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楽園へのトンネル 第2話

「おっ・・・開きそうだ!」


トニーが大型バスのドアを何とかして開けようとしているのを見守る一同。

その言葉に雰囲気が明るくなる。

トンネル内は薄暗く霧は少ないが何処か寒気を感じる不思議な違和感を覚えていた。


「そっち押せるか?」

「任せろ」


トニーの言葉にジャックが手を貸しバスのドアがこじ開けられた。

マイケルは疲れ果てているキャシーの横に立ちそれを見守り、残る2名のミランダとホリーは周囲を探っていた。

近くに何台かの車が乗り捨てられており、大災害から逃げようとした人々がここで最後を迎えたのだと嫌でも認識できるくらいの白骨死体があちこちに散らばっていた。


「こんなに綺麗に残っているモノなのですね」

「うん、私は話にしか聞いた事ないけどね」


マイケルの言葉にキャシーも答える。

トンネルの外を覆う霧、あれが世界に蔓延してから15年・・・

まるで溶かされるように霧に覆われた中で死んだ者はその姿を消す。

一体あの霧が何なのか当時の学者が色々と調べたのだが解明する事無く数々の学者はその姿を消した。

それは生き残った人類が残した書物にしっかりと記載されていたのだ。


「おーい朗報だ!どうやらエンジン生きてるっぽいぞ!」


トニーがバスの中で色々と操作してバスのエンジンが始動した。

そのエンジン音に驚くキャシー、それはそうである、車と言う存在を話でしか聞いた事のない彼女はガソリンと言う液体で機械が動くという現象を初めて目の当たりにしたのだから。

この中で一番若いからそれは仕方ないのだが・・・


「ガソリンは大丈夫なのか?」

「一応は、ただ15年ものだろうからな安心はできないが・・・」


ジャックの言葉にトニーが答えていた。

顎髭を触りながら答えるトニーに白髪交じりのジャックは興奮気味であった。

それはそうであろう、彼等の肌に当たるエアコンの風。

フィルターが古く臭いにおいがするが、人類の科学の暖かさをその身に感じているのだから。

だがそれでもその空気が良くないのは分かる、だから彼らはいつもの様に布で口と鼻を覆った。

寝る際に霧を出来るだけ吸わないようにする生活の知恵であった。


「なにこれ凄い・・・暖かい・・・」

「これがエアコンと言うモノですよ」


バスの中から漂うエアコンの暖かさを感じたキャシーが感動し、マイケルは笑顔で会話をする。

一度は見放そうと一同が考えた彼女に、どう話しかけるべきか悩んでいた彼にとって良い切っ掛けでもあった。

そして、朗報は続く・・・


「おーい、こっちに缶詰が在ったぞ!」


ホリーがバスに居る人達に向かって歩きながら声を上げた。

周囲に残る車の中から保存食を発見したのだ。

後ろを歩くミランダといくつかの缶詰を運びながら戻ってくる彼等を一同の明るい顔が迎える。

ここへ来るまで心休まる時が無かった彼等に久方ぶりの笑顔が戻った瞬間であった。

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