最終回.ラノベちゃんは神絵師になってチヤホヤされたい!
「できた……」
そう神絵師ちゃんが言ったのは空も白む朝の5時頃だった。
あたしは歯磨きしながら後ろから覗き込んだ。
そこにはあたしが居た。
いや無駄にエロイ女餓鬼なんだけど。
これは確かにあたしだ。20年も付き合ってきたから分かる。
今のあたしの特徴を掴んでいる。
流石は神絵師ちゃん……伊達に神絵師と呼ばれているわけではない。
「すごい……」
あたしは思わずそう呟いていた。
しまった―!! 寝てる場合じゃなかった!!
制作過程を盗むチャンスだったのに!!
何も考えてなかったつーか、なんでアイパッドでガチお絵描きしてんだよ!
パソコン使わねーのかよ!!
「うーん、疲れたー」
憎たらしげに(逆恨み)背伸びする神絵師ちゃんに声をかける。
「神絵師ちゃん徹夜でイラスト描いてたんだ……」
「え? 今何時? あ、5時だもうこんな時間かー」
「神絵師ちゃんのイラスト凄いね、上手いし、再現力が物凄い」
「うん、ありがとう。これは自信作なんだ。ラノベちゃんのおかげだよ!」
屈託の無い笑顔を見せる神絵師ちゃんが憎い!
「どういたしまして。寝てないで横で見ておけば良かったよ」
「うーん、そうだったかもね?」
「神絵師ちゃん、絵を描くときパソコンは使わないの?」
「パソコンも使うけどアイパッドでも描けるよ?」
「そうなんだ、ふーん……」
「どこでもお絵描きできるのが強いねー、今回も創作意欲そのままぶつけられたよ!」
「ふーんふーん。ちょうだい!」
「え? 何?」
「アイパッドちょうだい!!」
「こ、これは流石に上げられないかな……」
「ちょうだい、ちょうだい!!」
床に寝転んで両手を振りまわして駄々をこねた。
これで駄目ならおしっこ漏らす!!
「えー……、うーん、前の世代の奴と第一世代のペンシルなら使ってないから……」
「えー第一世代のペンシルってあの充電が恥ずかしい奴~」
「ラノベちゃん結構分かってるじゃん!!」
「うぇへへへ」
「いいよ分かったよ、上げるよ。ラノベちゃんがおしっこ漏らしても困るし」
「ありがとう神絵師ちゃん!! 誰よりも愛してるよ!!」
「分かっているよラノベちゃん!!」
神絵師ちゃんは私に向かって両手を開いてハグを要求している。
よしよし愛い奴、壊れるほど抱きしめてやろう。
ちなみに神絵師ちゃんはいまだ全裸である。
この子はきっとアホに違いない。
「ぎゅう、愛してる神絵師ちゃん!!」
「ぎゅう、私も愛してるよラノベちゃん!!」
「神絵師ちゃんの小説を書くね9万文字!!」
「うん、全然いらないけど! だったらもう一声増やして!!」
「じゃあ10万文字?」
「そうだね、それでちょうど小説一冊分だね」
「もしかしてハメられた?」
「そんな事無いよ、著作権は全部放棄してねラノベちゃん」
「やっぱハメられた?」
「タイトルはね『ラノベちゃんは神絵師になってチヤホヤされたい!』」
「えーヤダー!! 恥ずかしい!!」
意外に売れて神絵師ちゃんの財布がちょっと潤ったのはまた別の話である。
終わり。




