第15話 【2月14日】俺の許嫁の結花が、生まれてきてくれて【誕生日】 1/2
「ねぇねぇ遊くんっ! 手作りチョコもらって、どう思った? びっくりした?」
友達の後押しを受けた結花が、みんなが見守る教室で、手作りチョコを渡してきたバレンタインデー。
そんなの、公開告白としか言いようがないと思うんだけど……なんか結花が、感想を聞きたそうにしてる。眼鏡の下で、目をキラキラさせながら。
家路を辿りながら、俺は正直な思いを述べた。
「そりゃあ、びっくりしたよ。まさか結花が、クラスの女子たちに相談してるだなんて、思わなかったもの」
「え、そっち!? まさかチョコを手作りしてるなんて! ……的なびっくりは!?」
「え、そっち!? ないよ、そっちは! まさか結花、あのキッチンお化け事件で、隠し通せてると思ってたの!?」
「……ぶー。バレちゃってたのかぁ……」
結花が不服そうに、頬を膨らませる。
無茶なことを言うなぁ、結花ってば。
「まーまー。結ちゃん、大丈夫だってぇ。教室で結ちゃんがチョコ渡しただけで、佐方はめっちゃびっくりして、おたおたしてたかんさ。十分サプライズだったって!」
――なんて、軽い口調で言いながら。
結花の隣を歩いていた二原さんが、ニカッと笑った。
「……さっきから気になってたんだけど。なんで二原さん、ついてきてるの? 二原さんの家、こっちの方じゃないでしょ?」
当然の疑問を口にする俺。
俺と結花が一緒に下校するときは、途中まで別々に帰って……ひとけがなくなってから合流するってのが、いつものスタイルだ。
ご多分に漏れず、今日もそうやって合流したわけだけど。
なぜか結花と一緒に……二原さんも来たんだよね。
「あ。うちがいるから、結ちゃんとイチャつけなくって、欲求不満系? 気にしないでいーよ! めっちゃラブラブ、イチャイチャしても、うちはOKだかんさ!!」
「そんなこと思ってないんだけど!? 人を欲望の塊みたいに言わな――」
「――あ、ありがとう桃ちゃんっ! えいっ、ぎゅー!!」
二原さんのとんでも発言を否定しようとしたら。
結花がニコニコしながら、俺の腕に抱きついてきた。
……欲望の塊は、ここにいたか。
「あははっ! やっぱ結ちゃんって、めっちゃ可愛い! そういう結ちゃんの、無邪気でピュアなとこ……好きだなぁ」
「……あれ? 桃ちゃん、どうしたの?」
二原さんの様子が気に掛かったのか、結花はパッと俺から離れて、後ろにいる二原さんの方へと向き直る。
「……ごめん。きっとこの後、家族で誕生日パーティーとか、そんなんだよね? すぐ帰るんだけどさ……どーしても、ひとつだけ……結ちゃんに伝えたいことがあって」
「うんっ。なぁに、桃ちゃん?」
言い淀む二原さんを見つめたまま、穏やかに笑う結花。
そんな結花に、応えるように……二原さんも微笑んだ。
「――誕生日おめでとう、結ちゃん。うちってさ、喋りが軽い感じに聞こえるし、あんま伝わってないかもだけど……高二になって、結ちゃんと仲良くなれてさ。うち――ほんとに毎日、楽しかったんだ」
「そんなの、私だって同じだよ。桃ちゃんと仲良しになれて、すっごく嬉しい。大好きだよ、桃ちゃん」
「……はずいよ、結ちゃん。やばっ、なんか泣きそうなんだけど……あー、もぉ! 結ちゃん、大好き!! うちが男子だったら、ぜってー佐方になんか譲らないんだかんね!」
「なんで突然、俺に対抗意識を燃やすのさ。二原さんってば」
そんな、和やかなやり取りの末に。
二原さんは鞄の中から、手作りチョコらしきものを取り出して。
結花に差し出しながら――照れくさそうに、笑ったんだ。
「みんなにも友チョコ、配ったけど。結ちゃんにだけは、この……桃乃様特製の手作りチョコ! 友チョコってさ、友達にあげるやつじゃん? だけど、うちは結ちゃんのこと、友達ってゆーか……その……親友だと、思ってるかんさ!」




