十三日目 前
とうとうこの日がやって来た。
私の死刑が執行される日。
レクシスに貰ったドレスのまま私は迎えに来た兵士達に促され牢を出る。
「……最後の服装はそれでいいんですか?」
声をかけてきたのはずっと私を見張ってきた衛兵の男性。
初めて声を聞いた気がする。
「えぇ、これがいいの」
人間の味方は誰も居ない。
これから私は冤罪で殺される。
けれど最後の瞬間まで私は屈しない。
レクシスが愛してくれた強い私でいたい。
そんな私の想いを汲んでくれたのか衛兵の男性は目を細めて頷いた。
両手を拘束された状態で断頭台までの道を歩く。
囲むように設営された見物台には両親や兄の姿。
中央には王子と顔を仮面で隠した女性の姿。あれはきっとミリアだろう。
仮面越しでもわかるほど顔が腫れていた。
あれでは腫れが引くまで公に顔を表すことが出来ないだろう。
台座の上には大きな斧を担いだ処刑人。
顔は麻袋で見えないけれど、袋に空いた二つの穴からぎょろりとこちらを見つめている。
あの斧で私の首を切り落とすならきっと苦しまずに逝ける、それが唯一の救いかもしれない。
台座に登った私に王子が声をあげる。
「罪人、アザレアよ。最後に言い残すことはあるか?」
「私はミリアにより陥れられたに過ぎません。私は無実です」
観衆がざわめく。
「まだ言うか、あの世で己の罪に苦しむがいい!処刑人、殺せ!」
王子の言葉に先程までざわめいていた観衆が「殺せ!」「殺せ!」と声を揃えて叫ぶ。
その光景はとても異様なものに見えた。
しかしこの場にそぐわない間延びした声が響き、その叫びを打ち消す。
「おやおや、人間と言うのは魔族より残虐非道な生き物のようだ。私の妻は人間でもこんなにも美しいのに……同じ種族とは思えませんねぇ」
声のした方向に視線を向けるとレクシスが空中に浮かびながらこちらに手をひらひらと振っていた。
「迎えに来ましたよ、アザレア」




