談笑
ルウ族最高位同士は、互いの住んでるところには女神像を介して瞬間移動できる。
ケイは、ロイ不在の家に入って無断で家具を持ってきたらしい。
「まあ、いいけどね。別に」
ロイは諦めたようにつぶやく。
実際、ケイの横暴ぶりに振り回されるのは慣れっこになっていた。
「そうそう。ところで彼女を紹介するよ。魔法使いの国から来たシームァ君だ。で、こっちがロイ君」
シームァと紹介された女は、ケイが君付けで人の名前を呼ぶ独特の言い方に戸惑ってるようだ。
「変わってるだろ、この男って」
と、ロイがシームァに話を振る。
シームァもケイも血のついた服を着替えてた。
片目がつぶされていたが、それもすっかり治ってるようだ。
いつの間にか、ロイはこの女に対する警戒心が薄れているのを感じていた。
「……いえ」
シームァは控えめに返事した。
「僕なんかじゃなくて、彼女の方が変わってるよ。今、きみが目隠しの魔法で隠れながら、事件現場を探っていたのが見えてたようだよ」
「それは……」
ロイは言葉が出て来なかった。
一見、魔力のなさそうなのに、最高位の魔法を見破るなんて。この女はとてつもない魔力を秘めているということだろうか。
「シームァ君には犯人捜しに協力してもらうことにしたよ。彼女の目はすごく頼りになる」
「へえ? ずいぶん仲良くなったもんだな」
と、ロイ。
ケイが誰かに協力を頼むなんて。
ロイはケイから強制的にお願いという名の命令はされたことはあっても、協力を頼まれたことはこれまでなかったように思う。
「僕ときみが組めば、百人力さ」
と言いながら、ケイはシームァの肩を組んだ。
ロイにはすごく意外に見えた。
本当に、ケイはこの女に惚れでもしたのだろうか?
別に構わないが、男好きのケイが女に惚れるなんて、きっと明日には槍でも降って来る……。
見れば、談笑しつつ二人は食事していた。




