第二十八話 覚悟 親友編
王都、、謁見の間
「よく集まってくれたな三将達。
時は一刻を争う、我らは人類最後の都市、失うものは何もない!全力を持って敵を討ち破れ!」
「「「はっ!」」」
三将は各自の持ち場に向かう。
ある者は純粋にこの国の、人類のために。
ある者はただただ戦いを楽しむ為に。
ある者は己の悲願の為に。
「ただいま、避難は済ませて来たよ。」
「おかえり千代さん。戦力はどのくらい貰えたの?」
「まあまあだな。五万、今いるのは三千人ほどだが続々と集まるはずだ。」
「五万人、、勝てる見込みはあるの?」
「魔物一体につき五人。一万までは対応できるか、、足りないだろうな。魔人が、それも魔王の側近の三体の誰かが来れば戦況は全てひっくり返されるだろう。」
「私達も戦うわ。」
十五やそこらの少女の目には強い光が宿っている。未来のある少年少女をまた失いたくはない。
「しかし、君達は戦えるのか?」
「戦えなきゃ残ってませんし、このままやられるのを待つのは性に合わないので。」
薄く笑いを浮かべ、一つの小屋に視線を変えた。
昨日、少年は魔王に出会い、「入ってくるな」といってそのまま出てこない。
「そうか、、すまないなこんな世界で。」
「千代さんが気にすることじゃないですよ。
彼はもう覚悟をきめたようですし。」
「そうだな。攻めて来たら自由にしてくれ。
戦うのも逃げるのも全て自由だ。」
「ありがとう千代さん。
それに私達以外にもこの世界に来てないとは限らない、味方か敵かは分からないけど、帰る時は一緒に帰りたいから。」
そう、味方なら一緒に帰りたい。
敵ならこの世界においては行けない。
彼も覚悟をきめ、今も成長している。
今ここで死ぬわけには行かない。真実を、自分のことを彼の兄に聞くまでは…
「ここまでだな、やれることはやった。
イーリス、俺はかつての親友を一発殴って、
目を覚まさせて、それで…」
「一緒に帰りたいんでしょう。分かってるわよ。彼は何かに取り憑かれたようになっていたわ、元凶は何か別にあるはずよ。」
「そうだな。そいつをぶっ倒す!
精霊王もありがとな。」
「いやこっちも暇だからな。
ほらそろそろ時間だ。次こっちに来れる時までに死ぬなよ。」
「おう、じゃあな。」
少年は親友を救う為に光の中へ消えていった。
「来たぞー!各員待機!私が出る!」
ザッ!
「あの二人は何を⁈」
人類を守る壁を越え進軍してくる魔物へ向けて走り出した。
「すまんな千代さん。俺たちは先にいくぜ!」
「イーリス!」
「よいしょ。」
無詠唱で精霊召喚をし、
「「合体魔法、双剣・天叢雲剣!」」
天叢雲剣、イーリスを精霊界の神樹で出来た二刀の木刀に閉じ込める。その間イーリスは顕現できないが、妖精の力の全てが注ぎ込まれた双剣はあらゆる物を斬り、あらゆる魔法をも斬る。
「妖刀ムラサメ、エンチャント、煉獄鬼火!」
少年少女は魔物を切り刻んで行く。
「は〜。自由過ぎるな。少年少女が先陣を切った!屈強な兵士達よ彼らに続けー‼︎」
「「「「おーーーーー!」」」」
一万の兵が少年少女の背を追い戦場に駆け出していく。こうして決戦の火蓋が切られた。
残り二つの砦、、
「はっ!来やがったか。いくぞお前達!
俺の後に続けー!」
「来たな。予定通り五万の兵達よ、薄汚い魔物どもを蹂躙してこい!」
魔王城、、
「好きにしてこい。俺も好きにする。」
「「「はっ!」」」
三人の魔人が暗闇に消える。
「お伝えしたいことが!」
一つの女の影がすぐに暗闇の中から現れた。
「何事だ。」
「この世界にまた一つ入り込みました!
魔王城の真横で、っ!」
ガン!
「何者だ?」
「何寝ぼけたこと言ってんだ?泉くん、いつから魔王になったのさっ!」
ズドズドン!
「ちっ!やるね。」
音速を超えた十弾が目標に到達する前に、床に転げ落ちた。
「うっ頭が!うぁぁぁぁァァァァァァア!
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、、、、、シネ。」
冷たく放たれたその言葉と同時に魔王はその男の前まで一瞬で迫り殴りかかる。
「危ないじゃないか。出直すとするよ。」
男は転移し、魔王の目の前からきえる。
「ちっ!奴はどこへ行った⁇」
「う、上です!」
「ふう、大きいな。
メギドレールガン!」
黒い電磁波が集まり、異空間から金属玉を取り出し、装填する。
バリバリ!ドゴン‼︎
魔王の真上から放たれた神をも射抜く攻撃は魔王の前で止められていた。
「そっちが本当のお前か?」
「、、、」
手を一振り。
振り下ろし終わる前に男は転移し逃げた。
魔王はそのまま床に倒れた。
「魔王様!」
「ん、、やられた。奴は何者だ、ここは亜空間のはずだ。」
「魔王様や私達三人と同じレベルの魔法、その中でも希少かと。」
「だろうな。まあいい、戦場に向かう。」
「はっ!御武運を。」
「待っていろアマネ。必ず俺が殺してやる!」
「はぁー疲れたな。あの別空間に侵入するのにも半端ない魔力が喰われるな。
それにしても泉くん、、まあ弥のとこ行くか。」
ひと暴れした規格外の天才は、自分の息子の手伝いをする為にもう一度転移した。
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「やっと追いついた。」
「貴方は何なんです?本当に人間ですか?」
「人間、、知らないけどそれ僕が欲しいからもらう。」
「破綻してますね。楽にしてあげますよっ!」
「お前邪魔、喰うぞ。」
龍神から放たれた水の矛先は、喰い散らかされたように虚空に消えた。
「なっ⁈見かけによりませんね。
すいません。悲願を果たす事は出来なさそうです。エデン、アンセム、、かつての故郷だった星を滅ぼした者達に一矢報いたかっただけなのですが、残念です。」
「あっそ二足す四は六だ。これで褒めてくれるよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「グハ!、、これがアンセムの暴走兵器、、
敵いませんね。」
奇怪な声を発する少年は龍神を喰いつくし、
一冊の本を喰らった。
「我は一の罪を受け継ぐ者。五匹の龍神の力を還元し、その力を我のものとしたまえ。
我の名はルシャナ、自身への戒めの枷を解き放つ!」
「アハっぁァぁァぁァぁァぁァぁ!
これ、は、ダメな奴ですよ、そうですよ、そうですの、そうですわ、頭がクルクル、ワクワク、ドキドキ、フワフワ、何でしょうとても力が溢れ出る!」
龍の手足となり、神に近づいた少年は、龍の翼を使い空へと旅立った。
この世界の中心へ、、戦場へ飛び立った。




