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第010話 がーん


 桐ヶ谷さんが出ていき、戻ってくるのを待っていると、俺のカバンを持って戻ってきた。


「お待たせして申し訳ございません。これはお返しします」

「どうも」


 ビジネスバッグを受け取ると、自分とパイプ椅子の背の間に置く。


「それと失礼ですが、こちらは?」


 桐ヶ谷さんがそう聞きながら懐から茶封筒を取り出し、デスクに置く。


「んー? ああ、それですか」


 今朝、ポストに入っていたやつだ。


「宛先が山田タダシさんになっているんですが?」

「祖父ですね。実は先日、祖父が亡くなりましてね。今は私が祖父の家に住んでいるんですよ。それで今日の昼休みにでもそのタイマー協会さんに電話して、亡くなったことを伝えようかと思っていたのです。ちょっと昼に立て込んでしまったので無理でしたが、明日にでも電話しようかと思っています」


 昼はミリアムの昼食を忘れちゃったりして、バタバタしていたのだ。


「そうですか……タダシさんがお亡くなりに……」


 ん?


「ご存じなんですか?」

「そうですね……」


 桐ヶ谷さんは懐から名刺入れを取り出すと、俺の前に名刺を置いた。

 それを手に取り、名刺を見てみる。


 そこにはタイマー協会という名前と共に桐ヶ谷亘という名前が書いてあった。


「えーっと、タイマー協会の桐ヶ谷……」

「ワタルと読みます」


 へー……え!?


「あの、もしかして、こちらがタイマー協会ですか?」

「そうですね」


 いや! 警察じゃないじゃん!


「あのー、警察では?」

「似たようなものと言いました」


 言ったけども……

 これ、一気に状況が変わったぞ。

 警察じゃないなら誘拐じゃん。


「えーっと……」

「説明が非常に難しいですね。しかし、警察と似たようなものというのは合っています。実際、警察と連携して事に当たることもありますしね」


 意味がわからない……


「ハァ?」

「まあ、詳しく話すと長くなるのでそれは後日……それより、タダシさんがお亡くなりになられたのは本当でしょうか?」

「はい。もう90歳でしたし、老衰と聞いております」

「そうですか……ここ数ヶ月、連絡が取れないなとは思っていましたが……」


 知り合いなんだろうか?


「あの、祖父とは?」

「ああ……うーん、そうですね。山田さん、お時間は大丈夫でしょうか?」


 そう言われて、時計を見ると、すでに8時半だ。


「あー……すみません。明日も仕事がありますし、小さい子がいまして……」


 というか、お腹が空いた。

 煮魚を食べたい。


「そうですよね。よろしければ、後日、ゆっくり話をしませんか?」


 まだ話すのか……

 まあ、でも、爺さんが関わっているっぽいしな。


「ええ。大丈夫です」

「でしたら次の土曜日にでもお邪魔してもよろしいでしょうか? お線香を上げさせていだだけたら……」


 爺さんと婆さんの仏壇は俺の部屋にある。


「ええ。ぜひとも。祖父も喜ぶと思います」


 関係性を知らないけど。


「では、昼にでも伺いますので」

「場所は……わかりますよね」


 封筒を送っているわけだし。


「はい。それとすみませんが、これは預からせていただきます」


 桐ヶ谷さんはそう言うと、茶封筒を懐にしまった。


「ええ。それは祖父宛ですしね」

「すみません。本日は以上です。遅い時間にご協力頂き、ありがとうございました。ご自宅までお送りしましょう」

「いえ、電車で帰りますよ。桐ヶ谷さんも忙しいでしょうし」

「いえいえ。私もそのまま直帰するんで大丈夫ですよ」


 あっ、そう……


 俺とミリアムはここまで来た車に乗り、自宅まで送ってもらった。


「では、これで。本日はありがとうございました。それと土曜日によろしくお願いします」


 桐ヶ谷さんは運転席からそう言うと、車を走らせていった。

 俺はそれを見送ると、家に入る。


「ただいまー」


 そう言うと、奥からバタバタと駆けてくる音が聞こえてきた。


「おかえりなさい」


 頬を緩めたルリが出迎えてくれる。


「遅くなってごめんね。あー、疲れた。変なのに巻き込まれちゃったよ」

「ホントだにゃ」


 俺達はリビングに向かう。


「変なのですか? あ、すぐに準備をしますので手を洗って着替えてきてください」


 ルリにそう言われたので手を洗うと、部屋着に着替えた。

 そして、リビングに戻ると、夕食が用意されていたので座る。

 なお、ミリアムはすでに何かを食べていた。


 改めて料理を見てみると、今晩の夕食は白米に味噌汁、煮魚、ほうれん草の何かだ。


「ありがとうねー」

「いえ、何を飲まれますか? お茶とビールとストゼロがありますけど」


 少女の口からストゼロかー……

 違和感がすごい。


「お茶が良いな」

「はい!」


 お茶を頼むと、ルリは嬉しそうにお茶を準備しだす。

 そして、お茶を俺の前に置いてくれたので一口飲んで料理を食べだした。


「お茶もご飯も美味しいね」

「ありがとうございます。それで何があったんです?」


 ルリが聞いてくる。


「帰り道にミリアムが悪魔を見つけてねー。それで倒したんだけど、なんか変な人達に連行されちゃった」


 一番変だったのは女子高生。


「え? 大丈夫なんですか?」

「多分ね。その連行した人が爺さんの知り合いらしくてね。それで今度の土曜の昼に線香を上げにくるついでに話がしたいんだって」

「タダシ様のお知り合いですか……うーん、信用できる人だったんですか?」

「さあ? でも、こっちの住所を知られているわけだし、下手に拒否するのは良くないと判断した。とりあえず、話を聞いてみるよ」


 名刺を渡したから職場まで知られている。


「なるほど……念のため、この家に結界でも張っておきますか?」


 結界か。

 モニカさんが言っていたやつだな。


「やめておくにゃ」


 ご飯を食べ終わったであろうミリアムが俺の足に乗って、止めてくる。


「なんで? 悪魔がいるし、安心じゃない?」


 俺もそう思う。


「いや、あの橘とかいう娘や桐ヶ谷は魔法使いって言ったけど、さっきのビルは魔法使いの反応がいっぱいあったにゃ。多分、あそこは魔法使いの集まりにゃ」


 マジか……


「このタイマー協会ってそういうところなのかね?」


 コタツ机に置いておいた名刺を見てみる。


「貸してもらってもいいですか?」


 ルリがそう言うので名刺を渡した。


「うーん、特に魔力の残滓もないですね……えーっと」


 ルリはリビングの端にあるパソコンの前に行くと、電源を付け、何かを操作し始めた。


「どうしたの?」

「いえ、ネット検索を…………ヒットしませんね」


 今時、ネットに情報がない?


「警察と繋がりがあるみたいなことを言ってたにゃ」

「そういえば、似たようなものとも言ってたね」

「警察……その方達は悪魔のところにいたんですよね?」

「そうだね。トイレで悪魔を倒したんだけど、すぐに女子高生と桐ヶ谷さんがやってきた」


 本当にすぐだった。


「もしかして、そういう悪魔を取り締まる組織があるんじゃないですか? 悪魔を取り締まろうとしたらタツヤさんが先にいた。だから事情聴取です」


 ありえるなー。


「そんな組織、聞いたことないけど……」

「裏の組織ってやつでは?」


 なんかかっこいいな。


「表立って行動はできないんじゃないかにゃ? 悪魔は種によっては普通の人には見えないし」

「なるほど……そうなると、話って何だろう?」

「お前、目を付けられたにゃ。魔法使いによっては魔力を探知できる者もいる。お前、ちょっと魔力が漏れてるし、可能性はあるにゃ」


 魔力……


「ミリアムは?」

「私は上級悪魔にゃ。バレないにゃ」


 上級さんだったのか……

 確かにこの毛並みは上級……


「まあいいや。話を聞いてからにしよう。結界もいいや…………ご馳走様」


 食べ終わったので手を合わせる。


「お風呂を沸かしておきましたからお入りください。片付けはやっておきますので」

「悪いし、手伝うよ」


 至れり尽くせりすぎる。


「大丈夫です……明日も頑張ってください」


 ああ……色々あったけど、まだ月曜日かー……


お読み頂き、ありがとうございます。

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クズとかではないのに主人公の不快度かなり高いなこれ 読むのだいぶキツイわ
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