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楽園へのトンネル 第12話

「う・・・うぅん・・・」

「おっ?目が覚めたか?」


ボーとする意識のまま目を開いたキャシー、その声の方向に視線を向けるとジャックが何かを作っていた。

ゆっくりと視界を泳がせると周囲に見えるのは座席・・・


「そっか、私・・・」

「良かった。熱は下がったみたいだな」


そっとジャックの手が額に添えられる・・・

その様子から自分が熱を出して寝込んでいたという事が分かった。


「まだ無理するなよ、とりあえず簡単に食べられる物持ってくるよ」

「・・・うん」


まるで父親の様な安心する優しい声で告げられる言葉・・・

暫くバズの天井を眺めながら静かにしていたらジャックが戻ってきた。

手にはスープの様な物があった。


「雪を溶かして煮沸した水で作ったスープだから飲みやすいと思う」

「・・・ありがとう」


手渡された開いた缶詰を再利用して作ってくれたスープは熱すぎず飲みやすかった。

二三口飲んでからジャックに視線を向けた。


「ずっと見ててくれたの?」

「ん?あぁまぁな、一応食料もまだまだあるし無理する必要は今は無いかなって思ってな」

「・・・ありがと・・・」


スープの暖かさか、心がポカポカしてくるような感じを受けて安らぐ私。

ジャックは私が何で足を怪我したのか聞いてこないのか?

そう考えるキャシーであったが、聞かれたところで覚えていないのでどうしようもない。

静かに過ぎる時間を何か会話して繋げようとキャシーは尋ねた。


「私・・・どれくらい寝てたの?」

「んー4日ってところかな?」

「そっか・・・もう皆外だよねきっと」


そう言うが真相は分からない、本当にこのトンネルを抜けた先に楽園が在るという保証すらも無いのだ。

ふと、ジャックが作っていた物に気付きキャシーは尋ねる。


「それ、何を作ってるの?」

「ん?あぁこれか、昔の人は足を怪我したらこれを使って治るまで歩いていたらしいぞ」


そう言ってジャックが見せてきたのは松葉杖と呼ばれる脇の下を支える杖であった。

それが自分の為に作ってくれたものだと分かったキャシーは高鳴る鼓動に気付いた。

親と子ほど年が離れているジャックに対して好意を寄せていたのだ。

吊り橋効果もあるだろう、だが今まで他の人を見捨ててここまで到達したジャックが自分の為に残ってくれたという事実が嬉しかったのかもしれない。

何にせよ、キャシーはジャックに対して特別な感情を抱いているのは間違いなかった。


「とりあえず意識が戻ったのならもう一日ゆっくりして外に出ようか」

「外?先に進むの?」

「いんや、見せたいモノが在るんだ」


そう言って笑顔を見せるジャック。

スープを飲んで体が温まったキャシーは何時の間にか意識を失う様に眠りについた・・・





そして、翌日・・・


「歩けるか?」

「うん、これのお陰で何とか・・・」


そう言うキャシーに寄り添いジャックはバスからの下車を手伝う。

そして、キャシーは目を疑った・・・


「うそ・・・」

「な?どういう訳か分からないけどな・・・」


二人がバスから出た時に見たそれ・・・

入ってきたトンネルの外が明るく太陽に照らされ、霧が何処にも無い世界が広がっていたのであった・・・

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