打ち解けてる
思えば、最近のロイはずっとケイの家を行ったり来たりしている。
こんなんだからカーラに会い損なったりするんだよな、とロイはため息をつく。
かといって、ケイのことは放ってはおけない。
要は、しょうのない事なのだ。
ケイは今、得体の知れない女と一緒にいる。
その女のせいで怪我をしたそうだが、その女に怪我を治されたのも事実だ。
ケイが何か情報を探ってるような節があったので、二人きりにさせてみたが……
本調子じゃないケイのことが若干の心配でもあった。
ケイの家、というより庭にて、ロイは意外なものを見ていた。
ケイの庭では、テーブルとチェアでカフェテラス風に食事しつつ談笑するケイとさっきの女。
「ずいぶんと打ち解けてるようで……」
ロイはそう声を掛けた。
ケイが食事をしている光景にほっとしてもいた。
ここ数日、ケイが何か食べてる様子は全くなかったからだ。
「ご馳走になってました」
食事しながら、女が頭を下げた。
「いえいえ……」
言いながら、ロイはもっと意外なものを見ていた。
「お帰り、ロイ君。きみの差入れ、せっかくだから客人とご馳走になってたよ」
と、ケイ。
「知ってた? これ、おかもちっていうんだよ」
「へえ?」
それは、ロイが料理入れるのに便利だから使ってた取っ手付きの銀色の箱のことだった。
知らないことではあったが、ロイにとっては別にどうでもよかった。
もっと気になることがあったのだ。
「このテーブル、俺のだよな?」
そうなのだ。
ロイが見た、意外なもの。
それは仲睦まじそうにしてる男女の姿でもなく、怪しい女と談笑してるケイでもなく、ロイの家にあるはずのテーブルとチェアだった。
「なんで、ここに?」
「借りた。僕ん家のあの状況で客人に食事を振舞うわけにはいかないからね」
と、ケイはさも当然のように語る。
正論ぶって語っているが、無茶苦茶な理論だ。