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第011話 ミリアム「山田ぁ……」


 月曜から事件が起きた俺だったが、その日以降も真面目に働き、夜も魔法の特訓をした。

 そして、土曜日になると、午前中に掃除をしようと思っていたのだが、ルリがすでに掃除をしており、桐ヶ谷さんを迎えるだけとなっていた。


 俺は昼食を食べると、一応、スーツを着て、桐ヶ谷さんが来るのを待つことにする。

 すると、チャイムが鳴ったので玄関を開けると、スーツを着た桐ヶ谷さんが立っていた。


「こんにちは。どうぞ」

「お邪魔します」


 桐ヶ谷さんを家に入れると、リビングに招く。


「先に線香を上げさせてもらっても?」

「ええ。どうぞ」


 俺は桐ヶ谷さんをリビングの隣にある自室に連れていく。

 部屋に入った桐ヶ谷さんは線香を上げ、手を合わせた。


「ありがとうございます」

「いえ……お知らせするのが遅くなって申し訳ありません」


 俺達は部屋を出ると、リビングに戻る。

 そして、コタツ机の前に腰かけた。


「どうぞ」


 ルリがお茶を持ってきてくれて俺と桐ヶ谷さんの前に置く。


「ありがとう」

「ルリ、部屋に戻っていなさい」

「はーい」


 ルリは子供みたいな声で部屋に戻っていった。

 これは前日にそう決めていたことだ。


「おや? 猫がいるんですか?」


 桐ヶ谷さんが部屋の隅にある住まいとなっている段ボールをカリカリするミリアムを見る。


「ええ。あそこを気に入ってしまいまして」


 嘘ではない。

 ミリアムは本当にあの段ボールを気に入っている。


「そうですか。良い暮らしをしていますね」

「以前はボロアパートでしたけどね。爺さん様様です。それで話とは? 実はあれからタイマー協会というの調べてみたのですが、まったくわかりませんでした」


 調べたのはルリだけど。


「そうでしょうね……お爺様からは何か?」

「いえ、聞いておりません」

「なるほど……山田さん、あなたは悪魔というものを信じますか?」


 本当に悪魔というワードが出てきたし……


「信じると言われても……」

「でしょうね。ですが、悪魔はいます。この前のトイレにいた男は悪魔に憑りつかれた男です」


 あ、あの男自体が悪魔だったわけじゃないのか。


「なんだかエクソシストみたいですね」


 そういうのをテレビで見たことがある。


「ははっ、そうですね。本当にそうです。実は私はそのエクソシストです。そして、タイマー協会というのはそういう者達の集まりなのですよ。まあ、エクソシストではなく、退魔師と呼んでいますが……」


 退魔師……タイマー協会……

 え?


「あ、あの……」

「皆まで言わなくて大丈夫です。皆さん、最初はそのような反応をします。私もしました。気付かれたでしょうが、タイマーとは退魔のことです。文句や苦情は最初にこの協会を立ち上げた今は亡き初代会長の墓前で言ってください」


 あ、文句や苦情が多いんだ。

 そして、桐ヶ谷さんも納得してないっぽい。


「そうですか……」

「あまり驚かないんですね?」


 事前に決めていたことがもう一つある。

 魔力を隠すなということ。

 多分、もう勘付かれているからだ。


「この前の男は異常な力でした。それに私にも身に覚えがあります」

「続けてください」

「実はここ最近、妙な力に目覚めました…………笑わないでくださいよ?」

「笑いません。気持ちは痛いほどにわかります」


 この人も誰かに話す時に今の俺と同じ気持ちだったんだろう。

 厨二っぽくて恥ずかしいもん……

 これが10代ならまだしも30代はちょっとね……


「身体の中に何かを感じ、それを集中させると能力が上がったんです」

「なるほど、なるほど。それを使って、この前の異常な力を持っていた男を撃退したわけですね?」

「はい」

「素晴らしい。大変素晴らしい。単独で悪魔を撃破できる特別な力をお持ちだ」


 営業だなー……

 俺が高校生なら有頂天になるが、こちとら35歳の係長だ。


「ありがとうございます」

「おや? 嬉しくない?」

「お互い、いい歳をしたおじさんですよ?」

「それもそうですね……」


 なんか暗くなった。


「つまりタイマー協会とはそういう退魔師の集まりで悪魔を倒していっているという認識でいいですか?」

「そうなります。そして、本日、訪ねさせてもらった理由は線香を上げさせてもらったことの他に山田さんの勧誘です。ヘッドハンティングです」


 ヘ、ヘッドハンティング……!

 サラリーマンの俺には特別な力よりも何倍も良い響き!


「し、しかし……私なんかが……」


 チラッ。


「いえ、能力のある者はそれに相応しいところで働くべきです。はっきり言いますが、あなたの今の仕事は別の者でもできるでしょう。ですが、この仕事はあなたしかできないのです」


 や、やっぱり!


「あの、実際、どれくらいの人が働いているんですか?」

「タイマー協会は日本中に支部があります。ですが、全体で1000人もいません」


 1000人……多いとも思えるが、人口が1億を超えているこの国でそれだけしかいないのだ。


「なるほど……ちなみにですが、もしかして、祖父も?」

「はい。所属しておりました。大変優秀な退魔師でしたね。私も色々と学ばせてもらいました」


 大魔導士さんらしいからなー。


「やはりですか……」

「どうでしょう? 山田さんもその力を活用してみませんか?」

「うーん……そうですねー……」


 チラッ。


「では、具体的な仕事の説明を致しましょう」

「お聞きします」


 キリッ。


「まずですが、我々は国の機関になります」


 あ、そうなんだ。

 いや、警察とも繋がりがあるって言ってたし、そりゃそうか。


「公務員ですか?」

「具体的には違いますが、そう思っていただいて結構です。仕事は悪魔の退治。目撃情報等の連絡が来ますので基本はそれで動いてください」


 まあ、どこに悪魔がいるかなんて普通はわからないしな。

 ウチには優秀な猫ちゃんがいるけど。


「わかりました」

「それで給料の話なんですが……」


 待ってました!


お読みいただきありがとうございます。

本日、ローファンタジー部門の日間1位になれました。

皆様の応援のおかげです。


そういうわけでお祝いに今日は21時頃にもう1話投稿します。

引き続きよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
呪術も扱うんだろーなー・・・大麻師か
[一言] ヘッドハンティング羨ましいなあ…… こちとらある意味自然淘汰されてるというのに(
[良い点] ヘ、ヘッドハンティング! されたい! いやされたくないなあ [一言] ローファン一位おめでとうございます 筆は早いしどの作品もヒットするしすごいなー チラッ
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