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天井が迫ってくる塔 第3話

『問題! 歌手、画家、小説家。3人の中で秘密が無いのは誰でしょう?』


私に届いた謎の声、それは男とも女とも感じ取れる中性的な声色であった。

何故いきなりなぞなぞが出されたのか分からない、ただ一つ分かる事は足元に描いてあった『〇』からまっすぐ上に光の壁が出来て外へ出る事が出来なくなっているという事だけである。

手で光に触れるが・・・


「なに・・・これ・・・?」


そこに何かが在るのは間違いない、だがそれに触っている筈なのに感触が全く無いのである。

麻酔を使用した後の感触の様に触れている感じが全くしなかったのだ。

周囲に居た筈の人の声も聞こえなくなっており、塔全体が揺れている振動と確実に迫ってくる天井だけが依然残っていた。


『問題! 歌手、画家、小説家。3人の中で秘密が無いのは誰でしょう?』


再度同じ問題が繰り返され、このなぞなぞが一体どういう意味なのか理解できない私は小さく口にした、いや、口にしてしまった。


「歌手・・・がk・・・」


ゆっくりと問題を復唱しようとした、だがその瞬間目の前の光が消えた。

視界がクリアになり周囲の人の様子が見えるようになったのである。


「おい!大丈夫なのか?!」


その声にビックリした。

直ぐ横にあの金剛と言う不良っぽい男が居たのだ。

思わず口元に手をやって後ろに下がったのだが・・・


「えっ?!」


そこには見えない壁が在った。

背中に触れたそれの感触は光の壁と同じように無く、手で触れてみても全く変化は無かった。

それはつまり、閉じ込められたと同意でもある。


「どうした?何が在ったんだ?」

「分からないです、突然光の壁に包まれて出れなくなって・・・その・・・」

「あぁ?」

「変ななぞなぞみたいな問題が聞こえてきて・・・」

「なぞなぞ?」

「確か・・・『問題! 歌手、画家、小説家。3人の中で秘密が無いのは誰でしょう?』と言われて・・・」

「んんん? ・・・あーそりゃ歌手だな」

「えっ?」

「何故なら画家と小説家は『書く仕事』、つまり『隠し事』だから秘密があるって訳だな」

「えぇぇ・・・」


豪快にどや顔で金剛は答えを言う、それを聞いてあまりに幼稚な答えにどっと疲れが溢れ出てきた。

だが・・・


「どうやら問題に正解すれば助かるみたいだな」

「へっ?」

「見てみろ」


そう言われ金剛が上を指差していたので視線をやる、すると私の真上、丁度床の〇と同じサイズの穴が迫ってくる天井に開いていたのだ。

つまり、なぞなぞに答える事が助かる方法・・・


「どうやらそうみたいだな、よっしゃ!皆聞いてくれ!あの〇の中に立つとなぞなぞが出されるらしい、それに答えたら助かるみたいだ!」


そう言って金剛は直ぐ近くの床に掛かれた『〇』の上に飛び乗った。

直ぐに床から光が上がり、彼の姿は見えなくなってしまった。

その金剛の言葉に感化されてか、次々と別の人達も床に書かれていた〇の上に立った。

時間にして3分・・・直ぐに光の柱は自分のと同じように透明になり、ガッツポーズを取っている金剛の姿が見えた。


「よっしゃー!簡単だったぜ!」

「金剛さん、どんな問題だったんですか?」


別の〇に乗った女生徒が聞いてきたので金剛は嬉しそうに答える。


「あ?問題か?『ゾウ、イルカ、ライオン。ひっくり返ると軽くなるのはどの動物でしょう?』って問題だ」

「えっと・・・ゾウ?」

「違うわ!よく考えろ、言葉をひっくり返すと『ウゾ、カルイ、ンオイラ』だから軽いになるイルカが正解って訳だ!」

「な、なるほど!」


そう言って笑う女生徒、心なしか切羽詰まった様な笑い方をしている気がするのだが・・・


「そ、それじゃあ『1束、3束、5束。2束と3束の花束を合わせると何束になるでしょう?』って問題は?」

「あー?んなもん合わせるんだから1束に決まってるんじゃねーか?」

「だっだよね~」


そう言って乾いた笑いをし始めた女生徒は見えない壁に手を当てて私の方を見た。

その目はフルフルと震えており、様子がおかしいと感じた。

しかし、直ぐにその理由が分かった。


「天井が・・・開いて・・・無い・・・」


振動で全体が揺れ続けている状態、その中で身動きがとれない閉じ込められた状態の私は見えない壁を叩く!

ふざけてる、こんな冗談みたいななぞなぞで・・・

だが、見えない壁を幾ら叩いても手には感触も残らず、見えない何かに押し戻されるだけであった。

そして、それは金剛も同じようであった。


「くそっ!なんでっこのっ!」


何度も見えない壁を殴り、蹴り、助けに行こうと必死になるが見えない何かに押し戻され何もできなかった。

そして・・・


「いやー!なんでー!?なんでよー?!」


別の場所から聞こえる叫び声、それは別の女生徒であった。

少し離れているが、彼女の上も穴が開いてはいなかった。

〇の中に入れば聞こえてくるなぞなぞ、それに正解したかどうかの判定は天井の穴が開くかどうか・・・

そして迫ってくる天井に閉じ込められた生徒達・・・

泣き叫ぶ声が響く、この後訪れるその光景を想像し吐き気を覚え私は目を瞑った。

金剛の声や他の人の励ましの声が響き渡るが、現状どうしようも無いのが現実、どうやってもこの中から出る事は出来ないのだ。

そして・・・


「い・・・・嫌だぁ!」

「死にたくない!死にたくないぃ・・・」

「やだ・・・やだぁああ!!」


次々に響いてくる悲鳴が抑えた耳に響いてくる。

あまりの恐怖にうっすら目を開けると丁度立っている高さに天井が来ており、近くでしゃがみこんでいる男子生徒と目が合った。

必死にこちらに向かって手を伸ばす彼、だが天井は無情にも彼の上に降りていく・・・


「・・・あああっ・・・ひああああああああああああああああ」

「いやだああああああああああああああああああああ」

「助げで!おどうざん!おがあざああああああああああああああん!」


そして、ゴシャッと何かが潰れ、何かが砕け圧し潰される音が響く・・・

確認する気にもなれないその生々しい音、それと共に叫び声だったモノが一言の奇声と共に止む。

見なくても分かる、それはきっと・・・


「うっうげぇ・・・おげぇえええええ・・・・」


私はその場に蹲り嘔吐するのであった・・・

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