第115話 クリスマスパーティー
ユウセイ君とキョウカを連れて家に戻ると、ルリとキョウカがメモを見ながら相談を始めた。
ユウセイ君はコタツに入り、スマホで動画を見始め、モニカはパソコンの前で調べ物をしている。
「スーパーで買える?」
「大丈夫だと思います。あらかじめ、ある程度は用意していますし」
「じゃあ、大丈夫か……行く?」
「はい」
2人の会話を聞いていると、どうやら買い物に出かけるようだ。
「車出すよ」
「いえ、大丈夫です。近所のスーパーですし、そこまでのものは買いませんから。タツヤさんはすみませんが、ケーキを受け取りに行ってもらえないでしょうか」
あ、ケーキがあったか。
ルリが楽しみにしているチョコレートケーキだ。
「わかった。取りに行ってくるよ」
「お願いします」
ルリが嬉しそうに頷くと、コタツから出た。
「あ、ルリ、待って」
「どうしました? 何か買ってくるものでもあります?」
「こっちにおいで」
俺はルリを呼ぶとコタツから出て、膝立ちする。
すると、ルリが俺の正面に立った。
「何です?」
「はい、ルリ。クリスマスプレゼントだよ」
空間魔法から赤い包装紙に包まれたマフラーを渡す。
「え? あ、ありがとうございます……」
遠慮がちなルリは礼を言うとおずおずと受け取った。
「良かったねー。開けたら?」
キョウカがルリの横に腰を下ろして肩に手を置く。
すると、ルリが包装紙を剥ぎ、中からマフラーを取り出した。
「わぁ……マフラーですか?」
「外は寒いでしょ。巻いていくといいよ。ほら、貸して」
ルリからマフラーを受け取ると、ルリの首に巻いてあげる。
「ふふっ……暖かいです」
ルリが目を細め、嬉しそうに笑った。
非常に可愛い。
「暖かくなったし、行こうか」
「はい」
ルリとキョウカは嬉しそうにリビングを出ていくと、買い物に向かった。
「じゃあ、俺もケーキを受け取りに行ってくるわ。留守番よろしくね」
ミリアムの姿が見えないのでユウセイ君とモニカにお願いする。
「わかった」
「お任せください」
2人に留守番を任せると、俺も家を出て、再び、車に乗り込んだ。
そして、車を出発させ、ルリがプレゼントを喜んでくれたことに嬉しくなりながら予約していたケーキ屋に向かう。
「うわ……すごいな」
ケーキ屋に着くと、大勢の人が並んでおり、店内では店員さんが忙しなく動いていた。
それを見ながら大丈夫かなーと心配しつつ、なんとか車を停めると、店を見る。
すると、予約用のコーナーがあったため、あっさりケーキを受け取ることができた。
ケーキを受け取ると、車に戻り、家に帰る。
「予約しておいて良かったわ……」
スムーズにケーキを受け取れて良かったなと思いながら車を運転し、家に帰った。
車を停め、家に入り、リビングに戻ると、すでにルリとキョウカが帰ってきており、キッチンで作業をしていた。
「ルリー、ケーキだよー」
「おかえりなさい。ありがとうございます」
キッチンに行き、ルリに声をかけると、手を伸ばしてきたのでケーキを渡す。
ルリは嬉しそうにケーキを受け取り、冷蔵庫に入れた。
「じゃあ、頑張ってね」
「はい。待っててください」
「待っててくださいねー」
2人にそう言われたのでコタツに行き、爺さんの魔法の本を読みながら待つことにした。
そのまま時間を潰していると、昼になり、ルリが軽い昼食を作ってくれたので皆で食べる。
そして、午後も本を読みながら待っていると、夕方になり、準備が完了したのでちょっと早い時間だが、クリスマスパーティーをすることにした。
「すごいね」
コタツ机の上にはユウセイ君が要望したローストビーフを始め、様々な料理が並んでおり、色とりどりでかなり豪華だ。
「頑張りました。お姉ちゃんもすごかったです。本当に切るのが上手でした」
「でしょー。得意なんだー」
包丁だよね?
刃物なら何でも使えるのか……
「どうでもいいから食べようぜ。昼を軽くしたから腹減ったわ」
「そうだね。食べようか」
ユウセイ君が急かしてきたので皆で乾杯をし、料理を食べ始めた。
「美味いなー。めっちゃ美味い」
ユウセイ君はスピードを緩めることなく、料理を食べ続けている。
「本当に美味しいです。ルリさんもですけど、キョウカさんもお上手なんですね」
モニカはマイペースに少しずつ食べていた。
とはいえ、美味しそうだ。
「美味いにゃー」
ミリアムも食事の時だけはコタツから出てきて、がつがつと食べている。
「うん。上手だね。というか、俺、パエリアなんて家で見たのは初めてだよ」
昔、どっかの店で食べた時以来だ。
「クリスマスなんで頑張りました。楽しかったです」
「ねー? またお姉ちゃんと料理しようね」
「あ、はい」
俺達はその後も会話に花を咲かせながら料理に舌鼓を打っていく。
絶対に余るかと思われた量の料理だったが、誰かさんが平らげたのであれだけあった料理がものの見事になくなった。
「あー、食べた……」
誰かさんこと、ユウセイ君は満足げだ。
「よくそんなに食べるね。この前の焼肉以上じゃん」
あの時も焼肉をめちゃくちゃ食い、さらにはビビンバと冷麺まで食べていて、すげーと思ったが、今日はそれ以上だ。
ローストビーフなんて一人で半分以上は食べていたと思う。
「色々あったからな。それにこういうのって家だと絶対に出ないから珍しくて。すげー美味かったわ」
「あ、ありがとうございます……」
ルリがお礼を言うが、少し引いていた。
「ルリちゃん、ケーキ食べよっか」
「食べます」
キョウカが提案すると、ルリが即答した。
「ユウセイ君はどうするの?」
一応、確認してみる。
「せっかくだし、食べる。ウチだと、基本、妹に取られるし」
マジか……
「持ってきます」
「あ、手伝うよ」
ルリとキョウカは空いた皿を片付けると、すぐに箱に入ったケーキと人数分の皿とフォークを持ってきた。
「開けます」
ルリは机に置いた箱を嬉しそうに開ける。
すると、中からチョコレートの色をしたクリスマス仕様のホールケーキが出てきた。
「おー、すごいね。久しぶりに見たわ」
いつ以来だろう?
「私は初めてですね」
モニカはそうだろうな。
「私もです……」
ルリが口角を緩めながらケーキをじーっと見ている。
「良かったね。お姉ちゃんが切り分けてあげるよ」
「お願いします」
キョウカはナイフを使ってきれいに切り分けていく。
「本当に切るのが上手だね……」
見事に均等だ。
それに心なしか切った断面もきれいに見える。
「斬るのが得意なんです」
そ、そう……?
今、ちょっと不穏な気配がしたけど……
キョウカはきれいに切り分けると、皿に乗せ、皆に配っていった。
「美味しそうです」
「そうだね。ほら、食べよう」
「はい。いただきます」
ルリが嬉しそうに食べ始めたので俺達も食べる。
正直、昨日の今日でさっきまで色々なものを食べていたのでちょっときつい。
でも、ケーキはチョコの味が前面に出てきており、美味しい。
「美味しいです」
「良かったね」
俺達はケーキを食べ始めると、あっという間に食べ終え、一息つく。
「あー、さすがにもう入らないわ」
さすがのユウセイ君でも無理らしい。
「ホントだねー。明日から走らなくちゃ」
キョウカも結構食べていたしな。
俺達はその後も話をしていたが、時刻が8時を回ったところでユウセイ君とキョウカを家に送ることにした。
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