表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/46

楽園へのトンネル 第5話

「どうだ?痛むか?」

「いえ、歩かなければ大丈夫そうです・・・」


足を怪我したキャシーの簡単な手当てをするジャック、その様子を見下ろすような視線で見ているもう一人キャシー。

同じ人間が同じ場所に存在するという異様な光景、だが誰一人彼女について追及しようとする者は居ない。

自分と同じ人間が出現する現象、霧が世界を覆うようになって何度か起こったとされる事実を誰もが知っているからである。

ダブルや複体と呼ばれるこの現象は、主に死を間近に控えた者の魂が肉体を抜け出そうとして出現するという説が唱えられたのも記憶に新しいからである。


「ほら、アンタの分だよ」

「ありがとうございます」


ホリーが差し出した食事を受け取るキャシー、怪我のせいか顔色が少し悪く男性であるジャックに太ももを治療の為に触られている事にもあまり反応が薄かったからか、自然とこちらがダブルだと想像されていた。

そんな同じ人間が居る現象についてマイケルは小さく呟く・・・


「ドッペルゲンガー・・・」


世界が霧で覆われるよりも前の時代に語られていたその名称、話を聞いた事の有るマイケルは高鳴る鼓動を押さえようと必死であった。

他の人間が知らないこのドッペルゲンガーには幾つかの説が唱えられており、その中の一つが問題であった。

ドッペルゲンガーの定説・・・


・ドッペルゲンガーの人物は周囲の人間と会話をしない。

・本人に関係のある場所に出現する。

・ドアの開け閉めが出来る

・忽然と消える

・ドッペルゲンガーを本人が見ると死ぬ

・ドッペルゲンガーを2回見ると見た人も死ぬ


これらが上げられているからである。

そう、一番問題となるのが最初と最後である・・・

今朝から2人のキャシーが会話を行っているのはどちらもジャックのみなのである。

それ以外の人間が語り掛けた言葉に反応を示した様子は在ったが、返答を返し会話を行ったキャシーは居ないのだ。

このドッペルゲンガーのルールが適用されるとするならば、それと会話が出来ているジャックは果たして人間なのか?

そして、本物と思われるどちらかのキャシーも死ぬ・・・

更に一番の問題なのが、偽物であるキャシーを今見ている自分達がもう一度偽物のキャシーを見ると・・・死ぬ。

他者の死については今更気にする者はこの世界には居ないだろう、霧が蔓延して自分が生き残る事を最優先に考える時代なのだ。

だからこそマイケルは見極める必要が在った。

足を怪我しているキャシーは歩いてこの先へ進む出来ないであろう、であれば片方のキャシーは先へ進み、もう片方の怪我をしたキャシーは残る・・・

どちらに付いて行けば生き残る事が出来るのか・・・


「困ったな・・・この足じゃ先へ進むのはきつそうだな・・・」

「はい・・・」


受け取った食事を食べながら少しボーとした感じのキャシー、彼女と会話をするジャックもまた悩んでいた。

マイケル以外の者は先へ進む事を決めており、残っている缶詰の中からどれを持って行くか決めている。

それに混ざって怪我をしていないキャシーが居たのだ。

ちらりともう片方のキャシーにも視線をやったジャックであるが彼も覚悟を決めた。


「俺は・・・ここに残ろうと思う・・・」

「ジャック・・・」

「数日もすればこっちのキャシーの怪我も歩けるくらいには回復すると思う、ここなら食料も寝床もある・・・君を一人残して先へは進まないよ」


ジャックの決意は怪我を負っているキャシーだけに語られたのではなく、周囲の人間にも聞こえる様に告げられた。

その言葉に一番反応を示したのは勿論マイケルであった。

今、確実に怪我をしたキャシーとジャックは会話を行った。

それはつまりマイケルの仮説が正しければ、ジャックは人間ではないという事・・・

そして、缶詰を選ぶキャシーが先程ミランダが確かに会話を行っていたと言う事実・・・

導き出される答えを確信しマイケルは覚悟を決めた。


「やはり、自分も進もうと思います・・・」


そう残る事を決めていたマイケルは高らかに宣言する・・・

マイケルは怪我をしたキャシーがドッペルゲンガーで、ジャックと共にここに残るのはもう一度偽物のキャシーを見る事になり、死ぬ事となるのを確信した。

これにより、怪我をしたキャシー、ジャックが残り・・・


マイケル、ミランダ、ホリー、トニー、キャシーの5人が先へ進む事となった・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ