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前話
2017年、年の瀬。
一人の少年が交通事故にあい、意識不明の重体になった。
少年の名前は颯真。少しヤンチャで正義感の強い中学生だ。
颯真の身体には管が入り、呼吸は弱々しく、誰から見ても助からないと思うだろう光景だ。
そんな彼の手を引き留めるかのように握っている少女がいた。
「まだ、だめ」
少女の小さな呟きは誰にも聞かれることはない。
「まだ、あなたは死ぬべきではない」
「あなたは私の大切な人」
「待ってて、いつか迎えに行くから」
「それまで……」
少女の言葉が終わらないうちに、少年は静かに消えていった。
「あなたは安全な場所で、生きて」
少女の覚悟を、一羽の烏が見つめていた。
とりあえず一話投稿。