廃墟
ふと、レンにとってリゾという人物はどういう存在なのかも気になりだした。
リゾはレンに圧倒的な忠誠を誓ってるようにも見えたが?
リゾに恋人である女性がいるようだが?
実はそれはファウの誤解なのだが、この時のファウはそんなことを知る由もなかった。
* * *
ケイは、シームァと名乗った女に先ほどと同じ質問をしてみた。
「さっきの『私のせい』っていうのはどういう事か聞かせてくれる?」
シームァは口ごもる。
言いたくないことなのだろうか?
ケイはそのせいで怪我したのだ。知る権利はあるような気がした。
「その前に着替えてもいい?」
シームァは自分の荷物を見ていた。
彼女の服は血まみれで、胸元は破けてる。
女性なら着替えたくもなって当然だ。
「失礼した」
ケイは部屋から出た。
いくら女に興味がないとはいえ、そんなことは相手にとって知ったことではない。
それに着替え中の女性と男性が同じ部屋にいるべきではない。
親しい仲間からはドSなどと呼ばれるが、ケイという男は表面的には紳士な男だと自負していた。
「この紙袋って……」
シームァは自分の荷物から着替えを出そうとした。
その上に紙袋が置いてあるのを不思議に思った。
この紙袋は、あの廃墟のような家の玄関に置いたコーヒー豆の袋。
シームァは紙袋を持ち上げ、匂いをかいでみる。
間違いなくコーヒーの匂いだ。
……ということは?
シームァは部屋から出て、玄関の外へと出てみる。
とはいえ、部屋のドアも玄関のドアも半分壊れてて、あまり機能してなさそうではあったが。
外には井戸があった。井戸のそばには女性がモチーフの像。
シームァは家を外から眺める。失礼ながら無人かと思われるような廃墟――。
間違いない。ここはさっき自分が井戸水を汲んだ家だ。
シームァは急いでまた家の中に入った。
「どうかした?」
と、ケイがシームァに声をかける。




