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第9話 【生まれてから】小さい頃の思い出を語ろう【これまで】 1/2

ゆうにいさん」

「……どうした、勇海いさみ?」



 きゃーきゃーと、後ろで黄色い声援が飛び交ってるのが聞こえる。


 まぁ、こんな駅から外れたところにある喫茶店に――アイドル級の美貌を持った、爽やか高身長イケメンが来れば、そうもなるだろう。



 ただし、この子は――紛れもなく女子なんだけどな。



 黒い執事風の衣装が良く似合う、男装の麗人――それが綿苗わたなえ勇海。俺の義理の妹だ。



「昨晩の反省を活かして……結花ゆうかのいないところでお話しを聞きたく思いまして。どうやったら、結花と仲良し姉妹になれるか……ご伝授ください、遊にいさん!!」


「まず、その遊にいさんってなに?」


「結花の気持ちに少しでも近づこうと、『遊くん』という呼び名からヒントを得て、考えました! 第二案として、『遊くんさん』というのもありますが」


「うん、遊にいさんでいいよ……」



 そんな澄んだ瞳(青いカラーコンタクト着用)で、じっと見られても。



「っていうか、その態度で結花を敬えば、すべて解決すると思うんだけど。本当に」


「それができれば、苦労しないです……っ!」



 グッと唇を噛み締めて、勇海は悔しそうに呟く。



「皮肉なものですね……結花を護れるくらい強くなりたいと願った結果、結花に疎まれるようになるなんて――」


「あのぉ……こちら、サービスのパフェになりますぅ♪」



 まったく空気を読まないタイミングで、若い女性店員さんが、勇海に対してパフェを提供してきた。注文してないのに。


 そんな店員さんに対して、勇海はふっと微笑み掛ける。



「へぇ。この店のサービスは、相当なものだね」


「お客様に喜んでもらいたくてぇー♪ どうぞ、パフェを召し上がって――」


「違うよ。パフェのことじゃなくって」


「え?」



「君みたいな美女が、こんなに素敵な笑顔を向けてくれるサービスが……素敵だなって、言ったんだよ」



「きゃあぁぁぁぁぁぁっ♪」



 何、この茶番。


 絶句する俺のことをちらっと見て、勇海は深くため息を吐いた。



「結花にもこんな風に、強くなった僕の言葉で、喜んでほしいのに……」


「強くなったって繰り返してるけど、さては勇海、ただチャラくなっただけだな!?」



 もう、ふざけてるのか、本当に悩んでるのか。

 義兄としては判断できないんだけど。



「……あ。そうだ、勇海。結花が不登校だったのって……いつなんだっけ?」


「え? 中二の冬頃、からですね……その頃から僕は、強くなろうと誓」


「じゃあその前! 結花が中一の頃とか、小学生の頃とか!! どういう風に接してた?」


「結花が、小学生の頃か……僕も結花も、その頃は結構キャラが違いましたね」



 やっぱりそうだよな。人に歴史ありって言うし。



 かく言う俺も、そうだった。


 中三までは『オタクだけど陽キャ』なんて選ばれた人種だと思い込んで、オタク話で盛り上がりつつ、男女問わずフィーバーして調子に乗っていた。


 そして、当時恋してた相手――野々ののはな来夢らいむに、絶対成功すると信じて告白して。


 玉砕。クラス中に広まる噂。からかいの嵐。



 そして、しばらくの不登校期間を経て――俺は変わった。



 二次元の女神であるゆうなちゃんと出逢い、三次元女子との恋なんて二度としないと誓って――『恋する死神』となった。




 そんな風に……結花と勇海にも、今とは違う『過去』があるんだとしたら。


 それこそが打開策になるんじゃないかって……思うんだ。

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