~ 異世界転生はいつだって理不尽だ ~
転生者殺し
「死んでもらおうか、世界のために」
ぐさっ。。。と鈍い音で刺さった刃はまたたく間に血の花を咲かせた。
「どうして、ボクは異世界転生して、すごく強い勇者になって、、、」
「魔王を倒してハッピーエンドになろうってか。反吐が出るぞ。」
「それがいけないことなんですか?、、、ぼくは死ぬんですか?、、、」
「そうだよ、もともとトラックに跳ねられたんじゃねーか。覚えてるだろ、さっさと死ねよ。」
「ああ、怖い、、、助けてリーミア、ユメル、アーリア、、、」
「誰も救いには来ないぞ。」
掲げるのは3つの生首。白い髪は赤く染まり、緑の髪は反対色で汚れ、赤い髪は血を吸って紅に染まっていた。
「、、、、」
「絶望しろ。救いは無いのだから。」
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「おはよう」
異世界なんておとぎ話だ。そう思っていた。
「今日もいいてんきだね〜、朝ごはんちゃんと食べるんだぞ〜つとむ〜!」
「わかってるよ、お父さん」
おとぎ話は現実とは違う、だからこそ憧れたりもするもんだった。
「ねーおにいちゃんお箸とって〜」
「わかったわかったから椅子の上に立たないで」
本当を言えばちょっとだけ行きたいと思ってたのかもしれない。
「こら!お行儀が悪いですよ茜!つとむも早く食べなさい〜」
「牛乳は冷蔵庫?」
「さっき食卓に出したわよ?」
美味しいご飯が食べられればそれで良かったことに気づくのには。
「じゃあ行ってきます〜」
普通の日常があればそれで良かったことに気づくのには。
「気をつけるんだよ〜」
当たり前が、一番の幸せだってことに気づくのには。
「おにいちゃん!いってらっしゃい〜」
ほんのちょっとだけ。
「行ってきます!」
遅かった。
「ブォン。。。。ジジジジジジッ」
家を出る瞬間トラックが出てきた。
いや出現した。
「え?
走馬灯が見える。ゆっくりと動くその視界には異世界にでもつながっていそうなゲートとトラックがあった。
ゲートの中身は虹色にうごめいていて、正直気持ち悪かった。
そんなSFチックな空間から出現した軽トラックはまさに異質であると言わざるを得ない。
ゆっくりとボクの体を押しつぶしていく。
ああ、コレが死ぬってことなんだな。
なんか、理不尽だ。
過去を思い出したりする余裕もなくボクは死んだ。間違いなく。
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起きるとそこは白い空間だった。
「起きましたか?」
「・・・ああ、どういうこと?」
「あなたは我々の手違いで死んでしまいました。」
「???何を言っている?」
脈絡なく死亡宣告をされても頭に入ってこない。
「ですからその補填として好きな能力を1つ授けましょう。」
「話を勝手に進めるな、ボクは死んだって?」
ああ、思い出してきた。あのトラックの運転手何してんだ!
いや、違う、あの時人は乗ってなかった!?
「手違いとはどういうことですか?女神さま?」
「私は女神ではなく天使です。使いっぱしりに過ぎません。以後お見知りおきを」
「そしてさっきの質問ですが、異世界転生者を決める会議で決定した人物があなたと同姓同名で、地球を管轄している神があなたを殺してしまったんですよ。」
「え、神さまだって?」
「そうです、この世界は神が作ったんですよ。あなた達みたいな想像豊かな人、あるいはそれに準ずる生命体によってね。」
「飲み込めないんだけども、」
「物分りが悪い人ですね、現代人は異世界転生ものを好んで読むと聞いたんですけど。」
「ボクはリアリストだ、とも言わないけれども、ちょっと頭の整理が必要かもしれない。」
「でしたらコレでも飲みなさいな。一時的に神の知識を付ける薬ですわ。」
投げられた小瓶はボクの口に飛び込む。
「!!!!????」
1000年、いや言葉では表せない時の記憶が頭に流れ込んできた。
世界を知った、おぼろげだけど、理を理解した、ほんの少し
それと引き換えに、なにか失ってはいけないものを失ったのかもしれない。
「あのさ、、、人に勝手にこういうもの飲ませないでくれないかな?」
「でも状況を理解したでしょう?」
「ああ、だいたいね、なんだよ異世界ってさ、信じざるを得ないのだけど、簡潔に説明してくれないかな」
「見たならわかるでしょう。地球の人の想像が具現化された世界のことよ。」
「そしてボクはその異世界の時を進めるための主人公になれと。」
「そういうことよ。でも本当はあなたじゃなくてあなたと同姓同名の人だったんだけれども。」
まあーボクの命で誰かが救われたなら、そういう考えで納得するしか無いのk、、
「あ、でも大丈夫よ!その人もちゃんと殺しといたから!」
「え。。。!?」
失ったものは自分の命に対する価値観だったか?ボクの死に意味がなかったのか?
「ほら!コレが動画!天界の動画サイトに上がってるやつね。」
最悪だ、自分をごまかして、自分の死を正当化しようとしてたけども。
「異世界トラックって知ってる?轢かれた人は即死して異世界に連れてかれるの!」
他人を巻き込むなんて、、、最悪だ。
「あーそうそう、ご家族さんも心配だったから殺しちゃったわよ!」
「!!!!!!。。。。。!?」
どうして?え?最悪じゃないか?
「まず第一に茜ちゃんね、異世界トラック見ちゃったみたいでね。」
「流石にこれ以上異世界と地球を繋げられないし、仕方なく転生してもらったわ。」
ありえないだろ。。。?おい
「どうしてそんなことができるんだよ。。。」
「私的には温情のつもりなんだけれど、、、口封じで殺されてほしかった?」
「ちがうよ、間違えた?神どもは何やってんだ。全知全能が間違えとか馬鹿にすんな。」
「そりゃ人の想像する神はたくさんいるものね」
「転生したやつは生き返るんだろ?それならボクと家族を地球に転生させればいいだけだろ!」
「それも無理ね〜だってそんなことすれば異世界と地球がより密に繋がっちゃうもん」
理屈はわかる、わかってしまう、さっき飲んだあの薬でわかってしまうのが、ボクの心にギャップを生み続ける。
くそ、、なにか大切なものが、、失われた。
残った感情は。。。ただただこれだけ。
ボクは、、、異世界転生が憎い。
「じゃあ状況もわかったところで、異世界転生先の決定と能力決め、行ってみますか〜」
「おい、ちゃんと好きな能力を選ばせてくれるんだよな?」
「もちろんですよ。思ったものを何でも生み出す”万物創成器”から、世界を蹂躙する魔法の杖”根源の頂”まで、何でも!」
復習しよう
ボクは死んだ。ボクは失った。ボクにはなにもない。ボクはこの悲劇を乗り越えられない。
復唱しよう
ボクは死んだ。ボクは失った。ボクには何もできなかった。ボクは理不尽に押しつぶされた。
不貞腐れよう
ボクは死んだ。ボクは消えた。ボクはわがままに世界を壊したい。ボクは神を殺したい。
復讐しよう
そうだ。復讐だ。異世界も、異世界転生を生み出す人間も、異世界転生者も、みんなみんな憎い。
覆滅しよう
物語が始まらなければ、不幸になることはない。最後の物語を始めるとしよう。
「ならば異世界を自由に渡り歩く力をくれ。」
「・・・・あーえーっと?」
「天使、お前何でもって言っただろ。転生者のルール的に破れない掟なんだろ?」
「困りましたね、異世界の理的に複数の異世界を繋がないようにするのは義務なんですよね〜」
「要は物語性があれば認められるんだろう。世界を渡り歩く物語、それがボクの異世界だ。」
「なるほど!たしかに!言われてみれば、異世界から来ました〜って作品も多いですし、繋がったら繋がったでそれも一つの作品です。」
「作品になれば良いのかよ。じゃあ地球に戻るまでがボクの異世界転生の作品って内容で良いか?」
「それはダメですね。もし現実が異世界になっちゃったら大変でしょう?物語って言うのは異世界だから成り立つのです。」
「さて、もう一つ条件だ。」
「???どうしました?」
「転生する異世界はボクの知っている世界にしてくれ。」
「・・・まだ地球への未練があるんですか?」
「なに、かんたんなことだよ。言語も通じず世界観も理解してない、そんな世界は物語にならないだろ?」
「まあー異世界を渡り歩くのに言語習得パートを毎回やるのも修行パートを毎回やるのも締まりが悪いですしね〜」
よし、コレで地球に帰る条件は揃いつつある。
「でだ、もちろん茜や両親の飛ばされた異世界にも行けるんだよな?」
「いけますよ〜それも含めて物語です。」
よかった、ボクはまだ大切な人を失っていない。
「ちなみにボクの物語は地球ではどういう扱いになるんだ?複数の異世界を渡り歩いたら作者同士が喧嘩しそうなものだが」
「まあーきっとコラボ作品になるでしょうね〜最悪同人誌的な扱いで作られるかもしれません。」
最低だな、これからを常に見られるなんて。
「それでは最初の異世界はどこにしますか?渡航可能なリストを作っておきました!」
「それは助かる。行ける行けないの情報は必要だからな。」
見ていろよ、神とやら。
「メニュー画面の開き方はあなたのやっていたゲームのフェアリーズと同じにしておきますね」
俺は異世界が憎い。
「それと初心者入会キャンペーンに付きハイポーション5つ!!」
本質的な部分では思い通りの能力が手に入ったのだ。
「あんまりずるはダメですからね〜R18指定にされたりは困っちゃいますから。」
人を物語にするな、この外道天使が、
「それと、死んだりしても復活しませんから!また新しい転生者を送るのであなたの人生は一回きりです!」
その一回きりをお前らに壊された。
「それではいってらっしゃい。」
お前らだけには、そ の 言 葉 を 言 わ れ た く な い! !
End -> and To be Continued