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幽霊視えないけど結界体質だし退屈なので霊能力者の助手になりました!  作者: 東山レオ
イケメン陽キャ、和光からの依頼
14/22

依頼料はお気持ちで

 結局橘はその日和光の家で泊まる事になった。もちろん最初橘は拒否したが和光が半泣きの顔で土下座までしてきたので昼飯と引き換えに渋々了承した。


 次の日、大学での講義が全て終わり橘は和光を連れて如月霊能事務所に連れて行き色々視てもらう事にする。


「わかったな? 俺がここでバイトしている事や幽霊関係のある事無い事を面白がって言ったりするなよ」

「安心しろ。オレはこう見えても口が堅いぞ」

 

 橘は変な噂が広まる事を恐れて、幽霊関係の一切を公言しない事を条件に、霊能力者を紹介することにし和光もそれを了承した。そして目的地に到着し玄関を開けると既に如月と千代の二人が待ち構えていた。


「あら。知らない反応だと思ったら橘じゃない……そっちは?」

「初めましてお嬢さん方。和光陽介って言うんで適当に呼んでよ」

「陽介様ですね。伊織様のご友人でしょうか、どうぞ中に入って下さい」

 

 千代はそう言って客間へと案内する。橘も久しぶりに客間に向かっていると如月が睨んでいることに気が付いた。


「お客さん呼ぶんなら連絡寄こしなさいよ」

「あっ悪い、忘れてた」

「全くもう……お茶の準備とか色々あるんだから」

 

 ブツブツと文句を言う如月を見て、先日の古河と同じミスをしたことに気が付く。もしかしたら気の利かない似た者同士なのかもしれないと思って橘はちょっと嫌だった。

 

「で、何しに来たの」

 

 そう言って如月は偉そうに上座に座り橘に話を促した。和光は驚愕の顔で橘の方を向く。どうやらこの小さいのが霊能力者と信じられないようだ。だが橘がコクリと頷くと半信半疑ながらも受け入れる和光。


 さて、何しに来たと言っても橘に話せるのは和光をここに連れてきた理由だけ、詳細は和光の口から語るべきだと思い、一先ず自分に話せることを話すことにする。


「コイツの家に泊まったら、他の奴らは失神してコイツもおかしくなってたから如月に視てもらおうと思ってな」

「省略し過ぎよ」

「ああ、オレから詳しく話す」

 

 そう言って先日橘たちに話した内容を再び説明する和光。そして話の流れは橘に引っ叩かれたところへと移る。


「女の霊に色々言われて頭がおかしくなりそうだったんだが、橘に叩かれて何故か正気が戻ったんだ。でもまだ幽霊は近くにいて、俺と橘の方へ鬼の形相で向かって来たんだけど、橘が俺を抱きしめていると女の霊も近づけないようで、そのまま消えていって何とか一命はとりとめたって感じだ」

「精神的には死んだけどな」

 

 橘の言葉で誤解をした友人たちの顔を思い出したのか、和光は苦い顔をして謝る。今日一日友人たちに距離を置かれ、これと言った説明も出来ずのまま大学生活が終わるんじゃないかと橘は恐怖していた。唯一、他人に触れ回っていないことが救いだったが時間の問題だろう。一刻も早く除霊して、和光が彼女とイチャついている所を見せ誤解を解くために、橘はここへ来たのだ。


 話は終わり如月からの解説を待つ橘。だが如月は何を考えているのか黙ったままだ。ややあって、


「引っぱたいて意識が戻る、か。橘、あなた他人の精神異常を治せるのね。そいつを抱きしめる事で霊が近寄らなかったのは、あなた自身が結界となっていたのでしょうね」

 

 そう訳の分からない事を言い始めた。


「いや、無意識だったんだけど」

「あなた自身には霊視能力が無いから、自分が何をしているのかにも気づいていないのよ」

「……視えなきゃ意味ないんだが」

 

 せっかく何やら面白そうな能力を持っていても自分で視認出来なければその価値も半減である。凄いわね、と珍しくテンションを上げて褒める如月と引き換えに、橘はどこまでも微妙な顔をしていた。


「じゃあ橘のおかげで霊はもういなくなったのか!?」

 

 和光は橘の顔など気にも留めず嬉しそうな顔をしたが、


「いえ、除霊をしたわけではなく一時的に撤退しただけね」

 

 そう言われて肩を落とした。それを見た如月がコホンと咳払いをする。


「わたしに除霊してほしいなら『お気持ち』を頂かないとね」

「ああ、これでよろしく頼む」

 

 そう言って和光は茶色い封筒を差し出す。そして如月はその場で中身を確認し始める。


 事前に橘は和光に『お気持ち』、つまりは依頼料の相場を教えていた。基本的に数万円をベースに依頼の難易度などによって上下する。だが本当に困っているのならそれだけの金額を出すだろう、という事である程度曖昧にしている。

 数万円は高いが場合によっては霊能力者も命を落としかねないので妥当だと橘は思った。ただそれは、橘がこの如月を本物だと信じているからであり、インチキなのか本物なのか判断が付かない初対面で数万円というのは中々にハードルが高い。


「十五万円ね、あんまりお金に余裕があるようには見えなかったけど」


 如月の言葉を聞いて橘は驚愕する。なぜ十万も余分に入れたんだという顔で和光を見ると、


「本当に困っているんだ、このままだと彼女に愛想付かされるかもしれないからな。それがこんな金額で失わずに済むなら安いもんさ。金はバイトしまくればいいんだしな」

 

 そういって爽やかに笑った。だが橘は渋い顔をする。


(確かにそうかも知れないけど……俺ら学生には高すぎる額だ。何とかならないだろうか)

 

 そう思っていると、如月が封筒から一枚だけお札を抜き取って残りを返した。和光が戸惑っていると、


「初回サービスよ、橘の紹介でもあるしね。そのお金は彼女やあなたの学生生活の為に取っておきなさい」

 

 そう和光に告げた。


「あ、ありがとう! 如月ちゃん、だっけ? どうか宜しくお願いします!」

 

 和光は感激し土下座した。橘はそんな二人のやり取りを見てワナワナと震えていた。


(ヤベェ……。この女、格好良すぎるだろうが……!)

 

 年下の少女に嫉妬しながらもいつか自分も真似しようと心に決める橘だった。

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