コーヒーメーカー
「さて、食事も済んだことだし、さっきいただいたコーヒーも飲みたいな。淹れてくれる?」
と、ケイが言うと、シームァがコーヒーを淹れ始めた。
「彼女、北のネトク鉱山にコーヒーを売りに来たそうで、ついでに街が見えたからルウの地に行こうとしてたとこだそうだよ」
ケイがロイに説明する。
ロイは頷いた。
ネトク鉱山は、北側の砂漠を抜けたところにある。
鉱夫たちがその家族と集落みたいな村みたいな生活基盤を築いているらしい。
シームァは慣れた手つきでコーヒーメーカーを扱っていた。
さすがコーヒー売りだ。ロイが感心していると、あることに気づいた。
「俺のコーヒーメーカー!」
デザインが気に入り、アンティーク感覚で飾ってたお気に入りの年代物だった。
「あぁ、借りたよ」
さらっと言うケイ。
申し訳なさそうな顔のシームァ。
ロイはため息をつくしかなかった。
* * *
次の日、ミンはウキウキした気持ちで中央の広場を歩いていた。
このルウの地に、コーヒー売りと大道芸人がやってきたという見張りの兵士からの報告を受けたのだ。
中央の広場の方にいるらしいという報告を受け、やってきたのだ。
あの導師がコーヒーが好きらしい。何か話すきっかけにでもなれば……
いやいや、そこまで思ってミンは自分の思ったことを否定した。
少し前まで、長老とその部下のことで頭を悩ませていた。
コーヒーでも飲んで、気分転換したいだけ……
中央の広場には人だかりが出来ていた。
その理由はすぐわかった。
人だかりの真ん中でピエロのお面をつけてバイオリンを弾いていた。
もう一人、コーヒー売りがいるはずと思ったが、見つからない。
人だかりの中にいるのだろうか。
ミンはコーヒー売りの姿を探していた。




