彼女目線
そのロボは家の周辺をぐるぐる回ってるようだった。
「お水、いただきました。よかったら、どうぞ」
シームァは自分の荷物からコーヒーを出し、玄関に置いた。
ロボットは何か反応するかと思ったが、家の裏手の方に行ってしまった。
ファッティのように人間の言葉を反応するタイプのロボットではないのかもしれない。
シームァは、家の中の人が心配だったが、彼女にできることはなさそうだ。
それよりだったら、近くに街があるからそこで誰かにこの家のことを伝えた方がよさそうだ。
シームァは街目指して歩き始めた。
すると、ロボが彼女の後を追いかけて来た。
遠目から見ると、そのロボは本当にファッティそのものに見えた。
「ファッティ?」
だが、近づいて来ると、それはやはりファッティではない。
「ファッティにはしては、ちょっと小さいけど」
呼び名がわからないので、とりあえずファッティと呼ぶことにした。
「あなたはあの家のファッティでしょ?」
シームァは今来た家の方を指さす。
「あそこの家の人、ずっと横になってて、具合が悪いんじゃない?」
シームァは、ロボを持ち上げ前後の向きを変えた。
「ついてて上げて」
そうして、前方に向きなおる。
いつの間にか、だだっ広い砂漠の真ん中に一人の男が立っていた。
どこか懐かしい感じがする。
シームァは完全に油断していた。
その瞬間だった。胸に痛みが走った。
「ごめんね。僕には時間がないんだ」
男の声だった。
言いながら、男はミニファッティにも攻撃していた。
見ることは出来なかったが、割れるような音が聞こえていた。おそらくファッティは粉々になっただろう。
シームァは怒りを覚えていた。
シームァを攻撃したのは不本意ながらなんとなくわかる。金目の物が欲しかったか食べ物が欲しかったか。
だが、このミニファッティを攻撃した意味がわからない。