一緒に
「あぁ、それ、ロイ君の」
それは、よくロイが食べ物を入れて持って来る時に使う箱だった。
取っ手付きの箱で、食器によそった料理をそのまま運べるし、結構便利だ。
さらにいえば、それはロイの特別制で食品の鮮度を保つ魔法効果があるのだ。
「さっきの金髪の人?」
シームァの問いにケイは頷く。
「ふうん、これ、おかもちって言うんだ」
ケイは、そのおかもちを開けてみた。
オムライスとコロッケがそれぞれ二人分入っていた。
おそらく、ロイは自分も一緒に食べるつもりで二人分持ってきたのだろう。
ふと、シームァがおかもちの中を凝視してるのに気づいた。
「お腹空いてる?」
シームァは頷く。
「他人の手料理とか平気なの?」
シームァはまた頷く。
「ふうん? じゃあ、一緒に食べる?」
シームァは強く頷いた。
ケイは、シームァが場を和ませようとしてるのかとも思った。だからといって食事を断る理由もなく。
ケイ自身もなんとか気持ちを切り替えたかった。
一緒に何か食べるのもいいかもしれない。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
ケイは、家の外へと出るのだった。
* * *
ロイは、先ほどの女が倒れていた場所に戻って来ていた。
女の流した血の跡がまだ残っている。
ケイのロボの破片も散らばったままで……
ケイの操っていた環境維持ロボを壊し、あの女を重傷に追い込んだ犯人は近くにいるかとも思ったが気配は感じない。
気配を消すことができるタイプかもしれない。
慎重に辺りの様子を窺う。
すでにこの近辺にはいないようだ。
犯人の足跡もない。風で消えてしまったのかもしれない。
まさか、ルウの地へ?
何かあれば報せが来るだろう。
それがないということは今のところは問題ないということだ。
ロイはこの周辺を歩いてみる。
やはり怪しい人物はいなかった。
*
そうして、またロイはケイの家に戻ってきていた。