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第101話 何を買えばいいのかわからない


 キョウカが親に電話し、ルリが夕食の準備をしていると、ミリアムが王都にいるモニカを迎えにいった。

 すると、すぐにモニカを連れて、戻ってくる。


「ただいま、戻りました」

「おかえりー」

「あれ? キョウカさんもいるんですね。珍しい……」


 ミリアムを抱えたモニカがキョウカを見ながらコタツに入った。


「テスト勉強だってさ。家だと集中できないらしい」

「なるほど。大変ですね。私も魔法の試験の前日は吐きそうでしたよ」


 それとはちょっと違うかなー?


「キョウカ、覚えろ。歴史はすべて覚えろ」

「う、うん……」


 ミリアムがキョウカへのスパルタ教育を再開し始めた。


「モニカ、王都はどう?」

「はい。本日、整髪料を売る相手を決め、挨拶に伺いました」


 相変わらず、早いなー……


「誰?」

「ラヴェル侯爵夫人のマリエル様です」


 当たり前だけど、知らないなー。


「力がある人なの?」

「マリエル様は王妃様の昔からの親友で影響力がある御方です」


 めっちゃ大物じゃん。


「よく辿れたね」

「幸い、リンゴに興味を持っていたようですぐに食いついてきましたね」


 リンゴ様様だな。


「それでこれからどうするの?」

「まずはタツヤ様に挨拶をしてもらい、手土産に整髪料を渡しましょう」

「ん。わかった」


 そんな大物に会うのはしんどいが、やらないといけないだろう。


「それで少し、相談というか、キョウカさんにお願いがあるんですけど……」


 キョウカ?


「え? 私? 何ですか?」


 参考書とにらめっこしていたキョウカが顔を上げる。


「はい。マリエル様は貴族の婦人ですし、奥様にも同席してほしいのです」

「そういうマナーなんですか?」

「そういうわけではありませんが、やはり第一印象が違います」


 まあ、わからんでもない。


「別に構いませんけど、いつです? 私、学校がありますし、何よりもテスト期間中なんですけど」

「テストが終わった後の土日で構いません。そのように日程調整します」

「じゃあ、いいですよ」


 あっさり……

 キョウカはおばけが怖いだけで物怖じしないよなー。


「お手数をおかけしますが、お願いします」

「はーい……」


 キョウカは返事をすると、参考書に視線を落とした。


「服装とかは? 制服はマズくない?」

「そうですね。まずですけど、既婚者があの短いスカートはないです」


 というか、リンゴ村でもハリアーの町でも肌を出している女性を見たことがないな。


「私服もマズいよね?」

「服はこちらで用意しましょう。王都で部屋を借りていますのでそこで着替えてお屋敷に向かう感じですね」

「俺は? スーツでいい?」

「それは構いませんよ。向こうもタツヤ様が魔法使いであることは把握していますので。魔法使いは独特なんですよ」


 そうなんだ……


「モニカもついてくるよね?」

「そうなります。それと友人も同席しますので」


 貴族の子もいた方がいいのか。


「わかった。えーっと、来週の土日なら大丈夫かな?」

「承知しました。では、その辺りで日程調整いたします」

「うん、お願い」


 俺達はその後、ルリが作ってくれた夕食を食べた。

 その後もキョウカは真面目に勉強を続けていく。


「キョウカ、頑張るのはいいけど、根をつめすぎないようにね」

「こんなに集中できたのは初めてなんです。やっぱり見張ってもらうのは一番ですね。ミリアムちゃんが教えてくれますし」


 得意の暗示でどうにかならないんだろうか?

 怖いから言わないけど。


「明日も来る?」

「いいんですか?」

「うん。俺も明日も家で勉強しているだろうし」

「じゃあ、お邪魔させてください。最後の追い込みなんです」


 成績でお小遣いが決まるって言ってたし、死に物狂いだな。


「頑張って」


 キョウカはその後も勉強を続けていくと、時刻は9時を回った。


「キョウカ、今日はもうこの辺にしておくにゃ」

「わかった。ふえぇ……」


 どうやら勉強は終わったらしい。

 キョウカの口から魂が抜けているように見える。


「お疲れ様」

「お姉ちゃん、アイス食べます?」

「食べる」


 キョウカは勉強道具をしまうと、立ち上がり、俺の隣に腰かける。


「私がこんなに苦労してるのにユウセイ君は今頃、涼しい顔で勉強しているんだなって思うと殺意が芽生えますね」


 怖いことを言うな。

 多分、涼しい顔で勉強しているんだろうけど。


「ユウセイ君はなんでもそつなくこなすからね」


 要領がいいタイプなんだろう。

 ああいう子は会社でも出世する。


「はい、お姉ちゃん」


 ルリが冷蔵庫から取ってきたアイスをキョウカに渡した。


「ルリちゃん、ありがとう。クリスマスにお姉ちゃんとお料理しようね」

「はい。あの、大丈夫なんです?」

「大丈夫。切るのは得意だから」


 切る? 斬る?


「あ、はい……」


 ルリもちょっと引いている。


 キョウカが幸せそうにアイスを食べ終えたので送っていくことにし、家を出ると、車に乗り込み、出発した。


「おー、新車です! すごいですね」

「ホントねー。君らのおかげだよ」

「そんなことないですよー」

「いやー、2人がいると楽だし、楽しいよ」


 実際、そう。

 悪魔の待ち時間も長いし、暇な時間が多いから2人がいると賑やかで良い。


「そうですか? だったら良かったです」


 キョウカは嬉しそうだ。


「キョウカ、ちょっと相談があるんだけど、いい?」

「んー? 何ですか? 彼氏はいませんよ」


 知ってる。

 前に人斬りキョウカちゃんに睨まれたもん。


「クリスマスがあるじゃん? ルリのためにサンタさんになるべき?」

「あー、それですか。いや、普通にプレゼントを渡した方がいいですよ。ルリちゃんはサンタさんを信じるとかそういうのじゃないですし、普通にタツヤさんが渡した方が喜ぶと思います」


 そうかもなー。

 ワイドショーで不倫ニュースを見るような子だし。


「今度、出かける時に付き合ってくれない? あの子、欲しいものがあっても遠慮する子なんだよ」

「そんな感じですね。わかりました。リサーチしておきますので買いに行きましょう」

「お願い」


 というか、俺、この子やユウセイ君にも買うべきか?


「えへへ、クリスマスかー……」


 あ、買わないといけないやつだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] キョウカが気持ち悪い
[気になる点] どう考えてもモニカが妻のほうがいいですね。 異世界で妻が必要というのならその世界の人であり、その世界の常識を知り、それに合わせた立ち居振る舞いや知識などを適切に活用できる頭脳のあるモニ…
[一言] 進学考えないならミリアムについていって貰って答え聞けばいいのに、学歴だっていらないなら退学もありな気がする
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