友達
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ピーチャンは噴水の縁に空から降りてきました。日も陰ってきて、暗くなると物が見えにくくなってきました。縁から落ちないように気をつけながら水を飲もうとピョコピョコと前に進んで行きますが、体の小さなピーチャンでは口が水面まで届きません。いつも飲んでいた水の器とは違います。更に一歩、進もうと前を見ると草薮が目に入りました。その草薮の中に何か光るものが見えた気がしました。じっと目を凝らしてみましたがなにも見えません。気のせいかと、水の方に目をやり、飲もうとしましたがやはり届きません。更に屈んで体を伸ばすと、そのまま噴水の池の中に落ちてしまいました。慌てて上がろうとしても、羽が水に濡れてしまって飛び上がることもできず、足でジャンプしようとしても下が水ではできません。パタパタ、ピチャピチャ、羽をはばたく音と水を弾く音がするだけです。
そのとき、繁みの中から黒い塊が外に飛び出してきました。もちろん噴水の池の中にいるピーチャンからは見えません。その黒い塊が、噴水の縁にスッと立ったとき、初めてピーチャンは何がそこに立ったのか、分かりました。猫です。黒い猫が繁みの中にいたのです。水に溺れていたピーチャンは逃げようともがきますが逃げ出すこともできません。
猫は縁の端まで来て、前足をピーチャンの方に伸ばしてきます。その前足の肉球からは鋭い爪がニュッ、とばかりに飛び出して、自分の方に延びてきます。
「あの繁みにいたのは猫だったんだ。僕はあの猫に食べられちゃうのか。」
猫の足が自分の体に届き、徐々に噴水の縁に近付けられ、縁の真下まで来ると、黒猫が大きな口を開け、自分の頭上に被さってきます。ああ、食べられちゃう、と思っていたら、その黒猫は食べるどころか優しくピーチャンの体を咥え、ソッと縁にピーチャンを置いたのです。そして、そのまま体の水分を舐めとるように、優しく、優しく羽や体から水気を取ってくれました。この時初めてピーチャンは、黒猫が自分を助けてくれたことが分かりました。
「ありがとう、黒猫くん。
てっきり食べられちゃうと思ったよ。」
そうお礼を言うと
「どうして?どうして私たち猫とお話出来るの?」
と聴いてきました。
「そんなの当たり前だよ。だって僕は人間とも話せるお喋りインコだよ!君たち猫ちゃんの言葉など簡単さ。でも、本当にありがとうね。」
そう言って頭を下げると
「そうなんだ。私たちと、話せるんだ。それじゃあ、
はじめまして、野良の子猫です。私の名前は・・・。
ゴメン、私、生まれてからまだそんなに経ってないから名前はまだ無いの!お母さんが、なにか食べ物持ってくるから、と言って出掛けたんだけど、二日経ってもまだ帰って来ないの。お腹空いたなぁ。
少し雨も降ってきたみたい。寒いなぁ。私このままお腹空かして寒くて死んじゃうのかな?」
なんて、話してくれました。それを聴いて可哀想に思ったピーチャンは
「そうなんだ。お母さん、いなくなっちゃったんだ。
じゃぁ、分かった。僕がお母さんを探してあげるよ。それに食べるものも。
雨も降って来たみたいだし、ここじゃ濡れるから君が居たあの草薮にでも入ろうよ。その方が君も僕も濡れないですむから。」
こうして一匹と一羽は草薮の中に入って行きました。