第6話 初めて、初めて。
お母さんに聞いたら、
「いいわよ。あんたに友達ねぇ…小学校の頃はだれも連れてこないから不安になってたわよ」
だそうだ。それで学校に聞かないあなたもどうかと思うけど…
ピンポーン
チャイムの鳴る音。お母さんが応対する。
「はい、どなたでしょうか?」
「こんにちは!私はふー、いや房子ちゃんの友達の、谷春香と言います!」
「ああ、あなたが春香ちゃんね?娘から聞いてるわ。さ、入って入って」
「お邪魔しまーす」
こんなやり取りが聞こえてきて、慌てて階段を降りる。
「い、いらっしゃい」
「来たよー!」
家に友達が来るのは初めてだったので、緊張。
「散らかってるけど…どうぞ」
「へぇー、ふーちゃんってこんな部屋なんだー。内装まで可愛い!」
「そ、そう?ありがと。今飲み物持ってくるから」
急いで階段を降り、冷蔵庫からペットボトルを出す。棚からコップを取り出し、ペットボトルからジュースを注ぐ。お供のお菓子は、私のお気に入りのケーキ屋さんのロールケーキ。
お盆に乗せ、そーっと階段を上がる。
「お待たせ、リンゴジュースでいい?先に聞いておくべきだったわね」
「うん、フーちゃんが持ってきてくれるならなんでも!コーヒー以外なら!あとストロングサイダーとかエナドリとか…それ以外なら!」
おかしくって吹き出してしまった。
「春香ちゃんそれなんでもって言えない」
「あははー、あたし結構好き嫌い多いみたい」
「へぇー、フーちゃんこういうのが好きなんだー」
そういう彼女が手に持っているのは、ネコウサのぬいぐるみだ。うさぎの耳と猫の顔を持った、ヘンテコなキャラクターだ。脱力感を感じさせるそのフォルムから、このぬいぐるみが視界に入るだけで心が落ち着くような気がする。
「そうなの。ネコウサフレンズもちょっとはいるよ」
と、棚からニャットを取り出す。ニャットは蝙蝠の羽を持った猫。こちらも力の抜けるような容姿をしている。
「なんか、見てるだけで眠くなってきちゃうね」
春香ちゃんはあくびしそうな顔でそういった。そしてこう続けた。
「そういえば、いつも通学バックにつけてたね。こんどさー、ネコ×○○のコラボカフェをモールでやるみたいよ、一緒に行かない?えっと、いつだったかな・・・」
「夏休みに来るのね!ニュースはチェックしてるから」
「それそれ、あのネコウサのマタタビニンジンジュースが…」
それから、いろんなことを話した。ネコウサの話から始まって、好きな歌手、アーティスト。いつも洋服を買いに行く店や素敵なネックレスのある店の話…
「今日はありがとう!今度はうちにも遊びに来てね!」
「うん、じゃあ来週の土曜日とか?」
「聞いとくね!じゃあまた月曜日に」
「うん。それじゃ、またね」
初めて家に呼んだ友達は、多分これから一生付き合っていける友達なんだろうなぁ、そんな予感がした。




