第110話 買い物
「人が多いね」
そこら中に人がいる。
「この時期は仕方がないですよ。来週、クリスマスですよ?」
まあね。
おもちゃ屋を見る子供達など、皆、笑顔だ。
「俺もルリのためのプレゼントを買うか……」
「ですね。決めました?」
キョウカが聞いてくる。
「うん。キョウカがリサーチしてくれたおかげで助かったよ」
キョウカはルリとメッセージのやり取りをしており、その際に探ってもらったのだ。
「難しかったですけどね。ルリちゃん、欲しいものがないって言うんですもん」
「あまり欲を出さない子だからね」
あと寒がりということもあるが、外に出たがらない。
「結局、どうしたんです?」
「マフラー。ルリ、寒がりだし、ちょうどいいかと思って」
「なるほどー。良いと思いますよ」
「それでさ、選ぶのを手伝ってよ。俺、一人っ子だし、女物とかわからないんだよね」
彼女もいないし……
「良いですよー。じゃあ、行きましょうか」
俺達はその後、店内を見て回り、キョウカに意見を聞きながらルリに渡すマフラーを選んでいく。
「これは?」
「かっこいいとは思いますけど、ルリちゃんの年齢を考えましょう」
「じゃあ、これは?」
「かわいいとは思いますけど、ルリちゃんは大人っぽいのでダメです」
どうしろと?
中間かな?
「これ?」
「それ系です。さあ、選んでください」
「キョウカが選んでよ」
「ダメです。タツヤさんが選ぶんですよ。女性への贈り物は絶対に自分で選ぶんです」
そっかー……
俺は苦戦をしながらもルリに似合いそうなマフラーを選んでいく。
「これかなー? 落ち着いている子だし、このくらいの色合いが良いと思うな」
「良いと思います」
合格点はもらえたようだ。
「じゃあ、買ってくる」
レジに行くと、プレゼント用と伝え、クリスマス仕様の包装紙に包んでもらった。
そして、購入したマフラーを持って、キョウカの所に戻る。
「いやー、ありがとうね」
「いえいえ。私も付き合ってもらえます?」
「んー? 何か買うの?」
出そうか?
「私もルリちゃんにプレゼントしようかと思いまして……まあ、一応、ユウセイ君と共同ということで」
「あ、そうなんだ。悪いね」
「いえいえ。たいしたものは渡せませんけど、気持ちです」
学生さんだもんな。
「俺が出すよ?」
「それじゃあ意味ないじゃないですか」
まあねー。
「何を買うの?」
「チョコ菓子です。ルリちゃん、チョコレートが好きですから」
好きだねー。
おやつの時間になると、必ず、チョコ菓子が出てくる。
「良いと思うよ」
「はい。行きましょう」
俺達は店を出ると、お菓子が売っている店に行き、ルリが好きそうなお菓子を選んでいった。
そして、キョウカが良い感じのお菓子を買うと、戻ってくる。
「ありがとうございました。これを来週に渡そうと思います」
「うん。こっちこそ、ルリを気にしてもらってありがとうね」
「当然です」
「いい時間だし、昼ご飯でも食べに行こうか」
時刻は12時前だ。
「そうしましょう」
俺達はレストランに行くと、かなり混んでいたが、並んで順番を待つ。
そして、数十分したら店に入れたので席についた。
「土日に来たのは久しぶりだったけど、やっぱり人が多いね」
以前、ルリと来たが、平日だったので少なかった。
だが、今日はクリスマス前の土曜日ということもあり、すごい人だ。
「ですよねー。でも、逆に目立たなくて良かったでしょ」
まあね……
これが平日なら私服警官とかに声をかけられていたかもしれない。
「実は認識阻害とか認識誘導の魔法があるんだけどね」
「何ですか、それ?」
「ルリが使っているやつ。それを使うと多少、気になることがあっても気に留められなくなる。これがあるからルリは平日の昼間に1人でスーパーに行って、買い物ができるんだよ」
ルリが補導されたら非常に困ることになるから必須の魔法だ。
「へー……」
キョウカが目を細めた。
「どうしたの?」
「いえいえ。何も……」
キョウカはニッコリと笑って、首を横に振る。
「そう? そういえば、ユウセイ君は? ルリのプレゼントを共同で渡すなら来れば良かったのに」
「ユウセイ君は家の用事があるそうですよ。ウチもなんですけど、年末年始は親戚回りや挨拶なんかあって、バタバタするんです。それの準備があるんですよ」
歴史のある名家って言ってたもんなー。
なんかすごそう。
「キョウカはいいの?」
「数年前から戦力外通告を受けています。年始も実家に挨拶に行くんですけど、お年玉をもらったら帰ります」
あ、そう……
「何かあったの?」
「何もないですよ」
キョウカが再び、ニッコリと笑った。
多分、何かあったのだろう。
刀でも抜いたか?
「そっか。それと来週のことなんだけど……」
「24日はケーキバイキングです。そして、25日はパーティーです」
そういうことになっている。
25日は朝からウチに来て、ルリと料理の準備をするらしい。
なお、モニカは足手まといにしかならないので大人しく待ってますって言っていた。
料理ができないわけではないようだが、非常にゆっくりらしい。
のろまでごめんなさいって頭を下げていた。
「24日は昼から迎えに行くし、25日も朝から迎えに行くよ。ルリが買い物に行こうってさ」
買い物の時も車を出すか。
ルリ、寒がりだし。
「いいんですか? 24日は出かけるとしても25日はそちらの家に伺いますし、勝手に行きますけど」
「寒いでしょ。それに運転したいんだよ」
やっぱりマイカーは嬉しい。
初めてのマイカーだし。
「えへへ。タツヤさんは優しいなー。私、タツヤさんのそういうところが好きですよ」
「ありがとう。ちなみに、嫌いなところは?」
「気にしすぎなところですね。だーれも気にしてないようなところを気にしています」
やっぱり俺が変なのだろうか?
会社勤めの10年間で心配性になりすぎたのかもしれない。
「そうかなー?」
「そうですよ」
「そっか……あ、午後からどうする? 他に何か見たいものでもある? せっかく来たわけだし」
「服が見たいです。付き合ってください」
大丈夫か?
あ、いや、これが気にしすぎなんだ。
別に同僚と買い物に行くのは普通だろう。
「そうしよっか」
「はい。あ、来ましたよ。食べましょう」
俺達は昼食を食べ、午後からショッピングモールの店を見て回った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!