第26話 【アリラジ特番】『ゆらゆら★革命』の活躍、止まらない問題 2/2
「『ゆらゆら★革命』――新展開っ!!」
新プロジェクトとして『ニューアリスアイドルオーディション☆』が発表された、次のターンで――和泉ゆうなが、満面の笑みで言い放った。
……『ゆらゆら★革命』の新展開、だと?
「ここからは、私たち『ゆらゆら★革命』のミニコーナーよ。覚悟はいい?」
「ふふふ……皆さん、びっくりしました? これからもっとびっくりの、素敵な展開を発表しますよーっ!」
びっくりしすぎて、三途の川が見えたよ。
結花ってば、こんなビッグプロジェクト、よく家の中で隠し通してたな……。
「それでは――『ゆらゆら★革命』に欠かせないアリスアイドルを、お呼びしましょう」
「油田のように素敵なプロジェクト、皆さんと楽しく発掘しますわ……でる役、掘田でるでーす。ってか、ついにここまで来たかって感じよ、もぉ!」
出た、『ゆらゆら★革命』のお約束――やさぐれ&キレ芸声優こと、掘田でる。
だけど……「ついにここまで来たか」って? 一体どういうことなんだ?
「掘田さん! 今のお気持ちはどうですかー?」
「え。恐怖」
「恐怖!?」
「や、だってさぁ……あんたたちの間に、わたしが入るんでしょ? 恐怖でしかないでしょーよ。わたしは体のいい潤滑油じゃないんだけど! 分かってる、運営さん!?」
「相変わらず、たとえがうまいですね。その腕が正当に評価された結果かと」
「やかましいわ! 誰のせいで腕が上がったと思ってんのよ、らんむ!!」
相変わらず息の合ったボケとツッコミで、テンポのいいトークを繰り広げる三人。
そんな中、和泉ゆうなが――「じゃじゃーんっ!」と声を上げると。
スタジオのモニターに、想像だにしなかったプロジェクト名が――映し出された。
――『ゆらゆら★革命 with 油』新曲制作中!!
「「with ……油!?」」
俺とマサはほとんど同時に、脊髄反射で立ち上がった。
二原さんは座ったまま、じっとTV画面に釘付けになってる。
「そんなわけで、今回の『ゆらゆら★革命』は、でる役の掘田でるさんも含めた三人で新曲を発表します! すごいですね、嬉しいですねっ、らんむ先輩!!」
「掘田さんが加わろうと、私には関係ないわ。どんな状況であっても、私は研鑽を続けて――高みに辿り着くと決めているのだから」
「失礼じゃない!? 関係ないってことはないでしょうが!! あんたたちのために、わたしがこれまで、どれだけ駆り出されてきたことか……」
「これからは同じチームとして、一緒に駆り出されましょうね! 掘田さん!!」
「……不安だぁ~~……でも。でるの可愛さを伝えられるよう、死なない程度に頑張るけどね。皆さん、『ゆらゆら★革命 with 油』をよろしくお願いしまーす!」
と……まぁ、なんだかんだ言いながらも。
和泉ゆうなと紫ノ宮らんむと一緒に、楽しそうに笑ってる掘田でるが映ったところで。
特別生配信は、いったんCMに入ったのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「『転生したら、テンプレ展開しかない世界に来たんだけど?』のCMだってさ。二人で一緒に告知するわよ」
「…………好き」
「はぁ? ちょっと、なんか距離が近いんだけど!?」
「ずっと孤独に生きてきたから。一緒にCMをやろうなんて、言ってもらったら……どうしよう、好きが止まらない……っ!」
「ぎゃあああ!? ちょっと、CM中に抱きつかないでよ! 女の子同士でこんなことしてたら、百合アニメって勘違いされちゃうじゃない!!」
「……胸のサイズを見たら、男女カップルだと思ってもらえるかもしれない」
「誰の胸がぺちゃんこの平面ですってぇ!? あたしの胸にだってZ軸くらいあるわよ!!」
――――ハイテンションラブコメディ『転テン』、大好評放送中!
◆
「やべぇな、遊一……ちょっと俺、テンションが上がりすぎて、めまいがしてきた」
「俺もだよマサ……全身が震えて、なんだか動悸がエグい感じになってる」
「だいじょぶ、二人とも!? あ……でも、なんかうちも、嬉しくて涙が……」
ゆうなちゃんの妹・ななみちゃんのデビュー決定に加えて。
『ゆらゆら★革命』の新たな展開まで告知されたもんだから。
俺たち三人は、喜びとか感動とか、色んな感情の波に呑まれて――黙り込んでしまう。
結花のひたむきな努力が、少しずつ実ってきてるんだな。
そんな感慨に耽っていると、なんだか涙腺が緩んできて――。
――――ブルブルッ♪
そんな絶妙なタイミングで、俺のスマホが結花からの着信を告げた。
「もしもし? 結花?」
『問題です。「ゆらゆら★革命 with」に続く言葉は、なーんだ?』
「油!」
『……やっぱり生配信観てたなー! まだ配信でしか情報解禁してないのにー!!』
「あ……い、いや結花、家で言ってなかったっけ?」
『こんなこともあろうかと、敢えて遊くんには、事前に言わないようにしてました』
何その、巧妙なトラップ。
孔明もびっくりな策士っぷりだな……うちの許嫁。
「冷静に考えて、結花? 今回のは、結花がメインパーソナリティじゃないでしょ? つまりこれは、我が家の『アリラジ』禁止令の範疇に、該当しないのではないかと」
『言い訳しないでくださーい。遊くんの、ばーか』
「……そもそも論だけど。『弟』トークしてるのを観られたくないってのが、『アリラジ』禁止令の最初の主旨だったよね? 今日は『弟』トークしてないし、別にいいのでは?」
『…………それは、言い訳でーす』
「いやいや。今、めっちゃ間があったよね!? 自分でも絶対、ちょっと理不尽だって気付いてるでしょ結花?」
と、まぁ――こんな感じで。
今回は非常に論理的に、『アリラジ』の視聴権を主張したんだけど。
『うー……とにかく! だめなもんは、だめなのっ! 遊くんのばーか、だもんっ!! ばかばかすきばか!』
意固地になった結花さんによって、俺はひたすら怒られたのでした。理不尽。




