第四話 ツァオベライ家の日常 序章
目が覚めたとき、家族みんなで喜ぶ雰囲気ではなかった。リビングに降りると
「あっ、目が覚めた?」
どこか元気がない。
「はい。今は何日ですか?ところで僕はなぜ倒れたのですか?」
「大丈夫倒れたのは今日、理由は魔力切れだよ。何かあったの?」
「いえ、倒れたのは分かるのですが前後の記憶が無く何をしていたのか分からないのです。」
そう全く今日何をしていたか分からない。
思い出そうとすれば、途中で鍵がかけられたように思考停止してしまう。
「お父様とシンティラ兄さんはどこですか?」
今リビングには父とシンティラ兄さんがいない。
「本当に何も覚えてないのかい?」
「はい。」
「そう…あのねステランスは原因不明なんだけど、倒れて帝国最高医療機関サルバシオンに運ばれてるんだ。シンティラも付き添い。」
なんだと!サルバシオンといえば王族とその側近の最強護衛集団フラーリオだけのはずだ。なぜそこに父が?
まさか⁉︎
「もしかしてお父様はフラーリオの団員なのですか?」
「ああ、ステランスの職業は、ルナんっ⁈」
「母さんそれ以上はいけないよ。」
「帰って来たのか、様子はどうだった?シンティラ」
「兄さんも止めてよ。様子はどうもこうも全く正常、魔力もまだ残ってる。サナーレさんも手の出しようがないってさ。」
サナーレ、確かサルバシオンのトップだ。
「お帰りなさいシンティラ兄さん。
それでお父様の職業は?」
「ごめん、父様が帰って来たときに教えてもらってくれ。俺達からは言えないんだ。」
「シンティラ、そろそろ離してやれ。」
「忘れてた!ごめんよ母さん」
「む〜忘れてた私が悪いけど、この状態はヒドイわ。」
身長が185cmくらいのシンティラ兄さんに対して、母さんは150cmあるかないかだから口を押さえられて宙に浮いているのはどっからどう見ても、幼児虐待にしか見えなかった。
そこから毎日午前中はヘーブリヒ兄さんと魔力量を鍛え、午後は母さんにこの世界のことを教えてもらい、夜シンティラ兄さんに質問に行ったりの繰り返しだった。
そうして2カ月がすぎた頃、
「さあ〜明日からは仕事よ」
??
「アイツら絶対宿題やってないし、その後テストか…。」
ヘーブリヒ兄さんが見たことないくらい憂鬱そうだ。
「本当、明日からは学校か〜」
こいつら何言ってやがる。
「あっそうかレビン、今はヨアーレだったんだよ。」
なんだと…
「目覚めた時には全てのお祭り終わってたな。」
「レビンはお留守番だね。」
そうヨアーレとは5年に一回の夏から秋まで5カ月のお祭りと休養期間だ。前半アホ騒ぎし、後半は家族でゆっくりと。
「ヘーブリヒ兄さんは先生で、シンティラ兄さんは学生ですか。」
「うん、僕は帝国魔法高校。兄さんはプラニエータ剣術学校の教師だよ。レビンも後1年ちょっとで帝国魔法高校に入学するんだ。」
「私もサルバシオンだから帰ってこれないな〜。」
ん?
「お母様はサルバシオンなのですか?」
「うん、私は冬から春の半年なの。」
サルバシオンは半年勤務、半年休日なのだ。
これから母さんは半年、ヘーブリヒ兄さんは4カ月帰ってこれないそうだ。
次の日から創剣魔法を鍛えることにした。
この魔法は創り出す剣の性能によって必要な魔力が変わる。
最初自分の魔力量の3分の1を使用して、剣を創る。
いつも通り右手に光の粒が集まる。
その光が剣の形をなしていき、できたのは
30cmくらいの短剣だ。
う〜ん。どう見ても質が悪い。
大きさを思い通りにするのは光を凝縮するだけなので簡単だが。質を上げるのにはかなり多くの魔力量がいるようだ。
動かすのはほとんど魔力はいらないっぽい。
森に行き、木の幹を斬り付ける。これを毎日繰り返した。昼ご飯はと言うと、
「おーい!今日も持って来てあげたわよ。」
そうエリスが作ってきてくれるのだ。
中々美味しい。
エリスと共に魔力量を上げる練習をしているが、まだ心力の鏡は使えない。
ヨアーレが終わり3カ月が立ち、
今日はシンティラ兄さんの誕生日なので森の奥の湖で魚を捕って祝って上げる予定だ。
お小遣いでは何も買えないので…