは電話で話をしているにゃ」


 電話……


「ルリのスマホ?」

「いや、家電」


 マジかよ。


「ハァ……」

「贅沢なため息にゃ」


 ホントだよ。

 1年前の俺に殴られそうだ。


「キョウカはどれくらい待ってくれるだろうか?」

「さあ? そこまでは知らないにゃ。でも、早い方がいいにゃ。感情を読み取ることができる私からしたら答えは出ているにゃ」


 そういや、そんな能力もあったね。


 俺は手に引きが来たのでリールを巻いて、上げてみる。

 すると、またしてもカレイが釣れた。


「よくやったにゃ! 寄こすにゃ!」

「はい」


 俺は釣ったカレイをミリアムにあげる。


「食べにくいが、美味いにゃ」

「良かったねー」


 食いしん坊な猫さんだわ。


「山田の目的はスローライフなんだろ?」

「ん? まあ、そうだね」

「いいじゃないか。家とリンゴ村を行き来して、たまに釣りに行く。家に帰ったら女が待っていて、ルリと猫もいる。これ以上何を望む?」


 欲しいものが全部、揃っているね。


「ありがとうね。参考になったよ」

「頑張るにゃ。お前にはこの上級悪魔のミリアムがついてるにゃ」


 心強いねー。

 不穏な気配を察するとすぐにコタツの中に逃げようとする素晴らしい上級さんだ。


 俺はその後も釣りをし、釣果も良かったのだが、全部、ミリアムに食べられたので魚を買って家に帰った。

 家に着き、車の中を消臭の魔法を使い、魚臭さを消すと、家に入る。


「ただいまー」


 リビングに行くと、ルリとモニカと共にキョウカとユウセイ君もいた。


「おかえりなさい。どうでした?」


 ルリがコタツから出てきて聞いてくる。


「いっぱい釣れたよ」

「美味しかったにゃ」

「え?」


 ルリがミリアムを見る。


「カレイが結構釣れたんだけどね。釣った先からミリアムが全部食べた。そういうわけで買ってきたよ」

「あ、そうですか」

「美味しかったにゃー。釣れたては新鮮で最高にゃ」


 反省ゼロ。

 いや、これは悪いとも思ってないな……


「じゃあ、ミリアムは晩御飯いらないね」


 ルリがにっこりと笑いながら言う。


「なんで!? ひどいにゃ! 動物虐待にゃ!」


 いやー、どうだろう?


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 可愛い女の子と猫に癒されたい。 俺のところにも上級と言わず猫さん来ないかなー。
[良い点] ルリもミリアムも可愛い なんて感想はいくらでもありそうだけど、可愛いは絶対! 近所の黒猫も懐いてくれないかなぁ…
[一言] 更新ありがとうございます!
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