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快速殺人電車 第2話

プシュー


ドアがしまる直前に搭乗した大成は車内を見回して何処に座ろうか考えていた。

日中の込み合う時間帯ではないので乗客は自分を入れて10名。

フト先程の老婆の言葉が頭を過る・・・


『そこの坊や、あの電車には乗らない方が良い』


妙な説得力が感じられたのか、大成の脳裏にその言葉が繰り返しリピートしていた。

だがもう乗り込んでしまったのだと割り切り、大成は近くの座席に腰を降ろした。

通路を挟んでドア側に真っすぐ並ぶ長い座席、客同士が向かい合う形よりも沢山の人が立つ事で乗客の人数を乗せれるこの形の電車は非常に通路が広い、その分座れる人数が限られるのでラッシュ時間にはまず座れないそこに座れる、しかもドアのすぐ側の端に座れるので非常にご機嫌であった。


「生き方を貫け・・・か・・・」


フト老婆の言葉を口にして自らの左手の掌を見詰める。

高校生にもなって特撮ヒーローの正義を振りかざす自分が少し滑稽に周りに見られているのは理解している。

だが信念を貫く事で自分の自信につながり、生きている実感を得ているのも事実。

座れた喜びもそうだが、やはり立っている女性に席を譲りたいという欲求が生まれ、大成はチラリと周囲を見回した。


「まぁ、これだけガラガラだったら必要無いか・・・」


どう見ても人数よりも座席数が多いのでそんな心配は無いと大きく息を吐いて肩の力を抜いた大成であったが・・・


「や・・・やめてください・・・」


か細く聞こえたその声、大成はチラリと声の方へ視線を向けた。

そこにはOLと思われる女性が一人立っていた。

そして、その後ろに新聞を読んでいる風のサラリーマンが一人・・・

その距離が異常に近いのだ。


「あれは・・・?!」


嫌がる感じのOLに男が耳打ちしたのか、今にも泣きそうなOLの顔がこちらを向いた。

明らかに嫌がっている様子のその女性を見て大成は立ち上がった。

カバンは足元に残したまま二人の方へ近付いていく大成、そして男性とOLの間に手を差し出した。


「何やってるんですか?」

「あん?」


スッと男の腹部を少し押してOLから距離を取らせた時であった。

OLの声が耳元で聞こえた・・・


「・・・してや・・・してやる・・・ろしてやる・・・」

「えっ?」


聞き間違えか、その言葉に耳を疑った大成はOLの方を見た時であった。

新聞を持った男が一歩下がるが大成は気付かない。

そして、OLに払いのけられる大成。

よろけ、揺れる電車の振動で尻もちをついた。


「あいたっ!」


臀部に響く痛みに声が漏れるが目の前で行われたそれに目を疑った。

OLがシャーペンと思われる物をサラリーマンの男性の胸に突き刺していたのだ!


「あがっ!?」

「殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロス・・・」


突き刺さったペンを上から何度も叩くOL。

男性は驚きそれを止めさせようと女性を押しのけようとするが・・・


「うわああああああああ!!!」


その男性の出した手に噛みついたOL!

血が飛び散り大成の顔にまで飛んできた。

目の前で行われるその光景に大成は何もできない、非現実が目の前に広がっていたのだ。


「うわぁ・・・た、助け・・・」

「ころころころころころここここおっこここおおkっこおこここここkっここここ・・・」


狂ったように男性に襲い掛かるOL、誰もがその光景に見入っていたのかそれに手を差し伸べる者は居ない。

倒れた男性の背中にもペンが突き立てられOLが何かを床に吐き出した。

地面に落ちる真っ赤なそれは、男性の指であった。


「う・・・あ・・・」


大成の目の前で繰り広げられたそれに腰が抜けたのか、身動きがとれないまま男性が殺されていくのを見る事しか出来ない・・・

そして・・・


「がぁあああああああああああああ!!!!!」


振り上げられたペンが男性の後頭部に突き刺さった!

ビクンっと痙攣をして焦点の合わない男性と目が合う。

口から泡の様な物を吹きながらガクガクと震える男性の顎・・・

OLの奇声と共に大成は意識が遠くなるのを感じた・・・












「まぁ、これだけガラガラだったら必要無いか・・・」


フト無意識に自分の口から出た言葉に我に返る大成。

走る電車内に座っている自分に気付き慌てた様子で周囲を見回す。

だが、何も起こっていない電車内を確認し息を吐いた。


「ゆ・・・夢なのか?」


やけに生々しく臀部に痛みが在る様な気がするが平穏な電車内で在る事を確認した大成はそう納得する事にした。

先程見たあれが現実とは思えず、冷や汗が溢れるが夢だったのだと納得し視線をそちらに向けた。

そして大成はそれを目にした。

OLの後ろに立つ新聞を広げた男性が近づき・・・


「や・・・やめてください・・・」


か細く聞こえたその声に大成は立ち上がるのであった・・

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