表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/46

人から人へ感染するアウトブレイク 第4話

先程まで痛みに苦しみながら蹲っていたバーラ、だがそのうめき声が何時の間にか消えてスッと自然な感じで立ち上がった。

突然立ち上がった母を見上げるエルミンとヒロエ。

二人はそれを見て言葉に詰まる・・・

見慣れた母の目が青から赤へと変色しているその様子を目の当たりにしたのだ・・・


「か・・・母さん?」


エルミンの小さい呼びかけ、だがそれに反応する事無くブチっと何かが引きちぎられる様な音。

そして、ハラリと落ちる母バーラの左手に巻かれていた応急処置の布・・・

真っ赤に染まっている布の下から見えたのは在る筈の無い母の完全に指が5本揃った左手である。


「お前・・・その手・・・」


ガンジーの声に反応したのかバーラは赤くなった目をガンジーの方へ向けた。

無表情、普段笑顔しか見ない母の無機質な表情に背筋がゾクリと反応したエルミンとヒロエは咄嗟に声を出さないよう自らの口を塞ぐ。

母の姿をした母でない何かだと本能的に察知したのだ。

それが幸いしたのかバーラだった者は足元にへたり込む二人を気にせずに、バーラに続いて立ち上がったガンジーだけを見て体を動かす・・・

そして、向かい合って立つ斧を手にしたガンジーに一歩近づいた。

まるで驚きに満ちたように真っ赤に染まった目を大きく開き、フラフラとした足取りでまた一歩進んだ時であった。


「がぁああああ!!!!」


突然の豹変、赤く光る眼はしっかりとガンジーを見据え、口を大きく開いて両手を突き出しガンジー目掛けて襲いかかったのだ!

咄嗟にガンジーは手にした斧の柄でバーラの口を受け止めた。

だが驚くべきはその力であろう、それがどうしたとばかりにガンジーは壁に背中を押しつけられるように体重差を気にしないかの如く押されてしまった。

両手の指がガンジーの肩を掴み、メリメリと肉に食い込んでいく!


「バーラ!どうしたんだ?バーラ!」

「うがぁあああ!がぁああああ!!!」


頻りに名を呼び掛けるガンジーであるが、バーラは口に入った柄を気にせずに目の前のガンジーに喰らい付こうと圧を掛けていく。

歯が木の柄に食い込むその力にガンジーは目を疑う。


「お母さん!」

「止めて!それお父さんよ!」


子供二人の叫びも耳に届いていないのかバーラは二人の叫びに耳を傾けず、ガンジーだけに襲いかかり続ける。

止まる気配の無いバーラに気付き、直ぐにエルミンとヒロエは母バーラの服にしがみ付き父から引きはがそうと行動に出たのだが。


「止めろ!お前たち!」


ガンジーの叫びと同時にバーラは自らの子供を標的にしたのか、視線がガンジーから離れ、柄から口を離して振り返る。

その表情はまさに別人そのモノ、もはやわが子を愛した母の姿は何処にもないのであった。


「うぁああああ!!!」

「きゃあああああああ!!」


ガンジーから標的を変えたバーラはそのまま振り返り目の前に居る我が子に襲いかかった。

ガンジーの肩に食い込んでいた指が今度は二人の子供に襲い掛かる!

咄嗟にヒロエを守ろうとエルミンが前に出たのだが、突き出された腕を止めようとしたエルミンのその腕を掴んでバーラは噛み付いた!


「エルミン!!!」

「ぎゃぁ・・・あああ”あ”・・・うああああああああああああああ!!!!」


飛び散る血が周囲に飛散しまさに地獄絵図そのものである。

息子の腕に噛みついたその顎の力が凄まじく、骨を噛み砕いているのか口がエルミンの腕に沈んでいく・・・

ブシュブシュッと隙間から血が噴き出した後はそのままゴキゴキと骨まで嚙み砕く音が響く!

あまりの激痛にエルミンの絶叫が響く中、ガンジーは雄たけびを上げた!


「うああああああああああああああ!!!」


我が子を守ろうとする父、その腕に持っていた斧で妻バーラの側頭部をフルスイングした。

殺意が在ったかはもう分からない、愛する息子を助ける事しかガンジーの頭には無かったのだ。

自分に襲い掛かった妻の姿が最早人間のそれに見えていなかったのもあったが、何よりも二人の子供を守ろうとした行動・・・

生身の人間の顔面に鉄の部分が突き刺さる異常な光景、刃の部分が顔面の中央にまで到達し、顔面に半分めり込んだ斧は顔の原型を破壊しながらバーラの顔面を体ごと横に吹き飛ばす。

二人の子供達は目の前で母の顔を父が破壊するその瞬間を目の当たりにする、だが意識を失う事はなかった。

エルミンは食い千切られた腕を押さえながら蹲り、ヒロエは放心状態で目を丸くしていたのだ。


「大丈夫かエルミン!」

「うぐぐ・・・お・・・お父さん・・・」


ダクダクと床に流れ出る血の量が悲惨さを物語り、その傷の深さから処置に困るのは間違いない。

肉は食いちぎられ、骨は噛み砕かれ、出血も酷い上に安静にしている余裕すらも無い。

だがそれでも何とかしようとエルミンを介抱するガンジーであったがそれを目にしたヒロエが再び叫びをあげた。


「きゃああ!お父さん!お母さんが!」


その声でガンジーとエルミンは視線をやり、それを見て目を疑った・・・

そこには顔面を斧で破壊された筈のバーラ、その顔から斧が肉に押し返され、顔が復元していく母の姿があった。

欠損した部分に肉が泡が膨らむように再生し、刺さっていた斧を押し戻しながら顔が戻っていく無茶苦茶な光景があったのだから・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ