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魔王のいない時間4

六日目の夜。

魔王は私にドレスを持ってきた。

綺麗な漆黒のドレスは魔王の髪と同じ色。

光の加減で青にも紺にも見えるし艶もあって裾のレースもとても綺麗だった。

少しだけ、と触れたのが運の尽き。

ドレスは捨てられない呪いがかけられていた。


少し悩んだが一度だけ袖を通してみたいと思った。

今までは勉強や習い事、王妃教育に時間を取られてばかりで服装も侍女や母任せにしてきたから自ら着飾ろうと思ったことはない。

そんな私でも着てみたいと思うほど漆黒のドレスは綺麗だった。


牢屋の奥で隠れるように着替える。

魔王が言っていた通り、ずっと冷たい牢屋の中でもドレスを着た瞬間に暖かくなった。

まるでお風呂に浸かった時の様にじんわりした暖かさに包まれる。

その心地よさに身を任せていると不意に足音がして看守を連れた幼馴染みがやって来た。

騎士団長の息子である彼は正義感が強いが流されやすく一度悪と決め付けると、どんな理由があれ悪を排除しようとする。

彼の中では私は許すことの出来ない悪女なのだろう。

その証拠に幼馴染みの目はつり上がっていてこちらを鋭い眼差して睨み付けている。


「……なんだそのドレスは。あなたはまだ自分の立場が理解できていないのか!」


漆黒のドレスを身に纏った私を見て怒鳴るが私の方が怒鳴ってやりたいぐらいだ。

昔は弱い者の味方で自分でしっかり物事を考えられる子だったのにどうして流されるようになってしまったのだろう。


「何か言ったらどうだ!あなたのせいであの優しいミリアがどれだけ傷付けられたとおもっている!?あなたのしたことは人として間違っている!」


「……ではあなた達のしていることが正しいとでも言うのかしら?冤罪をかけられ死刑を言い渡され、家族にも見放された私が傷つかないとでも?」


「自業自得だろう!ミリアに嫌がらせを行っただけでなく人殺しを計画した悪人の癖に、傷付くような繊細な心があるものか!」


私の言葉を聞く耳が彼にはないらしい。

この幼馴染みの中ではミリアこそが正義。

彼女が黒と言えばどんなに間違っていても彼は黒だと信じる。


「……哀れね、まるであの男爵令嬢の犬じゃない」


「なんだと!?」


つい溢れた心の声は幼馴染みを逆上させてしまったらしい。

彼は看守に命令し鍵を開けさせると私に掴みかかろうと手を伸ばした。

その瞬間、ふわりと風が頬を掠めた。

そしてバキリと何かが折れるような音が響いた。


「う、あぁあっ!足、足がぁっ!!」


同時に上がった悲鳴の主は幼馴染みだ。

彼の片足は脛の辺りからあらぬ方向に折れていた。

その様子に私は魔王の言葉を思い出す。

『悪意をもってあなたを傷つけようとした場合、相手に倍返しにします』と魔王は言っていた。

その言葉は本当だったのだ。


その後、幼馴染みは看守におぶられながら牢をあとにした。

彼の悲鳴が暫く耳から離れなかった。




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