表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/294

第35話 俺の許嫁になった地味子、声優になったら輝きしかない 1/2

『おっけー。今日のとこは、うちに任せといて! 御礼として、今度うちにも日焼け止めクリームを塗ってよねー』



 なんでだよ。


 その御礼のリクエスト、本当に意味が分かんないんだけど。


 でも……今日色々やってくれてるのは、本当にありがとうね。二原さん。



 そんなことを考えつつ、俺はスマホの電源を切って、顔を上げた。



『ゆらゆら★革命』のファーストシングル、その発売記念として順次開催中の――五地域でのインストアライブ。


 今日はその第二回……沖縄公演だ。



 インストアライブなので、そこまで大人数の会場じゃないけれど、スタンド席はぎゅうぎゅう詰めになっている。


 サイリウムを持って『アリステ』Tシャツを着た同志たちが、期待に満ち溢れた顔で開演を待ちわびている。



 ……参加できるって分かってたら、俺もサイリウム持ってきたのにな。


 なんて――スタンド席に交じった俺は、ふぅとため息を吐いた。



 まぁ、予定外のライブ参加だから準備が不十分なのは心残りだけど……正直、紫ノ宮(しのみや)らんむには感謝している。


 だって、本当は参加できなかったはずの沖縄公演を、この目で観られるんだから。


 これ以上の幸せは――『恋する死神』にはない。



 そのとき、ふいに――会場の照明が暗くなった。


 同志たちが奇声にも似た声援を、まだ誰もいないステージに向かって送りはじめる。


 サイリウムはないけれど、俺は拳を振り上げて、その流れに続く。



「――『ラブアイドルドリーム! アリスステージ☆』。ここにいる全員が、『アリステ』を愛してるって解釈で……いいのかしら?」


「もちろんですよ、らんむ先輩! この会場のみーんなが、『アリステ』のこと大好きなんですよっ!!」



「可愛いいいい!」「らんむ様あああああ!」「ゆうなちゃぁぁぁん!!」――なんて、会場のみんなと一緒に絶叫する。



「でも今日は、『アリステ』の中でも、私とゆうなしかいないのね」


「そうですよ。だって今日は――私とらんむ先輩のユニットとして、この沖縄会場までライブをお届けに来てるんですからっ!」


「そう……私が高みに向かって飛び上がる、その大きな一歩となるステージに、きっとなるわね」


「ちょっと待ってください!? ハードル、ハードルが高すぎますから!!」



 会場中からドッと、笑いの渦が巻き起こる。

 俺もその空気に当てられて――声を出して笑ってしまう。


 頑張ってね、ゆうなちゃん……俺はずっと、ここで見守ってるよ。



「それじゃあそろそろ行くわよ。ゆうな――覚悟を決めて、ステージに立ちなさい」


「うぅ……もぉ、らんむ先輩ってば。そんなに言われたら、お腹痛くなっちゃいますよ」


「「『ラブアイドルドリーム! アリスステージ☆』――新ユニット『ゆらゆら★革命』、インストアライブ! in沖縄!!」」



 二人の声がハモったかと思うと、ステージ上に二人の天使が舞い降りた。



「皆さん、こんにちアリス。らんむ役の、紫ノ宮らんむです」


 紫色のロングヘアを翻し、紫を基調としたセクシーな衣装を身に纏って……紫ノ宮らんむは、深々とおじぎした。



「みっなさーん! こんにちアリスー!! ゆうな役を務めてます、和泉いずみゆうなです。よろしくお願いしますっ!」


 茶髪のツインテールを揺らしながら、ピンクのチュニックというキュートな衣装に身を包み……和泉ゆうなは、元気いっぱいに右手をかかげて挨拶した。



「「そして、私たちは――『ゆらゆら★革命』です」」



 再び二人で声を合わせて、紫ノ宮らんむと和泉ゆうなは、ユニット名を紹介した。


 あちこちから「ゆらゆらー!」「俺も革命してくれー!!」なんて声が聞こえてくる。



「このユニットは、もともとはラジオからスタートしたのよね」


「はい! 私とらんむ先輩の掛け合いが、ネットで話題沸騰して!! そのまま、ぐつぐつと……今回のユニット企画に煮込まれたそうですっ!」


「……上手いことを言ったつもりなの? 貴方、そういう発言をするときは、変に度胸があるわよね。ある意味、感心するけれど」


「えへへー……まぁ、そういう私のはちゃめちゃ発言? って自分で言うのもなんですけど、そこからはじまった企画ですし。今後も楽しいお話を、お届けしていきますよー!!」


「めちゃくちゃ発言……ね。そういえば昨日、掘田ほったさんから『二人とも発言には気を付けなさいよ』と、真面目なトーンで指摘を受けたわ」



 ――――あれ?


 なんかいつもの『アリラジ』に比べて、二人の会話のテンポが噛み合ってる気がする。


 面白いんだけど、掘田でるがいないと放送事故一歩手前な感じの、普段の雰囲気とは違って……なんだか和やかな感じというか。



 ただの個人的な感想だけど。


 二人の息が合ってきた証拠なんじゃないかなって……そんな風に思う。



「ってわけで! そろそろライブの時間ですよ、らんむ先輩!!」


「そうね。ライブでやるのは大阪公演に続いて、二回目。前回以上に……盛り上がることを期待しているわ」


「だーかーら、ハードル上げないでくださいって! 私、『ゆらゆら★革命』の前はライブなんて、ほとんど出たことないんですから……すっごく緊張してるんですよ!?」


「そう。じゃあ、そうね……緊張しないで、盛り上げましょう」


「それも無茶振りですよ、らんむ先輩!?」


「……それじゃあ、ライブをはじめるわよ。聴いてください、『ゆらゆら★革命』で」




「「――『ドリーミング・リボン』」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ライブ、始まった! サブタイ見ると、なんかもう最後のクライマックス感出てきている…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ