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第105話 自由人


 クラリス様に案内され、屋敷の中に入った俺達は応接室に通され、お茶を飲む。


「しかし、山田さんだっけ? あんた、いくつよ?」


 クラリス様がお茶を飲みながら聞いてきた。


「35歳ですね」

「あれ? 思ったよりいってるわね? 若造が未知の果物で一発当てたのかと思ったけど」


 もしかして、俺って本当に若く見えるんだろうか?


「いくつに見えました?」

「20代後半?」


 マジか!


「ほらー、タツヤさんは若いですよー」


 キョウカがそう言うと、モニカがうんうんと頷く。


「そうだったのか……」

「それで奥さんはいくつよ?」


 クラリス様が今度はキョウカの年齢を聞いてきた。


「25歳です。趣味は花を愛でることです」


 趣味はいらんぞ。


「嘘くさ……どう見ても私より年下でしょ」

「クラリス様はおいくつなんですか?」

「モニカとは同級生よ。21歳ね」


 うーん、キョウカよりも年上に見えるなー。


「クラリス、奥様の年齢は少しデリケートなんです」


 モニカがキョウカとクラリス様の間に入ってきた。


「ハァ? なんで?」

「えーっと、本当は16歳なんですけど、タツヤ様が若いかなと思われているんです」

「35歳と16歳……まあ、確かに離れてるわね。でも、たいしたことなくない? 好きで結婚したんでしょ? 堂々としてなさいよ」


 堂々としたら警察のお世話になるんですよー……


「あの、つかぬことをお聞きしますが、16歳って子供では?」

「はい? 子供? これのどこが子供よ。十分に女の身体をしているじゃないの。モニカには劣るけどね…………」


 なんかクラリス様が落ち込みだした。

 何がとは聞かないし、言わないが、何となくわかった。

 しかし、異世界なだけあって、常識が随分と違うな。

 まあ、あっちの世界も昔はこんなものだったのかもしれない。


「クラリス様はご結婚は?」

「してたらこの家から出ていってるわよ。いっそあなたのところにでも嫁ごうかしら?」


 クラリス様がそう言うと、隣から魔力を感じた。


「モニカ、その子、魔法使い?」


 クラリスがキョウカを指差しながら聞く。


「はい……優秀な魔法使いです。それととても嫉妬深い御方なので冗談はやめてください」

「こわっ……たいした魔力を持っていない私でもなんか背筋がぞくっとしたわよ」


 クラリス様がドン引きしている。


「キョウカ、やめなって」

「何もしてませんよ。ちょっと漏れちゃっただけです」


 ユウセイ君はコントロールできてるけど、キョウカは感情に左右されるからなー……


「クラリス様、申し訳ありません。あまり外に出せるような妻ではないのです」


 最初の設定を引っ張ろう。

 実際、色んな意味であまり人前に出したくない。


「まあ、まだ若いんでしょうしねー。間違ってもマリエル様にそんなことしたらダメよ。紹介する私まで責任を負わないといけないんだから」

「わかっています。マリエル様の会合の流れはどんな感じですか?」

「えーっと、まず、マリエル様はあなたの村のリンゴを大変高く評価しているみたいよ。あ、私も食べたけど、美味しかったわ」


 クラリス様がそう言うので空間魔法から籠に入ったリンゴの山を取り出すと、テーブルに置く。


「どうぞ」

「え? いいの?」

「あなたのために持ってきました。マリエル様を紹介してくれる礼と思ってください」

「いやー、悪いわね。お母様がうるさいの。美味しいと評判なのに全然、入荷されないのよねー」


 王都でも相当、評判になっているみたいだな。


「いつでも言ってください。ご用意します」

「モニカ、あんたのご主人様はよくわかっているわね」


 元ビジネスマンだもん。


「元より、頼めば用意しますよ」

「……それを早く言いなさいよ。まあいいわ……話を続けるとね、マリエル様がリンゴを気に入ったという情報を掴んだから私がモニカを紹介したわけ。学校の時の友人がリンゴ村の重役を務めているから融通できますよって。それでお隣だからすぐにアポも取れて、この前、2人で会いに行ったわけ」


 それでこんなに早かったのか。


「どんな感じでした?」

「普通よ。マリエル様はできた御方だから特に変なことはないわ。単純にリンゴを融通しますよってだけね。まあ、モニカを勧誘してたけど」


 モニカはどこに行っても勧誘されるな。


「それで今度持ってきますって言ったわけですね?」


 モニカに言われて、さっきクラリス様に渡した籠をもう1つ持ってきている。


「そういうこと。その時に庇護でも頼みなさいよ。あ、言っておくけど、ウチは無理よ。というか、ウチよりあんたのところの領主の方が力が強いから意味ない」


 クロード様ね。


「いえ、このような協力をして頂いただけでありがたいです。これからもよしなに」

「あんた、本当に魔法使い? 商売人じゃない?」

「魔法使いですよ」

「ふーん……奥さんも優秀な魔法使いだし、さぞかし、優秀な魔法使いが生まれるんでしょうね」


 よくわからないけど、遺伝するのかな?

 あ、でも、ウチのじいさんは大魔導士様か。

 隔世遺伝かな?


「まあ、わかりましたよ。会合はまだですか?」

「まだね。早く行きすぎても失礼になるわ。まあ、そんなに気にしなくてもいいんだけどね。お隣さんだし……子供の頃はアポなしで行って、お菓子をねだったわー。あそこの家は男の子しかいないからよく可愛がってもらったもの」


 自由な人だな、この人……


「クラリス、まだ時間があるなら少し手伝ってくれないですか?」


 モニカがクラリス様にお願いする。


「手伝い? 何?」

「ちょっと商品のアピールです。お風呂に行きましょう?」


 モニカがそう言って立ち上がった。


「え? 今から? 私、朝に入ったんだけど?」

「行きましょう」

「何よー……」


 クラリス様はやれやれといった感じで立ち上がる。


「好きにしててもいいけど、人の家でいちゃつくのはやめてね」


 クラリス様はそう言い残し、モニカと共に部屋を出ていってしまった。


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