表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/294

第38話 【超絶朗報】俺の許嫁、可愛いしかない 1/3

「おねちゃんー。コスモミラクルダイナマイトー」


 男の子はキリッと眉を吊り上げると、てこてこと結花ゆうかに向かって走っていった。


 そして、ぶつかると。


「どーん!」

「うわぁ、やられたぁ」


 結花がわざと、地面に転んでみせる。


 それを見て、男の子は嬉しそうに両手を挙げて喜ぶ。


 なんていうか……和むなぁ。


 眼鏡にポニーテールという、『綿苗わたなえ結花』の格好にもかかわらず、結花の表情は学校と違って柔らかい。相手が子どもだからかな。



 ――――学校の綿苗結花。


 ゆうなちゃんを演じる和泉いずみゆうな。


 そして、家での結花。



 色んな顔があるけど、子どもと戯れている結花は……また違う顔。


 どれが嘘とか、どれが本当とかじゃなくって。


 色んな結花がいて、その全部が結花なんだよな。


 多分きっと、俺にも色んな顔があるんだろう。



 そういうのを、全部ひっくるめて――俺も『佐方さかた遊一ゆういち』なんだと思う。



「よーし……今度はお兄ちゃんに、やってみよっか?」


「うん。コスモミラクルダイナマイト!」



 男の子は、そこだけ流暢に発音すると。


 俺に向かって、てこてこと駆けてくる。


 そして、俺の腰元にタックルしてきたから。



「ぐわああああ、やーらーれーたー!!」



 派手な声を上げて、俺は地面をごろごろと転がってみせた。


 我ながら迫真の演技。


 これで、子どもの心をがっちりキャッチ――。



 ――――――ゴンッ!



「いってぇぇぇぇ!?」


「ちょっ、ゆうく――佐方くん!? 大丈夫?」



 調子に乗った結果、俺は大樹の根っこに、したたかに頭をぶつけた。



「もー……やりすぎ」


「面目ない……」



 座り込んだまま頭を押さえる俺のそばに駆け寄って、結花はため息を吐く。


 そんな俺たち二人を、じーっと見つめる男の子。



「おねちゃんと、おにちゃん。けっこんしてるの?」


「えっ!?」


「な、何を言ってるのかなぁ!?」


「だって、なかよしさんだよ?」



 あたふたする俺と結花を、幼児さんの純粋な瞳が見つめている。


 いや、確かに結婚に近い関係なんだけどさ。


 それはみんなにバレちゃ駄目なやつっていうか、秘密の関係っていうか……。



「たっくーん!」


「あ、ママ!!」



 俺たちがなんとも返答できずに黙り込んでると。


 男の子のお母さんらしい人が、慌てて駆け寄ってきた。


 瞬間――男の子の顔が、ぱぁっと明るくなる。


 お母さんは男の子をギュッと抱き締めると、その頭をぐしゃぐしゃと撫でた。



「ごめんね、お仕事で遅くなっちゃって」


「ううん。おにちゃんたちが、あそんでくれたー!」


「まぁ、そうなんですか! ありがとうございます、うちの子と遊んでくれて」



 お母さんはぺこぺこと頭を下げながら、俺たちにお礼を言ってくれた。


 隣でお母さんの真似をして、男の子もぺこぺこしてる。


 なんとも微笑ましい、家族の光景。



「よかったね。ママが来てくれて」


「うん!」



 結花が目を細めて笑う。



 その穏やかな表情を見ていると――なんだか俺まで、温かい気持ちになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鋭い男の子...... そろそろお家パートかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ