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第109話 お出かけ


 マリエル様と会合を終え、一段落ついた俺達はいつもの日常に戻った。

 昼間は家にいるか、村の様子を見に行く。

 夜は家にいるか、退魔師の仕事をする。


 基本、家にいるのは寒いからである。

 12月も中旬になると昼間でもかなり冷えてくる。

 それはあっちの世界も同様であるようで村に行っても外に出ている人がほぼいない。


「寒いですねー」


 寒がりなルリは今日もコタツで暖まりながらテレビを見ていた。


「ルリ、今日はキョウカと出かけてくるからお昼はミリアムと適当に食べて」


 今日は土曜日であり、キョウカとおでかけである。

 ルリへのクリスマスプレゼントを買いに行くのだ。


「わかりました。夜はお鍋にしようと思っています」


 この時期の鍋はいいね。


「わかった」

「あ、あと、お姉ちゃんに日曜に買い物に行きましょうって言っておいて下さい」


 パーティーの食材か。


「伝えとく。ルリさ、お姉ちゃんのこと好き?」

「嫌いではないですけど、感情の起伏がすごすぎてついていけない時があります」


 それは俺もそう。

 数学で57点を取って大喜びのメッセージが届いた時もそう思った。


「まあねー……」

「幸せな人だなーって思います……」

「良いことじゃないか。一緒にいて楽しいでしょ」

「まあ、そうですかねー? 賑やかではあります」


 ルリが首を傾げながらも頷く。


「山田、そろそろ出かけた方が良いんじゃないか? 迎えに行くんだろ?」


 ミリアムがコタツから顔を出してそう言ってきたので時計を見ると、9時半だった。

 約束は10時にキョウカの家の前だからそろそろ出て、待っておいた方が良いだろう。


「じゃあ、行ってくるよ」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃいにゃ」


 俺は2人に見送られ、家を出ると、車に乗り込み、キョウカの家に向かう。

 そして、指定されたマンションの駐車場に到着すると、キョウカにメッセージを送り、車内で待つことにした。


 山 田 :着いたけど、ゆっくりでいいからね

 キョウカ:すぐに行きまーす


 メッセージを送ると、すぐに既読が付き、返信が来る。

 すると、マンションからキョウカが出てきた。


 あれ?

 まだ10時になっていないんだが、早いな。


 そのまま車の中で待っていると、キョウカが助手席に乗り込んでくる。


「おはようございまーす。早いですねー」


 キョウカが笑顔で聞いてきた。


「待たせたら悪いと思ってね。キョウカも準備できてたの?」

「はい。楽しみだったので」


 それは良かった。

 付き合わせて悪いなーって思ってたから。


「親御さんに挨拶した方が良いかな?」

「今さらでは? 別にいいですけど、うるせーのもいますよ」


 うるせーの……


「弟君?」

「それと兄ですね。うざいです」


 兄弟姉妹の関係はわからないなー。


「じゃあ、別にいいか」


 電話もしているし、協会が説明しているから大丈夫だろう。


 俺は車を発進させると、目的地であるショッピングモールを目指して出発した。


「キョウカ、テストはどうだったの? 数学の点数は聞いたけど」


 移動中の車中で気になっていたことを聞く。


「良かったですよ。一番苦手な数学すら57点でしたし。他も60点を超えています。お母さんがこれからテスト前はタツヤさんのところに行けって泣いて喜んでました」


 相当だったんだろうなー……


「お父さんは何て?」

「何も言ってませんね。ただ目をこすって返却されたテストを何度も見てました」


 そ、相当だったんだろうなー……


「まあ、良かったね」

「はい。ありがとうございました。ミリアムちゃんにも教えてもらいましたし、助かりました」

「ちなみに、ユウセイ君は?」

「聞いたら普通って言ってましたね。その時に80点超えが目に入りましたけど」


 ユウセイ君は相変わらずのようだ。

 でも、2人共、及第点で良かったわ。

 俺とチームを組んだら点数が下がりましたって思われると嫌だし。


「3学期も頑張ってね」

「ハァ……まだ1年以上もあるんですよねー。学校は嫌いじゃないですけど、テストは嫌です。数学なんて将来、絶対に使いませんよ」


 まあねー。

 俺もそう思ったし、実際、使っていない。


「勉強することが大事なんだよ」

「えー……そうですかー?」

「それが将来、財産になるんだよ」


 って、昔、高校の先生に言われたが、いまだに『そうか?』って思っている。

 特に大学受験の苦労は何だったんだと思っている。


「そうですかねー?」

「勉強はどうでもいいかもだけど、友達と遊ぶのも大事だよ。大人になると、都合が合わなくて中々ねー」


 30歳を超えたあたりから急に遊ぶ友達がいなくなった。

 というか、遊ぶというよりもほぼ飲みだったし。


「まあ、今が大事なのはわかりますよ」

「そうそう。会社勤めの時はいつも学生時代に戻りたいと思っていたよ」

「大変そうですもんねー。今はどうです?」

「そりゃ今の方が良いよ」


 ほぼ働いてないし、それなのにお金がじゃんじゃん入る。


「そうですかー……えへへ」


 またよくわからないタイミングで照れたな……

 最近はキョウカが変わっているだけなのか、俺が世代差や女性の心が理解できないだけなのかわからない。


 俺達がその後も他愛のない会話をしていると、目的地であるショッピングモールに到着したので駐車場に車を停め、店に入る。

 すると、多くの家族連れや若い人達が大勢おり、賑わっていた。


 なんか眩しいな……


 35歳独身の俺は場違いではと思ったが、隣にいるキョウカを見て、そうでもないかと思った。

 ただ、それと同時にキョウカと一緒にいて、大丈夫だろうかとも思ってしまった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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